28話。
ひとまず此方から指令があるまでは待機ということで奴隷商側だった人間は全員帰らせた後、早速彼に名前を付けることにした。
「……では、君の名前は『
「は、ありがたき幸せに御座います。吸血鬼としてだけでなく、執事としても活躍してみせますのでどうかご期待下さいませ。」
片膝を地に着け、胸に手を当てたまま名付けを受けるサングィスは満面の笑みで首を垂れた。奴隷商の長との戦闘では血に関する能力は一切使わず、ほとんど素体となった冒険者達の技術のみを使用していた。最後に吸血鬼としての片鱗、人知を遥かに超えた膂力を見せつけはしたが、まだまだ実力の底が見えないという点で今後が非常に楽しみだ。執事としては……程々に活躍してもらうとしよう。
その点で言えばオリゴスもまだまだ全力を見たことはないな、冒険者達を相手にした時も明らかに余裕があった。ダンジョンを手に入れてすぐにこんな戦力を手に入れて良かったのだろうか。まぁ防衛戦力に関して不安が全くないというのは今後
そして今回の一件の副産物として
奴隷商達の前に再び現れた彼らは死霊術、心臓も血液も魔力も停止させる
しかし杞憂に終わってしまったせいで問題が起きた。
名は男がガーラ、女がナーダ、娘がラーダというらしい。自分の死霊術で迷惑をかけてすまないと謝罪をしたが、寧ろ彼らにとっては好都合だったらしい。
「一度奴隷に墜ちた身では故郷に帰っても迫害を受けていたでしょうし、そうでなくとも結局は疎まれて肩身の狭い思いを妻と娘にさせてしまうでしょう。それならば命を救って頂いた方の下で恩を返すために働きたいです。どうか、私達一家をあなたの下に置いて頂けないでしょうか。」
地に頭を擦り付け、必死に懇願をする
「……そこまでしなくてもいい。私は決して善人じゃない、君達を助けたのだって代わりに手に入る物があったからだ。分かった、君達が構わないというなら好きにしてくれ。住居や食料の問題については後で話そう。私達には必要のないものだからな。」
「っ……ありがとうございます……!」
瞳に大粒の涙を溜めながら再び頭を下げる一家。う~ん、何やら慈悲深い者か何かだと勘違いされている気がする。本当にそんなつもりはないし、住み着くなら勝手にやってくれという程度の話なのだが。傍でその光景を見守っていたサングィスが暖かい目をしている。その『私は分かっています』みたいな雰囲気を出すのはやめてほしい。
それで今回手に入った物は……奴隷商の長とその部下17人か。奴隷商の長は
魂の方はどいつも大したことがないな、部下については言わずもがな、奴隷商の長の魂も上質かと言われると……前回の冒険者達が上の下くらいだとすると下の上、良く見積もってもぎりぎり中の下くらいだ。あくまであの力は
余った部下の分は……まぁ、何かしらに使えるだろう。
……駄目だ、冒険者達の素材と齎した結果が良過ぎて本来なら喜ぶべき結果であるのに霞んで見えてしまう……!このままでは良くないな、もう一度死霊術を思う存分研究出来る今の環境と新たに手に入った死霊術の礎となることの出来る素材達に感謝しなければ。ありがとう。君達の死は無駄にしないとも。必ずや死霊術の発展に繋げると約束する。血の一滴まで活用してみせるからな。
それに今後はあの奴隷商達から定期的に不要になった奴隷やら処分しなければいけない奴隷を貰おうと思えば貰えるのだから、落ち込む必要はない。寧ろ歓迎するべきだ。ふふふふふ、死霊術に使う死体や魂を集めるのも苦労していた過去と違って、今では向こうからやって来るとは……久しぶりにこれを言うべき時が来たようだな。
素晴らしいッ!!!
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次は久しぶりのダンジョン内政回(予定)です。
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