11話。(???視点。)

 ギルド長から突然の呼び出しがあった。この街、このの最高戦力と呼ばれている俺達、怠惰の熊レイジーベアーに直接声がかかるというのは異常だ。正直なところ面倒なことは御免被りたいのだが、流石に自分の所属する組織のトップからの呼び出しとなれば応じない訳にはいかなかった。俺達四人がそろってギルド長室に顔を出すと、いつも以上に張り詰めた空気のギルド長がいた。


 部屋に入って早々、とある村から山奥に正体不明のダンジョンが現れた、という報告があったと聞かされる。ダンジョン、という単語が聞こえた瞬間俺達の身も思わず引き締まる。村の中で見知らぬ洞窟らしき穴があったため調査隊を数人送り込んだが、洞窟の中から物音ひとつ聞こえることがないまま結局誰一人帰って来ることはなかったらしい。魔物が住み着いているのであれば必ず戦闘音や相手が獣型であれば咆哮が聞こえるし、そもそも調査隊として送り込まれた村人から何かしら反応があるはずだ。これは異常事態だと冒険者ギルドに連絡が回って来たことで、俺達に改めて冒険者ギルドから調査隊としての白羽の矢が立った。今まで未発見、更に未開拓のダンジョンの調査となればかなり慎重に行う必要がある。俺達も過去に一度、未開拓のダンジョン調査を行ったことがあるが……はっきり言って、可能なら二度と行きたくねえというのが正直な感想だ。中がどんな構造をしているか、どんな罠があるか、どんな魔物がいるか、細心の注意を払ってもなお死ぬときはあっさりと死ぬ。


 そもそも国が対応するべきじゃないか、という意見は当然出たらしい。だが国に報告は上がったものの、別件の対応で騎士団を回す余裕がないと頭を抱えている、とギルド長が語った。やれやれ、どうやらこれは回避できなさそうだな。仲間に向かって死ぬ覚悟はしておけよ、と俺にしては珍しく真面目に伝えると『リーダーが真面目なこと言ってるときは大丈夫ですよ』だとか、『そう言って今回もなんとかしちゃうんでしょ?』だとか、『帰ったらリーダーの奢りで酒飲めるってよ!』だとか口をそろえて軽口で返して来やがった。好き放題言いやがって……それでも言葉の意味はしっかり理解した上でこうして少しでも明るく努めようとしてくれてるんだから、本当に良い仲間を持ったよ。


 少しばかり空気が和んだところに、扉をノックする音が響く。こちらの返事を待たずして白銀の鎧を纏った男がギルド長室に現れた。がわざわざ冒険者ギルドに?色々と忙しいと聞いている騎士団の長が何をしに来たのかと思えば、『我々が直接出向くことはできないが可能な限り援助はする。村の人々を見捨てることはできない、既に犠牲になってしまった人のためにもよろしく頼む』と。この人は国を守護する騎士達の頂点に立つまで登り詰めていながら、自分が手を差し出すことの叶わない民を代わりに頼むと自ら頭を下げに来たのだ。この人にはかなわねえな、そんなことを言われたからには応えない訳にはいかなくなるじゃねえか。思わず俺が苦笑いを零していると、『君はしっかりと頼み込めば真面目に働いてくれると聞いてね。』とこの人にまで軽口をたたかれた。俺以外のメンバーとギルド長が吹き出す。一気に部屋が笑いに包まれた。はぁ……そんなに俺が面倒臭がりって広まってるのかね?人間把握と人心掌握の上手いことで。


 それでもこの人騎士団長が本気で村人達のことを案じているのが間違いない。村人を頼むと言っていた時のあの目、一本芯の通った漢の目。仕方ない、こんなに熱い人に頼まれたからには頑張らないとな。どうにも柄じゃねえが、こういう熱っていうのは伝染するのかね。承諾の意味を込めて、片手を騎士団長に向けて差し出す。それに気づいた騎士団長が、同じく手を差し出し、お互いの手を固く握り締める。口にせずとも伝わってくる。『よろしく頼む』と。俺はその力強いに、にっ、と口角を上げて『帰って来たら酒くらいは奢って貰えますよね?』とお返しのように軽口をたたいてみせる。彼は数度瞬き、ぷっと吹き出してから『最高級の酒を用意しておくよ』と笑ってみせた。十分すぎる報酬だな。


さて、本当は行きたくねえけど……それじゃあ行きますか。


 ────────


今回はダンジョンに来る側の人の話でした。見ていて気持ちのいい男達が好きなので、自分の性癖に従いつつそんな雰囲気を作ろうと頑張ってみましたが……出来ているかは自分だとわかりませんね。

しかも行き当たりばったりの見切り発車なので、彼らの名前すら決まってません。

まずは頑張って今から四人分名前考えます……。

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