死霊術を研究し過ぎた結果、ダンジョンマスターにされました。
おにぎり
プロローグ。
遠くで声が聞こえる。
まるで海に沈んでいく最中に呼びかけられているように、おぼろげで、不鮮明な声。
しかしその声が自分を呼んでいることははっきりと伝わる。
その声に応えようと思っても腕や足の先をぴくりと動かすことも叶わない。
まるで生を拒絶するかのように、瞼は重く、口も開かず、深く意識が沈んでいく。
ああ、私はただ……。
死霊術と共に……。
死霊術。
私がこの世でただ一つ追い求め、愛した物。
たとえ、周囲の理解が得られず辺境の地へと追いやられようと。
たとえ、かつての家族たちから気味悪がられ縁を切られても。
たとえ、全ての財貨を投げ捨ててでも。
たとえ、研究内容を危険視されこの身が滅ぼされるとしても。
決して諦めることも、他者に譲ることも、捨てることもなく我が生涯を捧げた物。
まだその果てを見ることは疎か、果てがどこにあるかを知ることもできなかった物。
駄目だ、私はここで終われない。終わりたくない。
先ほど聞こえた声を思い出す。ほとんど聞き取ることもできず、何を言っているのかもわからなかった言葉を少しでも手繰り寄せようと何度も何度も再生する。それが生へ残された蜘蛛の糸だと信じて。
こうして思考しているうちにも意識は徐々に沈んでいく。きっとこのまま沈んでいけば楽に逝けるのだろう。しかしそれはできない。何故なら死霊術が私を呼んでいるから。
そうだ、この声は死霊術が私を呼び止める声に違いない。お前はまだ死霊術の極致に至っていない。それどころか片鱗すら見えていない。そんな浅学のまま世を去っていいのかと。断じて否。途中で投げ出すことなど許されないと。でなければ私の死を呼び止める声など聞こえるはずがない。
死霊術への執念がこみ上げる度に、少しずつ脳にこびりついた先ほどの声が鮮明になっていく。その声はこう言っていた。
【唱えるのだ。
我が身は死霊術と共に在りと。】
その言葉を理解した刹那、自らを縛り付けていた重さが消えた。
「我が身は死霊術と共に在り。」
躊躇うことなく口から言葉が飛び出たと同時に、沈んで行った意識が急激に掘り起こされる。下から激流に押し上げられ、さっさとこんな所からは出ていけと言わんばかりに浮上していく。
激流に身をゆだね、押し流れていく内にこの身は今までにない喜び、感動、期待に満ち溢れていた。重くて開けることが叶わなかった瞼を開けば、きっとそこには新天地があり、また死霊術を研究することができるだろうから。
そうして激流の終着点、どこかも分からぬ場所に放り出される感覚と共に目を開けた。
さあ、新たな死霊術の研究を始めよう。
────あとがき────
はじめまして。作者です。
ダンジョン物、特にモンスター系の育成に重きを置いた話が大好きなのですが、自分好みの話をそんなに見かけないため自分で書いてみようと思いました。
せっかく自分で書くなら自分の好きな要素を他にも詰め込もうということで、死霊術、ネクロマンサーも盛り込みました。
実のところ完全に見切り発車なため話のストックも設定も全然詰めておりません。1話すらできてません。こんな話あんな話やりたいな~くらいです。
ただ何かしら始めないとそのままずっと何もしない気がしたので、突然ですが始めてみました。
更新はかなり適当なペースになると思いますが、よろしくお願いします。
あ、一つだけ大事なことを忘れていました。
基本的に最初から人型の魔物以外は人型にしない予定です。
仮に竜が登場しても、人型に変身できるとかは極力しません。
よろしくお願いします。
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