お題その六 「白猫 吊す 露店」

白猫は、恋をした。

露店に吊るされたネズミのことが頭から離れない。食べたいのではない、いっしょに暮らしたいのだ。


動物は人間が考えている以上に、人間のことを知っている。白猫は露店が夏の間だけ、そしてお祭りの間だけしか店を開かないことを知っていた。


祭りの最終日、白猫は行動に出た。


ジャンプし、ネズミをくわえると、一目散に走り去った。店主の罵声が聞こえたが、それだけだった。


神社の屋根までくると、ネズミを見つめ、用意していた、蝉の死骸を与えてみた。

緊張しているんだろうか、ネズミは微動だにしない。

(きんちょう、しているのかな。まあ、むりもないよね)


そのネズミは、ゴム製のおもちゃだった。

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