お題その五 「羊 鍵盤楽器 豚飼い」



彼は廃品デザイナーである。

例えば、廃棄された自動車を何台も組み合わせて、家をつくったことがあるが、即、買い手がついた。

大胆な発想が注目されている彼の新作は、羊の骨を使った鍵盤楽器だ。

今回は懸念があった。非難されるかもしれないからだ。

このために羊を殺めてはいない。すでに死んだ羊の骨を使用しているが、動物虐待に直結するイメージがあることは否めない。

動物愛護団体などに、にらまれなければいいのだが……。

案の定、ひとりの男が彼のアトリエを訪れ、ものすごい剣幕でクレームを申し立ててきた。

聞けば、男の職業は豚飼いだという。

「これをつくるために羊の命は奪っていません」

「違う。そうじゃない」

豚飼いは持っていた紙を広げて見せた。

何かの設計図のように見える。

「動物の骨を使った鍵盤楽器は、私が先に考えたんだ。お前、アイデアを盗んだろう!」


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