第263話 どうしようか
「って事で、ロリポンコツ女神に聞いてきた結果、恐らく魔王アリスだろうって結論になった」
「でも弱体化してるんだよね〜?」
「ロリポンコツ女神の言ってる事が正しかったらな」
恐らく弱体化してるのは本当だろう。俺はかつてのやばい時の魔王を知ってるから、その時の魔力の波長を辿ってみたけど、弱体化してるなら、分からなくても仕方ない。
多分、特級の狭間は魔力補充の為に攻略したんだろうな。それが出来るかはさておき。
あいつが異世界みたいに魔族の身体ならともかく、人間の身体ならちょっと魔物を倒したところで補充出来る魔力の量はたがが知れてる。
魔族なら魔石をむしゃむしゃしてればそれだけで強くなれるチート仕様だったけど、人間の身体は魔石なんて食べれないし、魔力量を増やすなら、地道に努力するしかない。
あいつ、その事を分かってるのかな? まあ、魔族としてこっちの世界に来てるなら、話は別だけど。今もアメリカ方面にアンテナは張り巡らせてるけど、特に変わった様子はないし、恐らく人間としてこっちに来てるはず。
人間は魔石を食べれないって事を知らずに、むしゃむしゃしておっ死んでたら笑えるんだけど。
いくらなんでも流石にそれはないか。
「それで? これからどうするんや?」
「どうしようかね。強くなる前になんとかしておきたいけど、アメリカには行きたくないしな」
切羽詰まってたらそんな事を言ってられないけど、今は特に被害がでてる訳じゃないし。
まあでも、被害が出る前に何かしら対策ぐらいはしておくべきだよな。今は何もないからーって放置しておいて、いざヤバくなってから焦りたくないし。
アメリカさん、頑張ってアリスを見つけてくれませんかね?
☆★☆★☆★
「効率が悪すぎるわ…」
アメリカの片田舎。アリスは秘密裏にスライム達を討伐した後、自室で魔石の山に埋もれて途方に暮れていた。
人間が魔石から魔力を補充出来ないと知ったのは、スライム達の狭間を攻略してからだった。
今は能力を使って、魔石から魔力のみを抽出して体に取り込んでいる。しかし、変換効率があまりにも悪く、これなら強い魔物を倒してる方がマシなのではと思ってしまう。
「人間の身体ってこんなに不便なのね…。それなのに僅か30年足らずで、私を殺した天魔は一体なんなのかしら?」
魔力の抽出をやめて、指をパチンと鳴らすと部屋にあった大量の魔石が消える。
そしてベッドに寝転がり、天魔と初めて会った時を思い出す。
「最初は取るに足らないそこらの人間と大差なかったのにね。なんか毎度の捨て台詞が面白くて見逃してたらあっという間に成長して、最後は殺されちゃったんだけど」
アリスは異世界でよくある世界征服というのを目指していた。
特に理由があった訳じゃない。面白そうだからやってみようと思っただけだ。
しかもただやるだけではなく、なるべく自分では直接手を下さずに、自分の魔力カスから生まれた魔族や魔物を使って、徐々に人類を恐怖に陥れるように。
自分が手を出したら、なんの苦労もなく達成出来るだろうと思ってたからだ。そんなのでは楽しめないと、ゲーム感覚でやっていた。
そこにやって来たのが織田天魔。
「ふふっ。初めて会った時は泣きながら逃げ帰ってたわね。あの泣き虫が私を殺すまで成長するなんて、思ってもなかったわ」
アリスは楽しげに笑う。
『じゃあな。いつか地獄で会おう。その時はなんか仲良く出来る気がする』
異世界で最後に天魔がアリスを殺した時に言ったセリフ。
あのドヤ顔と悲しげな顔がごちゃ混ぜになった天魔の表情がアリスは忘れられない。
「ふふっ。会うのは地獄じゃないみたいだけれど。しっかり仲良くしてもらうわよ」
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