第249話 実力
「凄い。本当にこんな世界があるなんて」
山田花子さんに異世界云々の事を説明した。話が広まると面倒だから、一応の口止めはしておいたけど。
で、ミリスは現在、とある映像に夢中である。こっちの世界は何から何まで目新しいモノばかりで目移りしてたミリスだけど、まず最初に目を付けたのは映像機器だ。
こっちの世界では昔から当たり前にあるし、俺もミリスに異世界の事は話してたから、そういうものがあるんだってのは理解してたけど、実際に見ると感動しちゃうよね。
多分俺が初めて魔法を見た時や、魔物を見た時と同じ感じだろう。
「実験の記録を映像で残しておけるのは良い事」
そう言って見始めたミリスだけど、今見てるのは俺達が遺跡を攻略した時の動画だ。ミリスが作ったゴーレムに、この世界の探索者達がボコボコにやられてるのを見て良い気分になってたけど、俺が登場してから顔を顰めた。
「当時の私の力を詰め込んだ傑作達だったのに…」
「甘々だな」
「テンマなら突破するだろうと思ってたけど、こうも簡単にやられるのを見ると腹が立つ」
まあ、これでも魔王を討伐した勇者ですし? 怠けまくってるから当時の実力より落ちてるかもしれないが、流石にゴーレムに負けるほど落ちぶれちゃいない。
「テンマの話を聞いて色々な要素を足して作った自信作だったのに…」
「俺も見た時はびっくりしたよ。こうも忠実に再現出来るとは思ってなかった。お陰でこっちのネット民は大盛り上がりだ」
異世界に繋がってる説とか、狭間は地球の記憶を読み取ってる説とか、誰かが狭間を作って地球を侵略して来てるだとか。想像力豊かなネット民達がずっと議論してるよ。凄いよね、中には核心に迫る考察とかしてて、面白いなーと思ったもんだ。
「それにしても」
「ん?」
「この世界の人間はレベルが低い? 確かに私の自信作だけど、量産機にここまで良い様にやられてるのはどうかと思う」
「異世界よりも平和だからな。外に出たら魔物が襲ってくるって訳でもないし、昼夜問わず魔族が襲撃してくる事もない。危機意識が異世界とは違うよ。これでも鍛えてマシになった方なんだけど」
最初は異世界で言うBランクの魔物も倒せなかったんだぜって言ったら、ミリスは滅茶苦茶驚いていた。
これは発展を遅らせていた色々な人間のせいである。主に老害とかな。あいつ今何してるんだろ。精神病院に送られたって聞いたけど。
「私でも勝てそう」
「ん…。どうだろうな」
「あれ〜? ミリスちゃんって錬金術師の生産職なんだよね〜? 戦えるの〜?」
今まで黙ってた桜が興味津々とばかりに聞いてくる。他の面々も気になるらしい。まあ、気持ちは分からんでもない。俺が錬金術師って言ってたのに、映像を見て勝てそうって言うんだからな。
こっちの世界では生産職が戦うなんて事ないし。
「道具があればだけど。テンマ、私の魔道具は持ってる?」
「ミリスに作ってもらった魔道具なら、アイテムボックスに全部入ってるぞ。あ、いや、整理した時に金庫に放り込んだのもあるか」
「なら、少なくともBランクの魔物なら倒せる。Aランク以上は相性次第。Sランクは無理」
俺と出会うまでは自分で素材を取りに行ってたらしいしな。向こう基準でも上の方の実力だし、こっちの基準では充分上澄みだと思う。
「新しくなった体の性能実験もしたい。どこか体を動かせる場所はある?」
「じゃあ場所を変えるか」
このビルの空き階層は俺が結界を張って、どれだけ暴れても壊れない訓練場みたいになってるから。今は『シークレット』が雇ってる警備員達が入り浸ってるはずだ。
「ふむん。警備員達に色々詮索されるのは面倒だな。人払いするか…。いや、どのみちゴーレムが見られるのは時間の問題だし…」
「ハナコが開発したゴーレムの実験って事にすれば良い。わたしも人前では喋らないようにする」
「じゃあそれでいっか」
別に最悪バレても良いし。説明するのが本当に面倒になるけど。
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