第246話 起動
ギルドの工房の一室。
そこには俺と『シークレット』の狭間攻略メンバーに犀、そしてこの部屋の主であり、ゴーレムのボディを作ってくれた山田花子さんかいる。
「うわ〜! 凄いね〜! ゴーレムって聞いてたから、もっとメカメカしいのを想像してたけど、滅茶苦茶人っぽ〜い!」
「ふむ。強度はどうなのだ? いささか筋肉が足りんように見えるが」
桜は完成したゴーレムをマジマジと見つめて大興奮。桜が言うように人っぽい見た目なのは間違いない。でも、一目で人間じゃない事は分かる。限りなく人間に寄せた人形って感じだな。随所に機械パーツが見えるし。
公英は腕や太ももを見て、ちょっぴり不満そう。ゴーレムなんだから筋肉がないのは当たり前である。
「織田さん」
「うむ」
俺は胸のぽっかり空いてる部分を見る。拳より一回り小さいぐらいのスペースに核を入れたら一応完成なのだ。メッセージ通りの話なのであればだが。
って事で、アイテムボックスから核を取り出す。
「ふぁー! これが核ですか!?」
「お、おう」
山田花子さんが取り出した核を食い入るように見つめてる。どこからか出してきたルーペみたいなので、核をマジマジと観察したり、色んな角度から眺めたり。
そういえば山田花子さんに核を見せてなかったな。てっきり見せた気でいたぜ。
別に見るのは良いんだけど、俺が手に持ってる核を触らないようにしながら観察してるから、なんか変に恥ずかしい。
「だめですね。構造式が見た事ないものばかりでさっぱり分かりません。これを全て解読するなら、年単位で時間が掛かる事は間違いないでしょう」
一通り見て満足…いや、ちょっと名残惜しそうにしてるが、山田花子さんは核から目を離してため息を吐く。
やっぱりなんか色々高度な技術が使われてるんだろうなぁ。
「まあ、この核が起動出来たら本人に直接聞いてみたらいいさ。山田花子さんとは気が合うと思うよ」
「本人? 気が合う?」
山田花子さんは不思議そうに首を傾げてるけど、それは成功してからのお楽しみって事で。
「じゃあ核を嵌め込んでみまーす」
ガシャコンっとな。丁度フィットするように作られた胸元に核を嵌め込む。ええーっと、ここからは…。
「あ、そうだ。最初だけ大量に魔力を注入してやる必要があるんだった」
メッセージの内容を思い出し、ゴーレムに魔力を注いでいく。なんか俺の天使が若干ざわついてる気がするけど、気にしない。初めて蘇生を成功させた時もこんな感じだったしな。
「おお? 滅茶苦茶魔力を持っていかれるな。なんだこれ」
常人ならまず足りないであろう魔力を持っていかれる。具体的には万人を余裕で蘇生出来るぐらいの魔力量。俺が起動する事を前提に作られてるとしか思えないな。
「まぶしっ」
一瞬白く発光して、魔力の注入が終わる。
「むっ」
そしてゴーレムから声が聞こえる。
「成功か?」
「ふむ」
俺がゴーレムに声を掛けようとすると、ゴーレムは俺達をそっちのけで、屈伸したり、腕をぐるぐる回したり、指をグーパーしたり。動作確認をしている。
「おい。ミリスなのか?」
「悪くない体。良い仕事」
あー、これは間違いないな。このこっちの話を全く聞いてないようなマイペース感。久々すぎてなんか安心するくらいだ。
「久しぶり、叛逆の堕天使。私のメッセージを読んでくれたようでなにより」
「おい、その呼び方はやめろ」
それは俺の黒歴史だ。
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