第243話 ゴーレム
「山田花子さーん。いるー?」
「は、はいっ! お呼びでしょうか!?」
俺はみんなとのお話を程々に、ギルドにある工房にやって来ていた。
「これ、作ってくれない?」
俺はアイテムボックスの中から、素材と設計図を取り出す。未知の素材をぽんぽこ出していく山田花子さんは、目を白黒させながらも素材をガン見している。やはりこの辺は生産者って感じだな。
「こ、これは…?」
「特級攻略の配信見てた? そこに謎言語のメッセージがあったじゃん? それをさっきなんとか解読できてさ。そこに書いてあった事なんだ」
まあ、解読も何も普通に読めるんだけど。俺が読めるって分かったら、方々に色々説明するのが面倒だから。異世界の話とか詳しく説明するのはダルいし。
とりあえずその壁に書いてあったメッセージ通りに俺が設計図を引いて持ってきた訳だ。それがあいつからの要望だったからな。
「こ、これは…。ゴーレムですか? しかし、ゴーレムは今尚研究され続けてますが、自律運動には至ってないと…」
「らしいね。核の作り方が分からないんでしょ?」
「はい。私も一時期興味を持って研究した事はあるんですが…。途方もない時間とお金がかかりそうという事で、後回しにしていたんですよね…」
ゴーレムの研究は、地球に狭間というのが出現してから早い段階で研究されてるテーマの一つだ。狭間が出てくる前からロボット研究なんてのもしてたくらいだしね。
魔力を補充するだけで働いてくれる便利な労働力になるかもしれないんだ。研究しない訳ない。俺が異世界に行く前ですら、今まで人間がやってた色々な作業が機械化したりして失業者が出てるなんてニュースがあった。
仕事もそうだし、これがもし戦争に使えるならなんてのもあるよね。軍事国家とかがいかにも考えそう。
まあ、俺はそういう政治には興味がないので、その話は置いておいてだ。
昔から研究されてるけど、未だ実用に至ってないのがゴーレム研究なのだ。この前の狭間攻略で研究してる人達は希望を見出した事だろう。
明らかに人の手が入ったゴーレムが動いてたんだから。あんまり詳しくない俺からしたら、魔石になんか術式を組み込んで核にできたりするんじゃないのって思うんだけど、そう簡単な事ではないらしい。
「へぇー。こういう術式が…。あーこの組み込み方は凄いですね…。術式が芸術的です…」
山田花子さんは設計図を見てほけーっとしてる。書き写した俺だけど、全然理解できなかった。職人には通ずる何かがあるんだろうな。
「あ、すみませんっ! つい夢中になってしまって!」
「いや、別にそれは良いんだけど。それで出来そう?」
「はい。未知の素材を扱う事もあって、少し時間は掛かりますが、作るのには問題ないと思います。かなり高性能なボディになるでしょう。しかし…」
「核が無かったら、ただの置き物になっちゃうよって事だよね?」
「ええ…。どれだけ立派なボディがあっても、動かない事には…」
「まあ、そこは心配しないでよ。とりあえずこのボディを作ってほしい」
「分かりました」
山田花子さんは少し不思議そうにしながらも仕事を請け負ってくれた。何か聞きたそうにしてたけど、未知の素材を扱う誘惑に耐えきれなかったのか、早速作業に夢中になってる。
核はね。何故か俺の手元に一つあるから。本当に成功するのかは知らないけど。成功したら面白い事になるのは間違いないだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます