第242話 メッセージ
「やらぬ。俺はやらぬぞ」
「え〜見てみた〜い!」
どうやら想像力豊かなネット民が、早速考察やらなんやらして、俺の悪魔スタイルはどんなのかって色々考えてるらしい。中には結構正確に捉えてる考察もあって、こいつらすげぇなって思ったもんだ。
で、桜が俺の女体化を見たい見たいと騒いでるって訳だ。
だが、俺はやる気はない。正直、色欲が一番精神的に乱れるというか、俺も長年付き合ってきてる能力だけど、それでも完璧に御せてる訳じゃない悪魔なのだ。
思考がね、どうしても女性寄りになっちゃう。で、その記憶は残ってるもんだから、能力を解除した後に羞恥心で悶える訳だ。
最初は見境なしに男を誘惑したりして、吐き気がしたもんだ。もう随分長く使ってないし、久々に能力を使うと暴走する気しかしない。
現代で使う機会はないだろうし、出来れば永遠に封印していたい能力なのである。って事で、する気はありません。これがフラグにならない事を祈る。
「ちぇ〜」
「すまんな」
桜が不貞腐れちゃった。よしよしして、とりあえず慰めておく。ポテと遊んで機嫌を直してくだせぇ。
「で、俺はこれだな」
「結局それはなんなのだ?」
「俺も正直よく分かってる訳じゃないんだけど…」
俺が手に持ってるのは、特級の狭間の最奥の部屋で見つけた一つの核。これまで異世界で色んな素材を見てきたけど、これは見た事がない。公英が興味深そうに見ている。
いや、部屋に書かれてたメッセージには書いてあったんだけど。
「そういえばあのメッセージはなんだったんですか? 織田さんのいた世界の言語ですよね?」
「俺の異世界の数少ない知り合いからのメッセージだったな」
神田さんが公英に持たれかかりながら聞いてくる。君達、最近関係性を隠さなくなってきたね? いや、別に良いんだけど。お幸せに。結婚式には呼んでくれると嬉しいです。
「団長さんにもお知り合いがいたんですねぇ」
「本当に少しだけどな」
心を許せるぐらいの知り合いは、両手の指の数で足りる。このメッセージはその中の一人だな。陽花、可哀想な人を見るような目で見ない。友達は数じゃない、質だよ。
「なんや、兄やんはぼっちやったんか」
「まあ、ほとんどソロプレイではあったな」
序盤、パーティーを組んでもほとんど裏切られた。まだ異世界の事もよく分かってない俺は良いカモに見えたんだろう。人間が滅亡する危機だってのに、目先の微々たる利益に目が眩む。ほんと人間って救いようがないなって思ったもんだ。
俺が逆に能力を使いこなせるようになってくると、次は異世界人の方がついて来れなくなった。
一部上澄みの人間もいたけど、そういうのは総じて我が強い。パーティーなんて組めたもんじゃなかった。
「まあ、俺の異世界の話は置いておいて。メッセージの話だったな」
ぼっちと言われて否定出来ないので、早々に話を変える。今はたくさんの仲間に囲まれてるもんね。寂しくないもんね。
………眷属ガチャから出てきたのはズルかもしれんが。
「あれは異世界で仲良くしてた錬金術師からのメッセージだった」
俺のダンジョンからのドロップ品を鑑定してくれたり、暮らしが不便すぎるから便利道具を作ってもらったり。
異世界で1.2を争うぐらいお世話になったし、お世話をした人物だ。ぶっちゃけ、30年に渡る魔王との戦いで、2.3年はこいつが要望する素材集めに費やしてる。魔王戦に役立つ物も作ってもらったから文句はないんだけど。
俺は禁忌領域から貴重な素材を。その見返りに使える魔道具を。持ちつ持たれつな関係だった訳だ。
魔王を倒して引きこもってからは、疎遠になってたけどね。それがまさかこんなのになってるなんて。
俺は手に持ってる核をジッと見つめた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます