第241話 最奥の部屋


 「もう原型を留めてないじゃん」


コメント

・最初は格好良かったのにな

・自己再生をする時はすげぇって思ったけど

・そこらから素材を適当に回収してつけてるだけだからな

・ツギハギが不細工

・フランケンシュタインのゴーレム版


 最終門番と戦う事15分。破壊してもそこらに転がってる素材を適当にくっ付けて、自己再生するんだ。


 それを繰り返すもんだから、最初にカッコよかったフォルムとはかけ離れた不細工なゴーレムになってる。


 まあ、正直一撃で消し飛ばす事も出来たんだけどね。最終ボスだしエンタメと取れ高を重視して戦ってみました。


 わざと接戦を演じるのって難しいんだな。俺には向いてない。これがゴーレムじゃなかったら、魔物をいたぶってる動画にしかならなかったところだ。


 「よいしょっと」


 最後に少し力を込めた一撃を放って核を正確に撃ち抜く。ゴーレムは崩れ落ちてドロップアイテムに変わった。


 「はい。お疲れさん」


コメント

・やっぱ使徒様って格が違うんだな…

・これを怒らせようとしてる国がいるらしいんだよなぁ

・正気の沙汰とは思えん

・今は闇使徒様だぞ


 「配信もばっちりか」


 「花子ちゃんは天才だよね〜」


 今まで狭間は世界が違うからか、入ったら生配信は出来なかった。それをうちの山田花子さんが解決してくれたんだ。


 どうやったかは全然理解出来ないけど、とりあえずやってくれた。今回が初のお披露目だったんだけど、コメント欄を見る限り、ちゃんと外の世界に繋がっている。


 既にこの技術を量産する準備は出来てるし、いずれ探索者達が狭間攻略を生配信しまくる時代が来るだろう。スマホなんかも改造されて、外と気軽に連絡も取る事が出来るようになるだろう。


 ラノベのダンジョンチューバーみたいな感じだな。これの特許権だけでまた儲かるぜ。山田花子さんには、これからもどんどん研究費や素材を渡して面白い研究に従事してもらおう。


 本人も新しいものを生み出すのは大好きみたいだからね。


 「さて、門番さんが守ってた部屋に行きますか」


 最後のボスを倒して狭間は攻略した。でも、この門番が守ってた最後の部屋がある。


 俺は過去にここに来た事があるから知ってるが、最後の部屋は20畳ぐらいの部屋があるだけだ。宝物庫だったんだけど、俺が回収しちゃったからね。


 流石に全員は入れないので、俺と桜、後は配信カメラを持って最後の部屋に入る。


 「うわ〜! すっご〜い!」


 部屋は何かの実験施設だった。資料なんかは全部破棄されてるみたいだけど、何か実験をしてたんだろうなってのは分かる雰囲気の施設。


 更には四面ある壁のうち、一つの壁にはびっしりと異世界語で何か書かれていた。これを読めるのは俺だけだろう。


コメント

・おお…

・明らかに人の手が入った施設だな

・やっぱり狭間は異世界?

・なんか使徒様笑ってね?


 壁の文字を読んで俺は思わず笑ってしまった。そこに書かれていたのは俺へのメッセージだったからだ。


 まあ、大半は恨み節だが。


 「なるほどなるほど」


 俺は壁の文字を読んで、一通り理解すると隠されていた一つの核を動画カメラに映らないように回収する。


コメント

・使徒様は理解出来てるのかな?

・いや、流石の使徒様でも無理だろ

・でも使徒様は異世界からやってきた勇者説ってのがありましてね…

・与太話が過ぎる


 「桜、出るぞ」


 「この辺のは回収しなくて良いの〜?」


 「全部壊れてるだろ。触っただけで崩れそうじゃん」


 俺はそう言って、最奥の部屋から出た。ひとまずこれで長かったほぼ全世界の代表探索者を集めたブートキャンプ編は終了かな。


 

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