第237話 記憶にございません


 「ぐわーっ!」


 「のじゃー!」


 「あ、バンチョフとマーリンが飛んで行った。死んだかな?」


 狭間前で軽いブリーフィングをしてから、いざ特級の狭間に突入。俺達は手出ししないから頑張ってくれよと思いながら、暖かく送り出したんだけど、中々散々な結果になっている。


 いや、各国の探索者達の名誉の為に言っておくけど、序盤の調子は良かったんだ。少し苦戦しながらも、出現した魔物は討伐出来ていた。


 探索者達も油断と言うよりは、これは思ったより戦えるのでは? と、自信がついてきた頃。相手の魔物が牙を向いた。


 今回出現したのは遺跡のような狭間。古代遺跡とかが好きそうな人にズッポシハマりそうな、これぞ遺跡って感じの場所だ。


 で、出てくる魔物はこれも遺跡と言えば定番のゴーレム。多種多様のゴーレムが遺跡の番人として出てくる訳だ。


 「うーん。でも、俺はこの場所を禁忌領域に指定してなかったと思うんだけどな…。結界も張ってないし。シンプルに特級的な難易度で出てくる事ってあるんだ」


 現代に出現する特級の狭間は俺が禁忌領域に指定して結界を張ってる異世界でもそこそこ危険地帯のはずだったんだけど、ここはそれに該当しない。


 異世界に居た時、この遺跡には立ち寄った事がある。これは俺がやらかしたからこうなったとかじゃなくて、元から古代遺跡みたいな感じだったんだ。


 遺跡探索は男のロマンでしょと、意気揚々と探索して、そこそこのお宝は手に入れた。遺跡の番人であるゴーレムもここまで強くなかったし、異世界のトレジャーハンターの為に特に何も手を加えず放置してたんだけど。


 何があってこんなゴーレムが強くなってるんだか。


 「明らかに誰かがゴーレムを改造した痕跡があるよね〜」


 桜がそう言って俺をジト目で見てくる。でも、俺は本当にノータッチですよ?


 確かにゴーレムの腕がドリルになってたり、パイルバンカーみたいになってたり、ロケットパンチをしてきたり。中には頭からビームみたいな魔法を撃ってきたり。


 男のロマンを詰め込んだような改造をしてるゴーレム達が多数存在してる。でも俺は無実なのだ。おいおい、ガンダ○みたいなゴーレムもいるぞ。でも俺は無実なのだ。


 大事な事だから二回言いました。


 「異世界の文化というのは、ここまで現代に似た様な感じなんですか? どの世界でも男性の考える事は同じなんです?」


 「うーん…」


 神田さんも不思議そうに聞いてくる。言いたい事は分かる。明らかに地球由来の知識が混じってるのではって事だろう。


 魔王を討伐してから引きこもってたから、確かな事は言えないけど、少なくとも俺が活動してた時は、ドリルなんてものはなかったと思うし、あんな奇抜なゴーレムもいなかったと思う。


 じゃあ犯人は異世界に行った俺じゃんってなるけど、本当に俺はこんなのを作った覚えがない。ってか、出来ない。


 多少魔道具やらをいじくり回す事は出来るけど、ゴーレムをこんな風に改造したりするのは、そっち系の能力が必要だと思う。もし俺がこんな事出来るんなら、俺専用ロボットを作ってる。


 因みに狭間が異世界に繋がってる云々の話は『シークレット』の中でも今ここにいるメンバーと、犀しか知らないし、お偉いさん達にも言ってない。説明が面倒だし。だから、ちょっぴりコソコソしながら話をしている。


 少し離れた場所には動画撮影の為のカメラもあるしね。


 「いや、まさか…。でもな…」


 「だんちょ〜。とりあえずマーリンちゃん達を蘇生してあげてよ〜。ただの屍になっちゃってるよ〜」


 「おっと」


 一瞬心当たりが浮かんだものの、それを秒で隅に置いて死んだ奴らを蘇生する。


 ブートキャンプでも好成績を残してた『円卓』のリーダー、マーリンや『覇槍』のリーダー、バンチョフまでもが戦闘不能になってしまってる。日本の秘密兵器、伊達君もだな。


 まあ、とりあえずはみんなに特級の洗礼ってのを味わってもらうか。色々考えるのはその後だな。


 

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