第236話 都合良く
長らくお待たせしました。更新再開です。
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「おー。立派な狭間だなー」
「特級だもんね〜」
「新潟はお酒が美味しいと聞きますよぉ。攻略が終わってからが楽しみですねぇ」
「がっはっはっはっ! 早速ブートキャンプの成果を見せる時がきたか! 団長殿は運が良いな!」
「公君。特級の狭間が出てきて運が良いって言うのは流石にダメですよ。普通なら大混乱間違いなしです」
『シークレット』の面々は特級の狭間を前にしてものほほんとしておる。幾度も攻略してきて慣れもあるのだろう。我等は余りにも大きな次元の狭間に恐ろしくて少し震えておるのじゃが。
少し前には母国のイギリスにも特級の狭間は出現した。国内ではトップの実績を誇る我等『円卓』にも攻略の声は当然掛かった。
しかし、入ってすぐにワイバーンに襲われ、ほとんどなす術なく敗走した。その後、日本から『シークレット』がやって来て、あっさりと攻略して行った時は、国内でトップと持て囃されていた自分達がとても滑稽に思えた程じゃ。
その後、ロシアがほぼ世界中の上位探索者に声を掛け、今回の織田天魔プロデュースによる強化合宿のようなものが行われた。
訓練は地獄のようなものじゃった。本当に。本当に…。
我等だって常日頃から鍛錬はしておる。だが、我等の鍛錬がおままごとだったと思わされる程苛烈な訓練だった。
織田天魔は蘇生出来るのを良い事に、当たり前の様に殺してくる。いくら蘇生させれるからと、そう何度も殺されるのは本当に辛い。
いつ織田天魔が気まぐれで、『やっぱり蘇生するのやーめた』とか言っちゃったらどうするのじゃ。その時点で死ぬのじゃぞ?
だから我等『シークレット』のクランメンバーや、その他各国から集められた探索者は死に物狂いで訓練についていった。短い期間の訓練ではあったが、死を実感するトレーニングというのは本当に効果が大きい。見違える程に成長したとは思う。
配信で何度も何度も無様に殺されるところを流された。もしかしたら『円卓』はイギリスに帰ったら笑われるかもしれぬ。
しかしそれでも1級の狭間に立ち向かえる力を手に入れられたのなら安いものじゃ。自信を持って帰国しようと思ってた時に、日本に特級の狭間が出現した。
織田天魔はこれ幸いと、皆に帰国を延長させて実地訓練だと二日後には狭間の前に全員を連れて来た。
恐ろしい。本当に恐ろしい。1級の狭間とはまた違う圧を感じる。イギリスに出現した特級の狭間よりも大きく感じるのは気のせいじゃろうか?
「はーい。各国のクランリーダーさんは集まってくださーい。作戦会議的なのをしますよー」
我等『円卓』だけでなく、他国の探索者も各々恐怖を感じてると言うのに、当の織田天魔は気の抜けた声で人を集める。
「あれ〜? マーリンちゃんが見当たらないよ〜?」
「我はここじゃ」
我は他の者達より少しばかり背丈が小さい。だから、これだけ大人数が集まると人混みに埋もれて見つけてもらえない事が多々ある。
この強化合宿で仲良くなった桜ちゃんが私を見つけて自分の膝の上に乗せる。最初は子供扱いされてるようで嫌じゃったが、もうなんか慣れてしもうた。一応これでも25歳なのじゃがな。身長が140cmしかないから、行く先々でこうして膝に乗せられる。
織田天魔が『これが合法ロリか。恐ろしい』と言っていたのじゃがどういう意味なのじゃろうな。
「はい。じゃあ皆さんご存知の通り、各国の探索者が集まってる中、都合良く日本に特級の狭間が出現しました。皆さんの中には、今回のブートキャンプで自信を付けて特級の狭間も余裕だぜっなんて思ってる人もいるかもしれません。最終日にこれぐらいの力がないとダメだよって指標は見せたつもりですけど、やっぱり自分で経験しないと信じられないって人もいるかもしれませんからね」
織田天魔が皆の前に立ってゆっくりと話しかける。その顔は何か悪戯をたくらんでる少年のようで我は嫌な予感がぷんぷんした。
「って事で、まずはみんなで特級ってのがどんなものなのかを体験してもらおうと思います。『シークレット』は一切手出ししません。まずは皆さんで頑張って攻略してみて下さい。大丈夫。死んでも蘇生しますから。安心して死んで下さい」
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