第235話 合格
「よーし! 全員合格!」
新しい武器や防具、魔道具を装備してのブートキャンプ最終日。
初日とは生まれ変わったような強さを手に入れた各国の探索者達は、俺が設けた合格ラインを見事に突破した。
「これで油断さえしなければ、1級の狭間を攻略出来るはず。勿論入念に下準備した上でね。本当にみんな良く頑張りました」
俺の褒め言葉にみんな嬉しそうである。あんなにボコボコにして何度も殺した相手だっていうのに。こいつら全員Mかな? DVを受けてるのに、別れられない彼女とかとおんなじ感じか? ………ちょっと違うか。
「織田さん、特級の狭間は無理でしょうか?」
「無理」
一人の探索者がビシッと手を挙げて発言する。質問は尤もな事だったけどそれは無理だ。相性次第でなんとかなるところもあるかもしれないけど、間違いなく死人は出る。
イギリスに出現したワイバーンみたいな特殊な事例を除いて、禁忌領域とはそれぐらいにやばいのである。俺が面倒だって思ったところだからね。
「ふむ。まあ、どれぐらい無理か。生で実感してもらう方がいいかな」
俺は
そして跪かせるように呪言で命令した。
「これに対抗出来るようになればいけると思う」
現在アメリカにあるスライムの禁忌領域。そのボスが俺が苦戦したギャラクシースライムなら、この魔力量ぐらいの呪言は弾いてくる。
せめてこれに対抗出来るようにならないと、そもそも攻撃が通りませんよ。
「特級の狭間に勝てるようになるには、どれぐらいの期間が必要ですか?」
俺が憑依を解くと、呪言に縛られていた面々も解放される。少し落ち着いてから、また質問タイムが始まった。
「うーん…。ブートキャンプを3年続けたら勝てるんじゃないかなぁ」
「3年…」
それでも早い方だよ? 俺は何もかも自分で試行錯誤をして、魔王を倒すのに30年掛かったんだ。当然、訓練してくれる相手なんていなかった。
途中から俺より強いの人類がいなくなったからね。だから格上の魔族に挑み続けて自己研鑽するしかなかった。いやぁ、あの時の事を考えると良く生きてたね。
まあ、魔王に負けて何度も見逃されてるんだけど。あれがなけりゃ、死んでたな。
その点、ここにいる探索者達は幸せである。死の危険もなく(何回も死んでるけど蘇生してるからノーカン)格上である俺と戦い続けられるのだ。
「まあ、3年。どうしてもやりたいって言うなら付き合ってもいいけど、みんなには自国に1級が出たときに攻略して欲しいからなぁ。特級なんて、そんな頻度で出てくる狭間じゃないし」
「分かりました」
俺が1級を攻略しなくなったら、稼ぎが減るしね。もう既に人生を豪遊しながら何周も出来るぐらいの額はあるけど、俺って寿命があるのか謎だから。
異世界で300年ぐらい生きてた訳だし。
「よし。じゃあ今日は俺のギルドでお疲れ様会の準備をしてるから。そろそろ向か--」
「織田さん!!」
さっさと締めの挨拶をして、美味しいご飯やお酒でお疲れ様会に洒落込もうとしたら、訓練場所に、探索者協会の職員さんが転がるように入ってきた。
「どうしました?」
「と、特級です! 特級の狭間が日本に出現しました!」
おっと? フラグ回収かな?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます