第234話 最終日


 「ここまでくると笑っちゃうんだけど」


 「どういう神経してるんだろうね〜」


 「うにゃー」


 ブートキャンプも佳境に入ってきた。ゾンビ軍団だった各国の探索者も、中々見れるようになってきた。


 やっぱり蘇生をオープンにしたお陰で、無茶なトレーニングが出来るようになったのは大きいな。追い込み放題だ。


 で、そんな今日は週に一回の休養日。俺と桜とポテはリビングでゴロゴロしながら、テレビでニュースを見ていた。


 公英と神田さんは二人でどこかに出掛けて行った。あの二人は日に日に仲良くなっていくな。凸凹な二人だけど応援したい。


 陽花と犀はラウンジでお酒を飲んでる。陽花は相変わらずだけど、犀も結構飲めるやつらしい。陽花がお酒コレクションを自慢しながら飲んでらっしゃる。


 で、俺達がリビングで見てるのはアメリカ新大統領の就任会見的なやつ。俺に頭を下げた大統領さんは、猛バッシングを受けて退任したらしい。


 本当は大統領選って、もっと時間をやると思うんだけど。俺にはよく分からないけど、やたらとアメリカ国民に推されてる人間に決まったらしい。


 その会見で何故か俺がアメリカにまた行く事が決まってるみたいな事を言ってるんだよね。明言はしてないけど遠回しに確定事項になってる事を言ってる。しかも俺がお願いした形で。


 意味が分からないんだが?


 「まあ、別になんでも良いや。もう好き嫌いとかそういう感情も湧かない。興味がないね」


 「じゃあチャンネルかえよ〜っと」


 アメリカサイドの認識では、俺はデモにビビって帰った事になってるみたいだし、そう思っておいてもらおう。何を言われてもデモが怖いので行きませんって言っておけば良いや。もう関わるのも馬鹿らしい。


 「おっ! もうこんな時間だったか」


 「この人、最近人気だよね〜」


 俺と桜はアメリカの事なんて忘れて、ドラマの再放送に夢中になった。今大人気の女優の初めての主演作品なんだ。これは見逃せない。


 就任会見なんかよりよっぽど大事である。





 「諸君! 地獄のブートキャンプお疲れ様である!」


 それからまたしばらく。とうとうブートキャンプ終了の日がやってきた。地獄を乗り切った各国の探索者の面構えは歴戦の猛者そのもの。


 来た時とは戦闘力は比べ物にならないぐらい上がってるだろうし、高位の狭間に対しての恐怖心なんかもなくなってる事にだろう。


 狭間なんかよりも恐ろしい体験はさせたつもりだ。今、現代に出現する狭間で俺より恐ろしい存在なんて出てこないはず。これでどんな魔物にも恐れず立ち向かえるはずだ。


 「今日は参加者全員に俺からささやかなプレゼントがある!」


 そう言って俺はアイテムボックスから武器防具を大量に出す。それを見た各国の探索者は色めきだった。


 「俺がこれまでの訓練で、みんなに最適であろう武器か防具を用意した。多分みんなが使ってるものよりも使えるもののはずだ。元から使ってるものに愛着があるやつもいるだろうし、無理に使えとは言わない。別に売っても構わない。これからの探索者活動に役立ててくれ」


 俺、使わない武器防具魔道具を大量に持ってるので。その中でも貴重なのは家の金庫の中に飾ってあるけど、今回出したのはアイテムボックスの中で埋もれていたものだ。


 異世界で一時期、高難易度のダンジョンに潜りまくってた事もあって、そこそこ質の良いのが大量にあるんだ。俺が持ってても使わないし、アイテムボックスの整理も兼ねて放出した。


 これで各国の上位探索者の支持を得られるなら安いものである。これだけ放出してもまだ大量にあるしね。もったいない病が発症して、とりあえずアイテムボックスに放り込んでたのが役に立ちました。


 「よーし! 全員受け取ったら一応感触を確認しておいてくれ。俺の独断で選んでるけど、もしこれじゃなくて、こういうのが良いっていうリクエストも受け付けるぞ。俺がそれを持ってたらだが」

 

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