第232話 ゾンビ
「おぉ、マーリン。死んでしまうとは情けない。はい、蘇生」
「うわぁぁぁぁあっ!」
「おぉ、バンチョフ。死んでしまうとは情けない。はい、蘇生」
「ぎゃぁぁぁぁあっ!」
「おぉ、桜。死んでしまうとは…」
「生きてるよ〜!!!」
「おっと、危ない」
コメント
・なんだこれ…
・死屍累々の地獄絵図じゃん
・そんな気軽に蘇生を使うなwww
・なんとか生きてる『シークレット』の面々は、やっぱり強いんだな
・何回も修羅場を抜けてきてるだろうから
ブートキャンプを開催して一週間が経過した。
宣言通り、初日を終えた次の日から訓練の内容は過激に。俺の濃厚な殺気を浴びながら、実際に死を体感する凄惨な訓練は、確かに一定の効果を上げていた。同時にトラウマも植え付けてるが。
「おぉー。桜ちゃんの記録が昨日より上がっとるで」
「まだまだ成長の余地はあるって事だな」
死んだフリをしていた桜の糸を避け、神田さんのシャコパンチを天使の翼で弾き、陽花の液体には水魔法をぶつけて相殺。公英の捨て身の拘束を投げ飛ばす。
各国の探索者と比べて、やっぱり『シークレット』の面々は強い。なんたってまだ死んでないからね。みんなと同じような強度で訓練してるのに。
非戦闘員の犀は同じ訓練スペースにいるけど、みんなの各種データ集めに集中してもらってる。
自衛も出来た方が良いだろうって思って、最初は参加させようとしたんだけど、ウォーミングアップの段階でグロッキーになったから諦めた。
ランニングの時点で何回も転んだりしてた。運動音痴にも限度がありますよ。
コメント
・犀君…デュフフ
・シト×サイ? サイ×シト?
・この一週間でSNSがおかしな事になってる
・カップリングが溢れてるんだよなぁ
それと、何故か犀は世界の腐った方々に大人気だ。なんでかは分からん。公英の時はそんな事なかったのに、何故か俺とのカップリングがSNSで溢れまくってる。
糸目の関西人って、そういうのに人気なの? 俺は詳しくないから知らないけど、公英みたいなゴリマッチョの方がそういう界隈には人気だと思ってた。
まあ、それはさておき。
「さーて。そろそろ休憩は終わりかな。はい、みんな立って立ってー。模擬戦を再開するよー」
俺がそう言うと、各国の冒険者や桜達はゾンビのようにフラフラと立ち上がる。どこぞのバイオなゲームにそっくりだ。
「ブートキャンプが終わるまでに俺にクリーンヒットを入れられるようになるかなぁ」
『シークレット』の面々は恐らく出来る。だが、他の探索者は微妙だ。ちょっと心が折れかけてる。各国のエリート達は思いの外打たれ弱かった。
自国では英雄のようにチヤホヤされてたから、ここまでの挫折を知らなかったんだろう。まあ、仕方ないっちゃ仕方ない事だ。
どこぞの監督も言ってました。
負けた事があるというのが、いつか大きな財産になると。
ここでたくさん負けて帰って下さい。負けても死なないんだから。いや、死んでも生き返らせるんだから。
これ以上に最高な訓練環境はないと自負してますよ。このブートキャンプが終わった頃には、以前の自分とは全然違う景色が見えるはず。
1級だって攻略出来る可能性は充分ありますよ。
「うぁぁ…」
「おぉぉ…」
…………ブートキャンプ最終日はメンタルケア必須だな。本当にゾンビみたいになってやがる。魂は全然摩耗してないから、一時的なものだろうけど。
コメント
・この光景を見ると、とてもじゃないけど各国の精鋭には見えんな
・パンデミック映画に出てきそう
・全員で挑んで使徒様に太刀打ち出来ないんだもんなぁ
・未だに使徒様の底が知れない
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