第220話 香ばしい匂い


 「ポテー。元気にしてたかー」


 「んなーお」


 激動の中国遠征から日本に帰国。


 空港にはたくさんのファンが待ってくれていた。あれだけの騒動があったにも関わらず、怖がらずに暖かく迎えてくれた日本国民には感謝感謝である。


 で、その対応もそこそこに帰宅。

 ギルドのみんなにも挨拶して、面倒を見てくれていたポテとご対面。太ってる事もなくて一安心である。


 俺の元にやって来て、前脚でポテっとパンチしておかえりの挨拶をした後に桜の元へ歩いていった。扱いがちょっと雑である。それも可愛いんだけど。


 事務所のパソコンでメールをチェックすると、とある二ヶ国から鬼のように連絡があったけど放置。


 今回は疲れたからとりあえず休みたいのです。相手にしてる暇なんてありませんよ。まだ狭間が崩壊するまで時間もあるしね。


 ギリギリまで放置しちゃおっかな。


 なんて事を思いながら一週間。俺達は一切外に出ずに引きこもってダラダラし続けた。


 快適な魔法テントで寝てたとはいえ、やっぱり家は落ち着く。久々に桜や陽花とハッスルもして気分爽快。


 今日は何しようかなとポテを撫で回してると、ふとテーブルの上にあったカメラが目に入って、なんとなく配信でもするかってなった。特に理由ない。


 「はいどうもー織田天魔ですー」


 「にゃー」


コメント

・急に始まったな

・おお…すんげえオフって感じがする

・ポテちゃんがダラーっと抱えられてるww


 ささっと準備をして…ちょっとやり方が分からないから桜にやってもらったけど、配信をぬるっと始めた。


 ポテを抱っこしてしっかりと親バカアピール。


 「特に何もないけど、テーブルにカメラがあったのが目に入ったから配信を始めましたー。ピザを食べながらで失礼」


 さっき宅配で頼んだピザとコーラをパクつきながら雑談に興じる。食べてるのは俺だけで、別の場所では桜が牛丼をこれでもかってぐらい食べてるし、陽花は酒を浴びるように飲んでる。


 公英と神田さんは二人でジムに行った。あの二人は日に日に仲良くなってるなー。筋肉達磨と小動物系女子のカップリングか。捕まらなきゃ良いけど。


 「ピザにパイナップルって邪道だと思ってたんだけどね。これが中々どうして悪くない。食わず嫌いで敬遠してたけど、食べてみると普通に美味しくてびっくりした。まあ、テリヤキとか、シーフードの方が好きだけど」


 「にゃ! にゃ!」


 目の前にあるピザにポテが手を伸ばして食べたそうにしてるのを防ぐ。代わりに刺身を出してあげるから我慢しなさい。君には色々悪影響ですよ。


コメント

・パイナップルはなしだわー

・いや、結構美味いぞ?

・食わず嫌い分かる。俺も未だにそう

・酢豚のパイナップルも許せない派

・ポテちゃんきゃわわ


 「やっぱりこれは結構賛否が分かれるよなぁ。俺も食べる前は反対派だったし。桜にほぼ強制的に食べさせられてその美味しさを理解した。まあ、それでも好き嫌いは分かれそうな味はしてる」


 ピザ談義は続く。今では色んな味のピザがあるからね。好みも色々あるだろう。パンの耳の部分のこだわりとか言い出したらキリがない。サクサク派モチモチ派とかあるんでしょ? 俺はどっちでも良い派です。


 なんて事を話しながらのほほんと配信をきてると。


コメント

・こんな事してる場合かよ

・さっさとアメリカの狭間も攻略しに来いよ

・道のど真ん中に出てきて迷惑してんだ

・人類の為を思うなら無償で攻略しろ


 英語でこんな感じのコメントがチラホラ。

 ニュースでアメリカの国民が暴動寸前って事は知ってるけど、まさか配信にもこんな香ばしい奴が出てくるとは。


 俺が中国でやった事をご存知ではない? 自惚れ抜きで、今の俺にこういう事をしたら、やばいってのは充分示したと思うんだけど。


 自殺志願者か何かかな?

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