第197話 その頃のバチカン
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「ど、どうしましょう? とうとう我がバチカンとアメリカ、中国だけになってしまいましたぞ!?」
「織田天魔は相変わらずか?」
「は、はい…」
バチカンの主要人物達はとある部屋に集まってため息を吐いた。国に1級の狭間の出現がしてしばらくが経った。
最初はこれでやっと織田天魔を国に招けると喜んだものだ。狭間が出現した次の日には攻略要請を出したが、返答は拒否。
織田天魔は呑気にペルーを観光し終わった後に国に帰ってしまった。
端の愚か者が『シークレット』のギルド員を襲ったのもいけなかったのだろう。
それからはまともに応対してもらえる事すらなかった。我が国の要請は断っているのに、他国には出向く。アメリカも何かやらかしたみたいだが、バチカンはそれどころではなかった。
「まだペルーの事でバチカンの者が迷惑をかけた事で怒ってるのか? その者は既に処分したであろう。それでこちらの誠意は見せたつもりだが」
「織田天魔が何を考えてるか全く分からん」
「神に力を分け与えられたからとはいえ、少し驕りすぎではないか?」
集まった者達は的外れな事ばかりを言い合う。ここまで問題が大きくなる前に素直に謝罪すれば良かっただけなのだが、自分達が上、敬われる存在という固定概念から抜け出せずに、その発想に至らないでいた。
何故ここまで織田天魔がバチカンに来たがらないのか、本気で理由が分かってないのだ。
「我らだけで攻略の目処は立てられんか?」
「ダメですね…。一体一体の魔物を倒すのに時間がかかりすぎます。何体も出てくる魔物ですらその状態なのです。これではボス級なんてとても…」
「時間が許せば地道に強くなっていく事も出来たのであろうがな。それも出来ん。後一年ちょっとしか時間がないのだ」
織田天魔なしでは攻略は不可能。
そう結論付けて毎日の様に攻略要請を送っているのだが、返答は相変らず。
お祈りでなんとかして下さいと馬鹿にしたような言葉が返ってくるだけだ。
「日本では織田天魔がほとんど助力せずに1級の狭間を攻略したであろう? この際織田天魔でなくても良い。日本のギルドを招集出来んか?」
「その…。まずは公式に『シークレット』のギルド員を襲った事を謝罪せよと言っておりまして…。端の者がやった事なぞ我らには関係ないと、突っぱねてから日本は交渉の窓口にすら立ってくれません」
「なんと…。たまたま織田天魔が日本にいるからと、日本自体が驕っておるのか。我らに謝罪せよだと? 厚顔無恥にも程があるぞ」
「そもそも織田天魔はバチカンに所属すべき人物なのだ。それを日本は我が物のように使いおって」
日本政府と日本探索者協会はバチカンからの交渉をほぼ無視していた。日本にも一応キリスト教徒は少ないながらも存在する。
普段ならバチカンを粗末に扱う事などなかったのだが、織田天魔の登場で状況は一変した。
バチカンとの縁を切ってでも織田天魔を保護する。それが日本全体の決定だ。
人類最大の宗教勢力と、人類最強の人物。
日本は後者を優先したのだ。それにバチカンは基本的に話が通じないが、織田天魔はまともに付き合うなら問題ない人物だ。
付き合う側に誠意があれば、織田天魔とは非常に扱いやすい人物なのである。
そしてどうする事も出来ないまま月日は流れて、織田天魔がイタリアの狭間も攻略してしまった。
バチカンもこの機は逃せないとなんとか接触しようとするが、全てイタリア側に処理されている。イタリアも織田天魔の怒りを買いたくないので、必死に対処していた。
そして攻略翌日。
イタリアの狭間が攻略された動画がアップされた。
「お、織田天魔は天候すら操れるのか!?」
「こんなの我が国で使われたらひとたまりもないぞ!」
降り注ぐ雷、吹き荒れる竜巻。
その映像はこちらに見せつけるかのような動画だった。
「こんなの一体どうすれば…」
バチカンはようやく自分達がまずい立場にある事に気が付いた。
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