第180話 撃破


 公英が太陽パンチに対抗して、命名した月パンチ。ただの右ストレートにしか見えないが。


 そのパンチは正確にイビルワイバーンの顔面を捉えた。ミシッと陥没するような音がこっちまで聞こえてくる。命名するだけあって、中々の威力を誇ってるらしい。


 「むっ! これでトドメにはならんか!」


 が、残念ながら顎を砕いた程度で、ボスを仕留める事は出来ていない。

 それでも結構なダメージにはなっただろうし、イビルワイバーンの皮膚を貫通して、骨を砕いた事は凄いと思うが。


 「いきますっ!」


 そして公英に少し遅れてやってきた神田さんは既にボスの腹辺りで振りかぶっていた。

 残念ながらちょっと集中して溜める必要がある太陽パンチではなさそうだが、それでもモンハナシャコのパンチだ。


 どでかい図体のボスが腹を殴られて浮き上がる程のパンチ。ボスは汚い声で悲鳴みたいなのをあげている。


 「もう飛ばせないよ〜」


 桜は墜落したボスを糸で拘束。

 翼が使いものにならなくなってるから、もう飛べないけど、念の為ってやつだろう。

 

 そこからはもう一方的なボコだった。集団リンチである。動物愛護団体とかに怒られないかな。


 実際にそんな団体があるんだよね。魔物愛護団体みたいなのが。魔物だって生きてるんだから無闇に殺さず歩み寄りましょうって。


 無理に決まってるじゃんね。あいつらはほぼ本能レベルで人間を嫌っている。

 例外なんて滅多にいない。フェニックスぐらいだ。なんとかドラゴンを手懐けようとした時だって、どれだけ屈服させようとしても無理だった。餌付けもなにも効果がない。


 知能が高めなドラゴンですらそうだったんだ。魔物と仲良くなるのは諦めた方が良い。

 それに魔物に殺された遺族に向かって仲良くしましょうとか言えないだろ、普通。


 平和になったらなったで、そういうのが湧いてくるんだよなぁ。


 まあ、それはさておき。


 「勝った〜!」


 「がっはっはっは! トドメは俺だ!!」


 5分程タコ殴りにしてるとボスのイビルワイバーンが死んで消えた。

 桜と公英は両手を挙げてバンザイだ。


 「公英はなんであんなにトドメに拘ってたんだ?」


 「前回七海ちゃんに美味しい所を持って行かれて悔しかったみたいですよぉ」


 まあ、ラストアタックは華があるからなぁ。これがゲームならラストアタックボーナスでもあったんだろうが。残念ながらそういうのは現実にはございません。


 「強くなったなぁ。これはロシアの狭間もお前達に任せて大丈夫そうだ。難易度的には大して変わらないし」


 「要請が来ればだよね〜」


 まあ、そうなんだけど。

 遠からずくるんじゃないかなと思ってます。

 現代の探索者じゃ無理だよ。日本の探索者は徐々にレベルを上げてきてるけど、海外はまだまだ全然だからなぁ。


 日本に来てくれたらブートキャンプをやっても良いけど。流石にわざわざ海外に行ってまでやりたくない。


 「さーてイギリス観光だな」


 「料理がね〜」


 それな。俺達の観光って観光名所にも行くけど食いっ気の面が強いからなぁ。

 イギリスはちょっと期待出来ない。勿論美味しいところもあるんだけどね。

 ちょっと攻めすぎた料理とか、本当にこんなの食べてるのって料理が結構ある。


 宝箱や素材を雑に回収しつつ、外に出る。

 攻略したよーって野次馬達に報告して、そのまま探索者協会へ。

 ドロップ品を査定してもらってる間に、どこに行こうかとスマホをぽちぽち。


 「ん?」


 「どうしたの〜?」


 「いや…」


 なんか過激派宗教組織なる存在を名乗る人からテロのお誘いがSNS経由で来てる。

 簡単に説明すると一緒にバチカンでテロしようぜって事だ。


 「する訳ねぇだろ」


 「だんちょ〜とバチカンが仲悪いのをチャンスだと思ったんだろうね〜」


 考えが浅はかすぎる。

 流石の俺もそこまで堕ちてない。

 いや、爆撃しようか本気で悩んでた事もあるけども。


 それにSNSで誘ってくるって。

 普通にバレるだろ。これはちゃんと然るべきところに報告しておかないといけないな。

 俺も同類と思われたら困る。

 

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