第168話 四人の人気
「さあ! 長らくお待たせしたな! ペルー観光だぜ!!」
「待たせたのはあたし達だけどね〜」
「がっはっはっは! 団長殿に嫌味を言われてる気になるな!!」
狭間を攻略してから三日が経った。
攻略でへばっていた四人の体力がやっと回復したので、お待ちかねの観光である。
ホテル近辺はご飯を食べに行く為に出歩いてたけど、ペルーの観光地とかは一切行ってないからね。
桜と公英は俺が嫌味を言ってると思ったらしい。そんな事を言う訳ないじゃないか。
実際、低位とはいえ吸血鬼を倒せたのは凄い事だ。俺は五年くらい掛かったからね。
「山田さんが帰ってしまったのは残念ですっ」
「一緒に観光出来ると思ったのにねぇ」
そう。山田花子さんは帰国した。俺達の攻略が終わると、日本から今回の狭間について話を聞かせて欲しいから、早く帰ってきてくれとお願いされたんだよね。
でもだ。海外遠征のメインイベントはその地の観光だ。これをせずして帰れる訳がない。どうしたものかと悩んでると、大村さんが帰って映像を交えつつ説明しておきますと。それでも分からないところがあれば、俺達が帰ってから再度説明して下さいって事になった。
いやぁ。ありがたい。大村さんもきっと観光したかっただろうに。俺達はお言葉に甘えてみっちり楽しみますよ。
で、山田花子さんは大村さんと一緒に帰ってった。観光に興味はないし、新しい狭間測定機開発の目処がついたらしい。
まぁ、一番の目的は宝箱から出た素材の数々を弄る事だろうが。あの素材は山田花子さんでも厳しいと思うけどな。
異世界でも超一流の生産者しか扱う事が出来なかった素材だ。生産者が遅れてる現代人にはまだ早い。
「たんぽぽさん! あなたの筋肉に感動しました!」
「桜たん可愛かったぞー!」
「陽花様ー!!」
「シャコ姉ー!!」
ホテルから出るとかなりの野次馬が待機していた。ホテルに迷惑じゃなかろうか。後で謝っておこう。
これは大村さんがボス戦の動画をアップした影響だ。俺も見たけど、どこの映画だってくらいのクオリティに仕上がっていた。
今まで楽に勝ってた相手と違い、初めは勝てなかった相手から徐々に成長して勝利し、最後にはバケモノみたいなボス相手に死力を尽くして戦いギリギリの勝利を得た。
戦った四人共が映像を何回も見直すぐらいには大満足な出来栄えだったんだ。
それもあって、ペルーでの四人の人気は凄まじいものになっている。多分、後ろで突っ立ってた俺よりも人気だ。
「ここまで感謝されると良い気分だね〜」
「がっはっはっは! 南米の人間の筋肉はしなやかで良いな!!」
「たくさんお酒を頂きましたぁ」
「シャコ姉ですか…」
神田さん以外は満更ではなさそうでなにより。神田さんだけ通訳してあげたけど、シャコ姉に納得してなさそうなんだよね。
し、仕方ないよ。今回の新たなパンチ『太陽パンチ』は吸血鬼にトドメを刺したからね。みんな印象が強いと思うんだ。年頃の女の子のあだ名がシャコ姉はキツいもんがあるけど…。
もっと印象が強い変態先を覚えないとね。
これからもっと活躍して上書きしてやれば良い。
残念ながら神田さんが今観察してる生物は、お世辞にもかっこいいとは言えないから、まだまだ先の話になるだろうが。
こういう事になるなら、見栄えも良くて強い生物を観察させておくべきだったかな。
「使徒様は今回は何しに来たんですか?」
「えっと…」
その後もホテル前で野次馬対応をする。
本当は観光に行きたかったんだけど、とてもじゃないけどそんな暇はない。
せっかく待っててくれたんだから、出来る限り対応はしたいしね。
で、俺のところに10歳ぐらいの少年がやってきて、純粋な疑問をぶつけてきた。
そうだよね。俺、ほとんど何もしてないように見えるよね。
多分大人は俺が指導したから、四人がここまで成長出来たってのは分かってくれてると思う。危ない時には後ろから魔法でちょろっと手を出したり、時には魔物が襲ってくる数を調整したり。
でも今回の動画のメインはほぼ四人だった。別にそこに文句はないし、『シークレット』のメンバーが世間から評価されるのは普通に嬉しい。
しかしだ。楽しく動画を見ていた子供は違うんだろう。こいつ何もしてねぇじゃん、一体何しに来たんだよと思われても仕方ない。
「特等席で四人の活躍を見に来たんだ。カッコよかったぜ」
「えー! いいなー!」
まぁ、それを子供に説明して理解しろってのも何か違う様な気がするし、成長したら分かってくれるだろう。だから俺は一番良い場所で、みんなの活躍を見に来たんだと言っておく。
「今日は観光に行かずに、野次馬対応するか。明日からにしよう」
四人も野次馬も楽しそうにしてるしね。
明日以降もこうなったら困るから、明日からは勘弁してねとお願いしておくか。
あ、後ホテルに別途でお金でも払った方が良いかもしれん。ホテル前で邪魔だろうし、完全に営業妨害になってる気がする。
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