第165話 再会


 ☆★☆★☆★


 「神の御意志に従わぬ不届き者め!!」


 なんなのだ、あいつは!!

 ちょっと祭り上げられて調子に乗りよって! 我らは無視するとは、罪深き男よ。


 狭間から出てきた織田天魔に、今日こそは協力を取り付けようと、わざわざ待っていてやったというのに。


 「おい! なんとかならんのか!!」


 「そう申されましても…」


 くっ! 使えんな。あの男を力で従わせる事は出来ん。金で懐柔しようにも、唸るほど持ってるだろうから今更だろう。


 なんとしてもあの狭間の中に入って調査したい。今まであんな建造物がある狭間なぞ無かったのだ。あれは我らバチカンが独占すべき。遠くに見えた神殿は宗教施設に間違いない。神に近付く何かがきっとあるはずなのだ。


 神から天使の力を分け与えられ、その力を行使している織田天魔なら話が分かると思ったのだが、あいつはだめだ。

 神の力を我が物の様に使いおって。今に神罰が降るぞ。


 「本国から至急戻ってくるように言われておりますが…」


 「放っておけ! 本国の連中はこの狭間の価値が分かっておらぬのだ!!」


 絶対に何かあるはずだ。その情報さえ手に入れば、教団内での地位が上がる事は間違いない。いや、トップまで目指せる。


 なんとしてでも情報を持ち帰らねば。

 しかし、あの狭間の中に護衛無しで入って生きて帰ってくる事が出来るとは思えない。


 そうだ。これも全部織田天魔が悪いのだ。

 あいつが我らを素直に護衛しておけば、こんなイライラする事もなかった。

 名誉ある仕事を断るとはな。神は力を与える相手を間違ったのではないか?

 我なら十全に神の為に使えるというのに。



 ☆★☆★☆★



 「面倒な事になっておるようじゃの」


 「んあ?」


 美味しい海鮮料理に舌鼓を打ち、ホテルに帰って気持ち良く睡眠してたら、真っ白な空間、神域にいた。目の前にロリ女神もいるし。


 「覗き見でもしてんのか」


 「お主を見てると暇せぬからの」


 さようで。で、なんで呼び出されたのかな? ご褒美を貰える様な事があったかね?

 前にも言ったけど、俺はロリはNGよ?


 「何やら厄介な者共に付き纏われてるようじゃからの」


 「ああ。あんたの信徒なの?」


 宗教勢力さんね。無視ですよ。無視。

 虫が飛んでると思ってます。無視だけに。虫は無視ってね。ぶふっ。

 ギャグセンスゼロ。ありがとうございました。


 「知るかあのような者。存在もせぬ神に祈りなぞ捧げても意味はあるまい」


 あ、それ言っちゃうんだ。大丈夫なのかね。一応地球最大の宗教組織なんだが。

 やっぱりキリストさんは神じゃないのね。

 (キリスト教の方はすみません。この物語では存在しない設定です)


 って事はこのロリ女神が地球の唯一神とかそんな感じなんだ。全然見えないけど。

 メスガキって感じだけど。


 「妾が抑えておった狭間を少し放出したら、こんなにパニックになるとはのぉ。少し早まり過ぎたかえ」


 「ん? どういう事?」


 「難易度の高い次元の狭間は妾の方で抑えておったんじゃ。お主には簡単でも、他の人類には厳しいと思っての。しかし、お主のお陰で少しずつ光明が見え始めてきた。それなら少しばかり解放しても良かろうと、抑えてあった狭間を放出したんじゃ」


 はえー。そういう調整も出来たんだ。

 だから1級の狭間があんなに一気に出現したんだねぇ。勉強になりました。

 ん? 待てよ?


 「俺が現代に戻った時には日本に三つも出現してたじゃん。帰らなかったらやばかったんじゃね?」


 「あれはお主が地球に帰って来ると決まってから、抑えてたのを出したのじゃ」


 ほーん? そういうのも出来るのか。

 場所の調整まで出来ると。ほーん。

 わざわざ俺の為に日本に出してくれたんだ。てんきゅー。


 「以前はそんな事してなかったのじゃがな。あまりにも人類が弱すぎての。慌てて狭間の出現率を調整したものよ」


 やっぱりこのロリ女神はどっかポンコツだよな。姉はポンコツロリで妹は性悪美人。

 うむ。きちんと棲み分けが出来てるな。


 「やはりお主には一度神罰を落とさねばならんようじゃの」


 「事実を言っただけですぅ」


 煽り耐性が低すぎるぜ。これぐらい可愛らしいコミュニケーションじゃないか。いや、言ってないか。心の中で思っただけ。神は平気で心を読みやがる。


 「俺達がペルー攻略し終わった後に、バチカンに狭間を出現させる事って出来るの?」


 「ほう。お主も中々悪辣な事を考えるの」


 「俺が爆撃してやろうと思ったけど、そっちの方が俺のイメージ下がらなそうだし」


 俺がやろうとしてる事が分かったんだろう。ロリ女神も黒い笑みを浮かべてらっしゃる。やっぱりあの妹の姉だよ。黒い笑みがそっくりだ。


 狭間を出現させてもらって、攻略要請は拒否してやろう。断固拒否だ。大きい声で何回でも言ってやる。


 バチカンにそんなに恨みがある訳じゃない。上層部にもまともな人は居るんだろうし。でもあんなクズの手綱も握れないんじゃ、ダメですよ。結構上の方の人間みたいだし。下っ端の暴走なら、デカい組織だから多めに見ても良かったけど。


 「バチカンが無くなっちゃうかもしれないけど」


 「かまわん。それに恐らくそうはなるまいて。愚か者を処罰してお主に詫びを入れてくるであろう」


 俺がそれで許せばだけどね。俺はねちっこいぞー。でも馬鹿が死ぬのはともかく、関係ないパンピーが死ぬのはよろしくない。

 良い感じの落とし所を探らないと。


 「じゃあペルーの狭間を攻略したら良い感じのタイミングでお願いね」


 「分かったのじゃ」

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