第163話 翌日


 禁忌領域攻略の初日が終了した。


 「うーん。俺が訓練した時並みに疲弊してるな」


 桜は戦闘のせいで、際どい服がさらに際々になっていて、放送ギリギリの服装になってるし、陽花は体積がほぼない。もののけ◯に出てくるこだまぐらいのサイズになっている。


 公英と神田さんは俺が終了宣言すると同時にその場に大の字になってぶっ倒れた。

 初日って事で甘めにしたつもりなんだけど、これでもキツいか。


 「とりあえずモブ相手にはタイマンで勝てるようになって貰わないとな」


 「「「「………」」」」


 恨みがましい目でみんなこっちを見てくる。でもここは心を鬼にして指導させてもらおう。こんな丁度いい教材なんて滅多にないからね。


 モブ相手ぐらいにはタイマンで勝ってくれないと、この狭間ではやってけないぞ。

 ボスはなんだろうな。リッチ・キング辺りを予想してるが。


 「それにモブはスパッと倒せるようにならないと、この辺の探索もままならないぞ。今日はずっと戦ってるだけだったけど、この廃街を調べるのもやらないとだからな」


 表に出せないのは俺が回収するけどね。

 呪いの武具とか魔道具は、人類にはまだ扱い切れないだろう。


 「はい。じゃあ今日は帰るぞ」


 「織田さん。今日撮影した動画は公開して大丈夫なんですか? 中々ショッキングな動画になると思いますけど…」


 「もちろんです」


 禁忌領域の恐ろしさを人類の皆様に理解してもらう。その為に大村さんを呼んだんだからね。大阪の1級攻略で、日本の探索者は強いと思ってたところに冷や水をかける事になるけど、1級よりも上があるって事は知ってもらわないと。


 俺が出し惜しみしたせいで、アメリカは無謀な特攻を繰り返してるとも言えるからね。

 まぁ、俺が福岡を攻略した時点で説明しても信じてもらえたかは怪しいけど。


 あ、ペルーの協会の人に今回は時間を掛けて攻略させてもらうって言っておかないと。

 俺がいつもすぐに攻略するから、今回もそう思って予定とか立ててるかもしれん。


 街のど真ん中に出現してる狭間だから、ペルーの人達からすると、さっさと攻略して欲しいってのが本音かもしれないけど、もう少しだけうちのギルド員の為に我慢してもらおう。



 「おおー。阿鼻叫喚とはこの事か」


 翌日。今日はオフにした。

 疲労回復ポーションがあれば、初日の疲れなんて吹き飛ばして狭間に向かえるけどね。

 各々課題について考える時間も必要だろうし、これから地獄をみてもらう心構えをしてもらおうと思いまして。


 明日からは休みなく追い込んでいくつもりだ。で、大村さんがさっき動画をアップしたんだけど、反響が物凄い。

 桜達は日本でもトップクラスの実力をこの前の大阪攻略で示した訳だけど、それがぼろんちょんにやられてるんだ。


 それにいきなりモブで出てきたリッチ。

 これは俺が現代に戻ってきて、初めて攻略した1級のボスとして出てきていて、動画にも残っている。


 それがワラワラと出てきてるもんだから、これはどういう事なんだと、情報が錯綜してるんだ。


 「ぬぅ…」


 「公英さん。指がちょっと邪魔ですっ」


 俺が動画の反響について考えてると、公英と神田さんは二人でベッドに転がって、武術の動画を見ていた。二人とも昨日の結果については思うところがあったらしい。

 良い傾向だろう。なんか滅茶苦茶仲良くなってるし。


 「これは難しいね〜」


 桜は属性付与の練習。これは比較的簡単に出来たらしい。でも普段通り糸を使うのはかなり神経を使うみたいだ。かなり繊細な操作技術が求められるらしく、割と天才肌だった桜が苦戦してるのを見ると、かなり難しいんだろう。


 「………」


 陽花はなんとお酒も飲まずにパソコンに齧り付いている。かなりレアな場面。

 普段は絶対に片手にお酒を持ってるのに。パソコンで色々な体捌きの映像を見てる。

 陽花は防御さえなんとかすればな。本当に強くなると思う。是非頑張って欲しい。


 「まぁ、俺は俺で問題がある訳だが」


 さっきアップされた動画を見て、一部の宗教勢力が騒ぎ出している。廃れているとはいえ、神殿っぽいのが見えたからだろう。

 あれは一体なんなんだって、『シークレット』のギルド事務所に問い合わせが殺到してるらしい。


 まぁ、こうなるかなとは思ってたけどさ。

 実際ここは元は宗教国家の首都だった訳だし。こっちからは特に何も発信する気はない。面倒な事にならなきゃいいけど。

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