第156話 忘れてた
「ね〜だんちょ〜。ペルーにはいつ行くの〜?」
「忘れてた」
「にゃー」
リビングでポテと戯れてたら、桜がそういえばな事を聞いてきた。
本当にそういえばだよ。完全に忘れてた。
「いつでも良いって言ってたけど〜要請はもう来てるんだし早めに行っておいた方が良いんじゃないの〜?」
「おっしゃる通りです」
完全にダラダラモードに突入してた。
一時はペルーの観光地とか料理とか調べて行く気満々だったのに。あれだ。金庫を整理したりして、一段落ついた気になってたんだ。失敗失敗。
「ほな行くかー」
「でもだんちょ〜。生産者ギルドの人達に会うって言ってなかった〜?」
「忘れてた」
「にゃー」
ポテをわしゃわしゃして、パイロットさんにそろそろ準備お願いしますって連絡しようとしたら、桜がそういえばな事を以下略。
「生産者学校を作る打ち合わせするって言ってたよね〜。向こうからいつでも良いって言われてるけど〜。ずっと待ってるんじゃないかな〜」
「大変申し訳ない事をした」
いや、本当に。元はと言えば、生産者学校の人達と会った時にボロを出さない為にアイテムボックスを整理したってのに。
BBQがいけない。あれで打ち上げみたいな雰囲気を出しちゃったから。全部のタスクは終わったみたいな感じになっちゃったよね。
「俺の予定を管理してくれる秘書が必要だ。桜さんどう?」
「嫌だよ〜だ。あたしの役職はポテちゃんのお世話係だも〜ん」
「うなー」
桜はポテをこしょこしょしながら、今考えたような役職で拒否してきた。
ポテのお世話係って。確かに重要だけども。
「陽花はお酒担当、公英は筋肉担当、神田さんは癒し担当。秘書向きな奴が居ないな」
「次のガチャに期待したら〜?」
そう都合良く出てきてくれますかね?
イケオジ執事さんとか、美人秘書とか。
是非お願いしたいもんですなぁ。
「本日はわざわざありがとうございます」
「いや、待ったでぇ? 首を長ーくしていつ連絡くんのかなー思てたわ」
「よろしくお願いします」
「いやぁ。綺麗な事務所ですね」
って事で会う予定だった、生産者ギルドの人達に連絡してギルド事務所に来てもらった。
本当に待ってたみたいで。連絡して二日後には集まってくれた。お待たせして申し訳ない。
関西弁なのは『打倒アスカロン』の浅井さん。
関西弁は柴田さんと被るなぁ。アスカロン関係で仲も良いみたいだし。ノリもこれぞ関西って感じで、付き合いやすそうではある。
真面目そうな感じなのは『マッドサイエンティスト』の今川さん。
名前はアウトなギルドだが、国を相手に魔道具を売っている、日本で一番有名な生産者ギルドだと思う。
で、最後に応接室の絵画を興味深そうにみて、内装を褒めてくれたのは『魔女の釜』の細川さん。
魔女なんて名前なのに、男性の方だ。まぁ、ポーションとか薬関係は魔女って感じがするので、気持ちは分かるんだが。
他にも協力してくれる生産系ギルドはあるが、主にこの三つのギルドが生産者学校に多くの人を教師役として出してくれる。
「それで指導内容なんですが」
まずはとにかく基礎だろう。
アレンジとかするのは基礎があってこそだ。うちの山田花子さんもあんな感じだけど、基礎はしっかりしてらっしゃるんだ。ほぼ独学なのに凄いよね。
「せやなぁ。秘伝とかは教えんでええんやろ?」
「はい。そういうのはギルド勧誘の謳い文句にでもして下さい」
教えたいなら教えても良いと思うけど。
そういうアドで勧誘するのはアリだと思います。
「問題はイロモノ系の生産者ですね」
「確かに。そこが難しいですね」
今川さんは良く分かってらっしゃるな。
うちの佐藤太郎君みたいに、生産系は生産系なんだけど、ちょっとズレた能力を授かる人もいる。
そういう人の指導も考えないといけないだろう。
「素材の供給とかはどうなってるんでしょう?」
「国と協議してますけど、ある程度は国に持ってもらう予定ですね。後は他のギルドからの寄付金を使ったり、探索者学校にも協力してもらったり」
「薬草系は自家栽培でなんとかなりますけど、鉱石系はねぇ」
そうねぇ。鉱石はねぇ。
狭間から宝箱で希少金属が出たりするけど、基本は地上での採掘だからなぁ。
ゴーレム系とか鉱石をドロップする魔物の狭間がもっと出てくれれば良いんだけど。
輸入に頼る必要はあるだろうな。まぁ、その辺の交渉は国がやってくれるだろう。
金庫には大量の鉱石や希少金属が入った魔法鞄があるけど。本当に切羽詰まったらそれを放出するかな。
その後も話を続ける。
俺はあんまり生産系に詳しくないけど、意外にも話が盛り上がる。
浅井さんはアスカロンにどうやって勝つか、真剣に考えてて、その製作秘話を聞くのは面白かった。
今川さんは狭間探知機を使った山田花子さんに興味深々だった。同じ魔道具師として気になるんだろう。山田花子さんは『マッドサイエンティスト』の面接行った事あるらしいけど。それを言ったら今川さんは驚いてた。知らなかったのかな。
細川さんは俺が渡したポーションが気になるみたいだ。純度がうんたらと専門的な話をしてたけど、異世界のダンジョン産なので詳しくは知りません。
結局半日ほど話をして解散となった。
お土産に渡してもおかしくないであろう、生産素材をプレゼントしておいた。待たせてしまったお詫びも込めてね。
これで新しいインスピレーションでも湧いてくれれば万々歳ですな。
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