第130話 他国の状況


 大阪に出現した1級の狭間の攻略を始めてから、既に二週間が経過した。

 狭間の前で盛り上がってた野次馬達も、一週間を過ぎる頃には熱が冷めたのか、今でも残って狭間の前でワイワイしてる人は極少数である。


 「シャコパンチ!」


 時間が掛かってるなと思うのは俺だけらしい。

 俺は毎回一日で攻略してたけど、それは俺が異常なだけで、普通は時間を掛けて少しずつ魔物の量を減らしていき、ボス部屋やフィールドボスを探して討伐するのだ。魔法を適当に撃っとけばええやろの精神は、間違ってるのである。


 という事で、今日も今日とて攻略に勤しむ。

 俺は相変わらず観戦してるだけで、万が一ピンチになった時の為に待機している。

 大村さんの護衛の役割もあるが。


 今はうちの『シークレット』の面々が戦っていて、比較的安定しているグループになる。

 公英が前衛で暴れて、桜と神田さんが遊撃、後ろから陽花が危ない色をした液体を飛ばす。


 あれってなんだろうね。詳しく聞いてないんだけど、少しでも掠った魔物が激痛を堪える様な悲鳴を上げるんだ。

 酸とか毒の類だと思うけど。おっかないよね。


 神田さんは大阪遠征前に習得したモンハナシャコでパンチパンチしている。

 決してよろしいビジュアルをしてる訳ではないけどね。それでも強い。まだ覚えたてで変態時間は短いけど、結構な戦果を上げている。


 「大村さん飽きないですか? ここ毎日は同じ様な画しか撮れてないですけど」


 「いえ。皆さんの成長が肌で感じられて感動してますよ」


 初日とか最初の方はさ。

 物珍しさとかがあって面白いんだけど、ここ最近はとにかく作業の様に魔物を倒している。

 いや、作業って程簡単じゃないけど。現に単体ギルドで挑んだら既に詰んでるぐらいには、やっぱり現代探索者にとって、1級の魔物は強い。

 『シークレット』の面々だって、時折きつそうな表情をしてるからね。


 こいつら異世界に行ったら苦労するんだろうなぁとか考えつつ、目の前の光景を見る。

 『シークレット』の戦いが終わると、次は『夜明けの時間』が。

 今は1ウェーブ毎にギルドで戦ってるんだけど、この休憩が無かったらやばいぐらいには、強いみたいなんだよね。


 「ヒャッッッッッハァァァァァ!!」


 トリハピの吉岡さんはいつもの様に銃を乱射してる。あれでも一ヶ月のブートキャンプでマシになった方なんだ。目が前よりはイッてない。

 言動は相変わらず世紀末だが。


 「多分真ん中辺りまでは制圧出来てると思うんで、運が良ければそろそろボスが見えてもおかしくないと思うんですけどね」


 「フィールドタイプはボス部屋がないのが、面倒ですよね…」


 その分入った瞬間に魔法ぶっ放せば終わるって利点はあるけどね。

 まぁ、そんなの出来るのはまだ俺だけだし。

 道なりに進んで行って、ボス部屋がある一般的な狭間の方が普通はやり易いよね。



 とりあえず暇なので、ここらで他国で発生した1級の狭間について。


 台湾

 ペルー

 韓国

 イタリア

 イギリス

 スイス

 スペイン

 オーストラリア

 ロシア

 アメリカ

 中国

 日本

 ハワイ


 ハワイはアメリカ扱いだけど、まぁいいとして。

 一気にこれだけの国に出現した訳だ。

 そりゃ、てんやわんやの大騒ぎになるよね。

 あ、因みに台湾は中国から独立している。狭間騒動のごちゃごちゃしてる時に上手くやったらしい。

 詳しくは知らん。あんまり興味もないし。


 で、この中で既に攻略を開始してるのは、イギリス、アメリカ、ロシア、中国。

 死者も既に出てるらしいけど、とりあえずは自国で攻略してみよう勢だな。

 特に中国と日本の仲は最悪らしいから、ここからは攻略要請が来ないんじゃないかなと思っている。


 台湾、韓国、ペルーはさっさと俺に攻略要請を出したい勢。

 でも国の探索者にも成長して欲しいから、最後の踏ん切りがつかない様子。

 国民の世論も、さっさと攻略要請しろが七割、自国の探索者で攻略しないと世界から置いていかれるんじゃないかと焦ってるのが二割、俺のアンチが一割って感じだな。


 で、残りの国の殆どはまだ何も決まってない。

 自国の探索者に任せるのか、俺に要請するのか、はたまた別の選択肢があるのか。

 とにかく一大事なのに腰が重くて、いざ何かあった時にあたふたしそうな国って感じ。


 「イタリアが厄介なんだよなぁ」


 「? 何か言いましたか?」


 「いえ。独り言です」


 思わずポロリと漏れてしまった。

 カメラに拾われてないと良いんだけど。

 漏れてても、大村さんが編集でなんとかしてくれるか。


 イタリアというより、その中にある国が。

 狭間は神の試練であるとか声高々に叫ぶ世界最大の宗教団体の総本山があるんだよね。

 まぁ、あながち間違ってないからそれは別に良いんだけどさ。あのロリ女神が、最初はうっかりとはいえ発生させたのは間違いないんだし。


 俺が天使に憑依出来るのが問題なんだよな。

 俺の能力が知れ渡ってから、一番熱烈にアプローチをかけて来てるのがあそこなんだ。

 中には過激派なんかいて、俺をバチカンに住まわせるべきだなんてのもいる。


 あほかて。

 俺は実際に神に会ってるから、宗教自体を否定する訳じゃないけどさ。

 個人的に宗教団体は好きじゃない。


 美しくなり得るものを人間は醜くしてしまう。

 聖人一人に罪人二百万人。

 ほんと、人間って業が深いよね。


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 明日は一旦掲示板を挟みますー。

 

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