第122話 大量発生
「織田さん! こっちです!」
なにやら緊急事態があったらしいって事で、アキバから急いで帰ってきた俺達。ただならぬ雰囲気を漂わせてる山田さんに気圧されつつ、五人でとある部屋に入ると。
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「あーっ! またーっ!」
部屋の中で警報音が鳴っていた。
この音はつい最近聞いたばかりだ。
「え? 1級?」
「そうなんですよ!! 二時間前ぐらいから大量発生してるんです!! 今もまた一つ増えたみたいですし」
「ほわー。祭りの始まりかよ」
「へぇ〜。これが狭間探知機か〜」
「真っ赤な点が一杯ですっ!」
桜と神田さんは1級発生なんかより、狭間探知機に興味深々だ。桜はともかく神田さんはビビると思ってたんだけど。意外と肝が据わってらっしゃる。
「1級! 唸る! 筋肉が唸るぞ!」
「あらあら。楽しみねぇ」
こっちは今から1級攻略に思いを馳せている。
やる気満々なのは良いけど、とりあえず公英は静かにして欲しい。こんな所でパンプアップさせないの。
「それで? 結局何個発生してるの?」
自由な反応をする俺達を呆れた目で見ていた山田さんに合計いくつの金山が発生したのか聞いてみる。
そんな顔しないでよね。
俺からしたら1級なんて大金が湧いてきたようなもんなんだから。
他国の方達は是非是非要請を出して欲しい所。
「最初はペルーで発生して--」
そこから山田さんに聞きつつ、狭間探知機で確認しつつ。
するとなんと合計10個もの1級の狭間が誕生していた。
「なんで日本に発生してないんだよー」
これだけ発生して日本には0。
全部他国である。
俺には要請が来るかもだから良いとして、他の上位ギルドのブートキャンプの総仕上げに是非1級に入りたいのにさ。
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「びっくりした〜」
「ぴゃっ!」
俺達の話に我関せずだった桜と神田さんが警報音を聞いてぴょんと飛び跳ねる。
可愛い。なんかほっこりした。
いや、それよりも。
「ま、また…。故障を疑った方が良いのかも…」
「カーニバルの始まりだな」
また新しく発生したみたいだ。
確かにここまでくると故障を疑うよね。
それよりも次に発生した場所は…。
「日本! 大阪です!」
「いよっしゃー!!」
故障してないと仮定するととうとう日本にも出現したらしい。
素晴らしい! テンション上がってきた!
「とりあえず協会に連絡して事実確認をしてもらうか」
「イタリア、イギリスでは既に発見されてるみたいだよ〜。SNSで大騒ぎになってる〜」
ほう。これは故障してないな!
やっぱり1級狭間フェスティバルが開催されてるみたいだ。
「もしもし。織田です。ええ、ええ、そうです。こちらの探知機では他にも発見されてまして、そこも確認して頂けないかと--」
ビーッ! ビーッ! ビーッ! ビーッ!
「あ、また…」
「また増えたみたいです。はい。では、出現した順に言いますので、メモお願いします」
朝倉さんに電話してると、また警報音。
1級狭間のバーゲンセール。
山田さんはもう諦観したような表情だ。
なんでそんな表情をするんだ。開発してよかったね。早速大活躍じゃん。
それから三日後。
狭間のバーゲンセールはあの日だけで、ハワイで発生したのを最後にピタリと止まった。
結局最終的に発生したのは12個。台湾のを入れると13個の1級の狭間が地球に誕生した事になる。
「おい。ふざけんなよ。ドラマの再放送が急遽ニュースになってるじゃねぇか」
「ごろにゃー」
どのテレビも大量発生した1級の狭間の事ばっかり。地球の終わりの始まりとか、馬鹿みたいな終末論を唱えてるやつもいるぐらいだ。
それのせいで、俺が最近楽しみにしていたドラマの再放送がニュースに変わってしまっている。
せっかく毎日録画してたのに。思わずポテの顎を高速で撫でてしまったぜ。人間離れしたこしょこしょにポテは蕩けている。可愛い。
「うぅ〜。おはよ〜」
「おはようございますぅ」
俺がテレビの前でぷんすこしてると、桜と陽花がまだ眠そうな感じで起きてきた。
うーん。両者共にガウンを着てるんだけど、色気が凄まじいな。天魔君のエクスカリバーが抜剣されてしまうかもしれん。
昨日もしっかりハッスルしたというのに。
桜と陽花は二人してそのままお風呂に向かった。
朝風呂ですっきりシャッキリしてきて下さい。
既に時刻はお昼を回ってますが。
公英は既にジムだ。
俺が起きてきた時には、リビングにジムに行ってくると書き置きがあった。
そのまま警備の奴らともマッスルしてるんじゃなかろうか。
公英に警備員のまとめ役を頼んだから、予想していた事だけど、警備員に筋肉信奉者が増えている。
なんか元から筋肉好きな奴も多かったけど。
神田さんは今は新しい変態先を増やす為にとある生き物を観察中だ。
俺が例の漫画を読んで、是非変態して欲しい生き物だったので、東京に来てすぐにやってもらっている。
その神田さんは1級が発生しても余裕だなと思ってたら、自分はお留守番すると思ってたらしい。
そんな訳なかろうて。1級の経験が積めるなんて貴重なんだし、連れて行くに決まってる。
なんかぴゃわぴゃわと目を回してたけど、なんとかなるだろう。大丈夫。神田さんは強いから。
「さてさて。どの国が最初に要請してくるのかなぁ」
「にゃーむ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます