第91話 海の狭間
カジノで楽しみまくった翌日。
俺は気持ちを切り替えて狭間に向かっていた。
まだ崩壊までは猶予があるからカジノリベンジしたい所だったけど、カジノに入り浸ったりしてたら俺のイメージがね。
昨日桜に辱めを受けてイメージが下がったかもしれないけど。仕方ない。罰ゲームだもの。甘んじて受け入れるさ。
「本日はよろしくお願いします」
「お願いしますね」
今日は攻略風景を撮影するという事でカメラマンが同行する。
海なのに大丈夫ですかって心配されたけど、なんとかなるだろ。入った所は小島になってるみたいだし。その場から動かなくても攻略出来るさ。
「むっ。今日も野次馬が」
「セレブがたくさんいるよねぇ」
なんか今日の野次馬はマナーが良い。
紳士淑女が多いからかな。
こんな人達でも野次馬するんだなぁ。
軽く野次馬対応していざ突入。
「海だー!」
「綺麗だね〜!」
目の前に広がる大海原。
どこまで続いてるんだろう。
「織田様。撮影を始めてもよろしいですか?」
ついてきたカメラマンさんはかなりビビってる。
だけど、なんとか必死にカメラをこちらに向けようと頑張っていた。
この人も一応能力者らしいけど、『撮影』持ちじゃないから手が震えている。
可哀想に。フランス版大村さんと呼んでやろう。
「いつでも大丈夫ですよー」
「だんちょ〜! みてみて〜!」
「おお! すげえ!!」
カメラマンが可哀想だからさっさと攻略してやるかと憑依しようと思ったら、桜が宙に浮いていた。
どうやら糸を使って表面張力で浮いてるらしい。
アメンボかよ。油とかいるんじゃなかったっけ?
「んふふ〜! 昨日お風呂で練習したんだ〜!」
俺は普通に空を飛べるけど、なんかそれ以外で能力を使って浮いたりしてるとすげぇって思っちゃう。
「
撮影が始まってるので俺もアピールするために憑依する。
髪が青色になって青い翼が顕現する。
「水球」
手のひらサイズのボールを出して桜に向けて射出する。残念ながら糸がニョキって出てきて防がれてしまったが。
「もう〜! なにさ〜!」
「水球」
休む間を与えずにどんどんと撃っていく。
桜は器用に海の上に浮かびながら糸ではたき落とす。
「桜ちゃん怒ったぞ〜!」
防ぎながら弾糸で反撃。
桜のマルチタスク能力がすげぇ。
海に浮かぶのも楽じゃないだろうに。
「水壁」
飛んできた弾糸を水の壁でしっかり防ぐ。
「ちょ、ちょっと大丈夫なんですか?」
急に喧嘩を始めた俺達に最初はびっくりしてたけど、今はしっかりと撮影しながらも仲裁してくれようとしている。
「桜ー! もう良いぞー!」
「えぇ〜! 楽しくなってきた所だったのに〜!」
「えぇ…? どういう事です?」
ピタッと能力合戦をやめた俺達を怪訝そうな顔で見るカメラマン。
いや、攻略を始めてもカメラマンが緊張し過ぎて手が震えまくりだったから。
『撮影』持ちの能力者じゃないし、手ブレ補正とかもないでしょ? 俺の華々しい活躍をちゃんと撮ってくれないんじゃないかと思って。
せっかく撮ってもらうならカッコよく撮って欲しいからね。
緊張をほぐす為にちょっとお遊びをいれてみました。
「ウォーミングアップみたいなもんですよ」
「そ、そうですか」
気の抜けた表情を見せるカメラマン。
うむうむ。きっちり緊張も抜けたんじゃなかろうか。これならしっかり撮ってくれるだろう。
「さーて、さっさと攻略したいところだけど」
「ちょっと濡れちゃったよ〜。買ったばっかりの服なのに〜」
「ふっ。まだまだ未熟という事だな」
「ふしゃ〜!」
うーむ。どうやって攻略しようか。
馬鹿正直に空から魔物を探して処理してもいいけど。それじゃあ面白味がないよね。
フランスの人達の度肝を抜く攻略動画にしたい。
猫みたいにふしゃってる桜を宥めつつ、どう攻略するか思案する。
なんか眠たくなってきたなぁ。
「そういえばここの魔物ってなんだっけ?」
「サハギンだよ〜」
半魚人か。ボスはリーダー辺りかな?
あいつはゲリラ戦が得意だからな。探すのが面倒だ。
「よし決めた。まとめて処理しよう」
ちょっと魔力消費は多いけど、これなら俺の凄さも分かるし一気に処理出来る。
一石二鳥のパーフェクトな作戦だ。
「しっかり撮ってて下さいね」
俺はカメラマンに目配せしてから、手を両手に大きく広げる。
数秒後、海の水がどんどんと浮き上がってきた。
「こ、これは…!」
「すっご〜い!」
時間が経つにつれて海の水が減っていく。
そして約5分後。
海の水を全て空中に浮かせた。
「おおー。サハギンが焦っておるわい」
「水族館みた〜い!」
浮かび上がった水を球状にしてから、どんどん圧縮していく。
どでかい水球がどんどん縮んでいくのに焦ったサハギンが逃げようとしてるが、そんな事を俺が許す訳もなく。
ただ水圧に押し潰されるのを待ってるしかない。
「おっ、魔石とかドロップ品が落ちてくるぞ。桜、拾ってくれ」
「ういうい〜」
サハギンは逃さず、水圧で潰れてドロップ品や魔石だけを小島に落としていく。
かなりの魔力操作を要求されるけど、天魔君には余裕である。
「あ、ボスっぽいのみっけ。他のサハギンよりマッチョで大きい」
かなり暴れてらっしゃるけど。
大人しく死んで下さい。
「あ、死んだ。桜、このフィールド内のどこかに宝箱とドロップ品が転がってるだろうから探してくれ」
「はいよ〜」
ボスの縄張りがどこか知らないからね。
まとめて捕獲しちゃったし。
桜は全身から糸を出して狭間内をくまなく探っていく。そして1分もしないうちに宝箱とドロップ品を手繰り寄せた。
「見つけたよ〜」
「よし。ならリリースだ」
圧縮しすぎて頭ぐらいの大きさになっている水球を海に返す。
「
「絶対障壁」
一気に放出したので、すぐに揺り戻しがやってくる。それが分かってたのですぐさま
「凄い迫力だよ〜! 津波の中に居るみた〜い!」
「しっかり撮れてます?」
「ば、ばっちりです」
うむうむ。
今回の攻略も大成功だな。
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今回の章題を学校巡りから海外遠征に変えました。内容に変更はありませんが一応報告。
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