第87話 軽く観光


 「えいや」


 ボス部屋に入ってすぐに特大の火球をぶちかます。これで攻略は終了である。お疲れ様でした。

 哀れマザー。必死に産んで勢力を増やしてたのにね。


 「あっけな〜い」


 「攻略時間は1時間かからなかったな。まぁ、2級なんてこんなもんだろ」


 ドロップ品や宝箱を忘れずに回収。

 今回はフランスに売る予定だからな。ドロップ品の糸とかは防具に使えるし、毒は解毒剤を作るのに優秀な素材だ。魔石はいわずもがなだし。


 「これを売るだけで日本で散財した分は返ってくるな」


 「また散財出来るね〜」


 いや、前回でしこたま買ったし当分はいいだろ。

 帰ったらゲームをいっぱい買って引きこもります。あ、学校巡りがあるんだった。ぴえん。


 「それ、重くないの?」


 「特には〜」


 糸でぐるぐる巻きにされたロンシャンの連中を引き摺ってる桜。

 十人以上の男を引っ張っても大丈夫とは。実は桜さんは脳筋なのかな?


 「今脳筋って思ったでしょ〜?」


 心を読まないの。


 「桜もうすぐ出口だし、その荷物、見栄え良くしてよ」


 「仕方ないな〜」


 雑に扱ってたら俺のイメージがね。

 頑張って救出してきました感を出さないと。

 気絶してるのは仕方ない。安心して力尽きた事にでもしておこう。



 狭間から出るとカメラでパシャパシャと。

 野次馬は想像以上に早く狭間から出てきた事にかなり驚いている。


 「お、織田さん!」


 「あ、案内の。お疲れ様です」


 「救出を優先してくれたんですか!? ありがとうございます!!」


 およ? 何か勘違いしてらっしゃる?

 先に救出して攻略を後回しにしたと思ってない?

 俺がそんな面倒な事をする訳ないじゃん。


 「いや、攻略もしてきましたよ?」


 「は?」


 「言ってる間に狭間も消えると思います」


 流石に早すぎたかね。

 火魔法で一瞬だったから。

 小足見てから昇龍余裕でした的な? 違うか。


 案内の人は信じられない顔をしている。

 おいおいおいおい。

 フランスピープルズよ。織田天魔君を舐めちゃいないかい? マジで魔法二回しか使ってないぐらい余裕だったぞ?


 「あ、消えましたね」


 「ほ、ほんとに…」


 その後ロンシャンの連中を引き渡したり、出ている屋台を冷かしていると狭間が消滅した。

 天魔君の偉大さを思い知ったか!

 クレープに齧り付いてる現状では、そう思えないかもしれないけどさ。


 「じゃあ確認も出来ましたし、協会に向かいましょうか。ドロップ品はフランスで売る契約ですし」


 「お、お願いします」


 未だ信じられない表情をしてらっしゃる。

 そう思うと日本は適応が早かったな。

 お国柄でしょうかね。




 「ちょっとした想定外はあったけど、早く終わって良かったな。まだ時間はあるし、ちょっとフランスを見て歩くか?」


 協会でドロップ品を売り払った後は自由時間だ。

 ロンシャンの連中確保の迷惑料も上乗せしてもらえて大満足である。

 で、明日は一日休んでから次の狭間に向かう。

 フランスサイドは一日しか休養を挟まなくて大丈夫かって心配してたけど。

 正直、疲れる事は何もしてないからね。


 「そうだね〜。凱旋門見にいこうよ〜」


 「見たい。すぐ行こう」


 フランスといえば凱旋門。他にも色々と名所はあるけど、フランスって言われたら最初に頭に浮かぶのは凱旋門なんだよね。


 俺達が滞在中はロールスロイスに乗り放題。

 運転手もつけてくれるので、早速お願いして凱旋門へ。生で見るのは初めてだから楽しみである。


 「ほわー! でっけぇ!」


 「なんでこんなの作ったんだろうね〜」


 知らぬ。天魔君中卒だぞ? いや、中学中退だぞ? ………中学中退ってやばいな。普通あり得ない事だし。


 「良ければ説明しましょうか?」


 「え? 良いんです? 是非お願いします」


 今は車の中から凱旋門を見てるんだけど、運転手さんが凱旋門の成り立ちについて教えてくれた。

 そんな事も知らないのかと呆れられていなければ良いんだけど。馬鹿ですみません。


 「こちらエトワール凱旋門と言いまして、1805年にナポレオンが戦争での勝利の記念に造らせたと言われております」


 あーナポレオンね。

 それぐらいは流石に知ってる。


 「ただし完成に30年かかり、完成した時は既にナポレオンは亡くなっていたそうです」


 なんじゃそりゃ。

 時間かけすぎだろ。ナポレオン無念なり。


 「いや1800年代の建築技術だと早い方なのか? 重機とかもないし」


 「いえ〜い! ナポちゃん見てる〜?」


 こら、やめなさい。

 軽々しくナポちゃんとか呼ばないの。

 もし、『憑依』能力者が過去の偉人に憑依するとかだったらどうするのさ。

 不敬なりって言われちゃうよ? ナポレオンが強いのかは知らんけど。


 「だんちょ〜の天使の方が格的に上じゃな〜い?」


 馬鹿言え。お前終○のワルキューレ読んでないのかよ。人間サイドは平気で神も殺してくるんだぞ?

 俺的にはちょっと無理がない? って思うけど、物語として面白いからOKです。


 「こんな能力が溢れる世界になったんだから、偉人だってバケモノみたいな感じになっててもおかしくない」


 なんたって能力は解釈次第だからな。

 もしナポレオンに魔法を使う伝承とかあってみろ。能力の持ち主次第では使ってくるぞ。


 「そう考えるとだんちょ〜の天使ってなんで魔法なの〜?」


 「俺が若かったからです」


 異世界に来たら魔法。

 そんなイメージが強すぎて。

 天使を使えば各属性の魔法なんて思いのままだぜとか思ったんだろう。

 ちょっと昔すぎて覚えてないが。もっと色んな能力が使えただろうに。


 「その分悪魔は頑張って想像したんだけど」


 「ふ〜ん?」


 興味なさそうだな。

 まぁ、いいや。

 せっかくだから凱旋門の下に行ってみようぞ。


 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る