第74話 一夜明けて


 「新居最高」


 入居してから一夜明けて。

 桜さんと夜の戦闘をする事なく、各自の寝室で睡眠を取る事になった。


 朝に起床してから階下に降りると、ポテが猫用ベッドで爆睡していた。

 桜の部屋に行ってると思ってたけど、一人で寝てたみたいだな。


 「お前本当に野良だったのか? 警戒心の欠片もないじゃん」


 寝心地が良いのは分かる。

 中々のお値段がしましたからね。

 でも野生が一切感じられない。

 良く東京のコンクリートジャングルで生き残れたな。


 「朝はコーヒー。セレブみたいだ」


 馬鹿でかいキッチンに向かいコーヒーを作る。

 機械の動かし方に四苦八苦しながらも、なんとか完成させた。


 「いや、コーヒーぐらいは誰でも飲むか」


 椅子に座りコーヒーを飲みながらぼーっとしてると、ポテが起きてきた。

 どうやらご飯をご所望の様子。


 「待て待て。まだ見ながらじゃないと分からないんだ」


 足をペシペシと叩きながらせかしてくるのを宥める。慣れてないもんで、しっかりと内容書を読まないと量とかが分かってないんだ。

 デブ猫にはしたくないからな。


 「はい、どうぞ」


 「にゃご」


 ご苦労とでも言うように、軽く頷いてからキャットフードに夢中になったポテさん。

 あなた賢いのね。


 「あー外出たくねー」


 明日から学校巡りをする予定なんだよね。

 せっかく新居が出来た事だし、引きこもりたい気持ちがMAXなんだけど。


 「あれ〜? だんちょ〜早いね〜?」


 「いや、もう10時」


 下着姿のだらしない桜が起きてきた。

 チラッと時計を見たら10時を回っている。


 「あたしにもコーヒー入れて〜」


 「はいはい」


 ご飯をがっついているポテをにやけ面で眺めながら、コーヒーをお願いされたので入れてあげる。

 味の保証はしませんよ? 初めてなので。

 俺は美味しかったけど。


 「学校巡りする時はポテをどうしようか」


 「明日は東京でしょ〜?」


 「そうだけど、遠い所に行くってなると泊まりになるだろ? 連れて行くのはなんか違うくない?」


 ペットホテルに預けるとか?

 俺が転移でご飯の時間だけ戻って来てもいいけど。家で一匹ってのは寂しくないのかね?

 ペットホテルでも一緒か?


 「連れて行っても大丈夫だと思うけどな〜」


 「いや、学校にお邪魔するのに猫同伴はやばいでしょ」


 そんなガチの感じのやつじゃないけど、見栄え的にどうなのよ。

 猫が苦手な生徒も居るかもしれないし。


 「転移で戻ってくるか。少し留守番が長くなっちゃうけど」


 「にゃご」


 気にするなとばかりにポンと足を叩かれた。

 やっぱり君は賢いね。


 「よし。明日は外に出ないといけないんだ。今日は家でダラダラするぞ!」


 「3級の狭間攻略はどうするの〜? 落札したんでしょ〜?」


 そうだった。忘れてたな。

 東京に都合良く湧くからさ。勢いで落札しちゃったんだよ。

 落札した時はやる気満々だったのに、今は凄い面倒だ。別に急いでる訳じゃないし、もう少し後でも良くないかな?


 「ネットでは落札者が見れるからね〜。あたし達が落札したって事で早速野次馬が出来てるみたいだよ〜」


 「ガッデム」


 通行人や一般の方に迷惑になるでしょうが。

 早めに攻略して混雑を解消しないと。

 なんで俺がこんな事にまで気を使わないといけないんだよ。


 「これも一種の有名税ってやつだよね〜。出待ちみたいなもんでしょ〜」


 「くそ迷惑」


 俺のファンはマナーが悪いとか言われたらどうするんだよ。

 そういう事したりするから、ドルオタとかは嫌われるんだぞ。


 「SNSで何か発信しとくべきか」


 「あたしが適当にやっとくね〜」


 今度からは落札したらすぐに攻略日も告知しよう。それでまだマシになるだろう。


 「ちっ。引きこもりたかったけど仕方ないな。昼飯ついでに攻略しに行くか」


 「ついでにお買い物にも行こうよ〜」


 「服とか? そういうのは丸一日かかるんじゃないの? 中途半端な時間に行っても大丈夫かね?」


 「今日で全部買わないといけない訳じゃないし〜? いくつかお店を回るだけでも良いんじゃないかな〜?」


 そういうもんなのか。

 なら、お買い物も追加で。

 狭間にお金を稼ぎに行くのに、帰りに浪費してくる訳だ。貯金出来るのでしょうか。


 「あ、カメラ持って行こ。桜がメインで攻略するんだよね?」


 「魔物次第かな〜? アンデッドとかなら相性悪いし〜」


 今日の俺はカメラマンか。

 一気に気が楽になってきました。


 「撮影持ちの能力者が欲しいなぁ。面接では居なかったし」


 「あたし着替えてくるね〜」


 メイクルームに向かった桜についていくポテ。

 一人ぼっちになっちゃいました。


 「桜はそんなにお化粧に時間はかからないけど、この微妙な空き時間をどうするか」


 何をするにも中途半端な時間。

 テレビでも見るか。


 「あ、どんなゲームあるのかな」


 リモコンを探していると、テレビの隣にあるゲーム棚が目に入った。

 とりあえず用意してもらったけど、ソフトとかは何があるのか知らないんだよね。


 「あ、ソフトはないんだ。自分で揃えろって事かね」


 ならばよし。今日のお買い物にゲーム屋さんに寄るのも追加だ。

 秋葉原に行ったらなんでも揃うだろ。

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