第52話 告白


 連絡きたので指定された場所に向かうと、そこはダーツバーの様な所だった。

 そこには明智さん以外にも何人かいて、既に俺達を待ち構えていた。


 「ほーん? 『風神雷神』以外のギルドにスパイを送り込んでたんだ?」


 「みたいだね〜。あの老害さんは裏でコソコソするのが得意なんじゃないかな〜」


 その割に通用しないと分かっても暗殺を繰り返してくるけど。


 「わざわざお越し頂きありがとうございます」


 「いえいえ。大体の察しもついてますし」


 明智さんや他のメンツはガチガチに固まっている。俺は敢えて威圧感丸出しで来てるからな。

 でもこのままじゃ他のお客さんに迷惑か。


 「すみません。お金は払いますんで貸切にさせてもらっていいですか?」


 バーのマスターにお願いして、他の皆さんにはご退場願う。これで万が一荒事になっても、被害はお店だけで済むだろう。



 「さてと。それじゃお話を伺いましょうか」


 俺は椅子に座って足を組む。果たして怖い人ムーブは出来てるだろうか。

 桜は笑いを堪えてそうな雰囲気だけど。台無しになるからやめてください。





 「なるほどねぇ。大体桜の予想通りか」


 「あたしの慧眼っぷりが怖いよ〜」


 話をする事15分。粗方聞き終えた所でため息を吐く。俺の予想以上に老害は馬鹿だ。


 「成功する訳ないだろ。どこまで自分の世界しか見えてないんだ」


 「でもでも〜上位ギルドのほとんどに工作員を送り込んでるのには驚いたね〜」


 老害は手駒を各ギルドに送り込んで情報を吸い出してるらしい。まぁ、企業の産業スパイみたいなもんか。裏工作は得意みたいだな。

 で、今回は暗殺の指令が出されたと。


 「でも今回の件が露見すれば、一気に失墜するよな。なんか証拠的なのは無いんですか?」


 「月に一回。松永の手の者と会って、情報を伝えています。お金もその時に貰いますね」


 お金って。そりゃ確かに欲しいけどさぁ。

 曲がりなりにも上位ギルドに所属してて、お金に困る事とかあるのかね。俺みたいに自家用ジェットでも欲しいのか?


 「書面とかそういうのは一切無し? 徹底してますね」


 「今、告発しても尻尾切りになるだけかと」


 まぁ、老害自体は犯罪をした訳じゃないからなぁ。いや、暗殺者を送ってきてる時点で犯罪か。

 証拠が無いんだけど。下っ端を切り捨てて終了だもんね。


 「あー権力って面倒だなー」


 「もうサクッとやっちゃう〜? それが一番楽だよ〜」


 証拠さえ残さなかったらそれでも良いよなー。

 疑われるのは俺だろうけど、証拠が無けりゃ大丈夫だもんね。やってる事は老害と同じか。


 「出来ればもっと苦しませてやりたいんだよな。でもここまで面倒だと終わらせたくなるのも事実」


 「あの時だんちょ〜が警察に任せるって言っちゃったからだよ〜」


 だってあの時は老害の犯行だと思ってなかったし。ここまで長引くとは思ってなかったんだよ。


 「あの…それで俺達はどうすれば…?」


 あ、忘れてた忘れてた。どうしようね。

 傲慢ルシファー で記憶飛ばして、工作員を辞めさせる? 二重スパイにしようにも、老害と会えないんじゃ意味ないしね。


 いや、別に傲慢ルシファー 使わなくてもいいか。普通に工作員を辞めてもらおう。

 続けたいなら好きにしたら感じで。その時はどうなるか保証は出来ないけど。


 「わ、わかりました」


 そんな感じの事を伝えると皆さんは快く了承してくれた。顔を引き攣らせていたけど、きっと気のせいだろう。


 「老害サイドが工作員の存在をバラしたらどうするのさ〜」


 「証拠が無いじゃん。俺達もそれで難儀してるんだし。知らない一択で良いでしょ。それで喚き散らかすなら逆に叩いてやればいい」


 あ、明智さん達には他の工作員の離脱に協力してもらおう。とりあえず探索者関係から力を削いでいかないとね。





 「あー疲れた。とりあえずこれで今回は大丈夫だな」


 「そろそろ真面目に対策考えないと面倒だよ〜」


 そうだな。好き勝手させすぎ感はある。少しずつやっていこうと思ったけど、予想以上に老害の手は広い。ただのモブキャラだと思ってたのに、中々どうしてめんどくさい。


 「玩具にしておくのにも限度があるよね。煽りたおして暴走してくれないもんか」


 「SNSでレスバするだけじゃね〜。やっぱり直接会うのが一番なんじゃないかな〜」


 えー。実際目にしたら手が出ちゃうかもだよ?

 ここまで我慢させられて、俺もそろそろ限界だしさ。


 「まっ、とりあえずは明日の攻略をしっかり終わらせよう。老害はそれからだ」


 「あたしは面接予定者をもう一回見直さないとね〜。工作員が送り込まれてくるかもだし〜」


 あーそれもあったか。とことんめんどくさいな。

 人に嫌がらせをする天才かよ。


 「俺のアイテムボックスに入ってる魔道具を使うか。真実の鏡って言うんだけど」


 嘘を吐いたら分かるってやつね。異世界のダンジョンで手に入れました。あんまり使う機会は無かったけど、今回の場合はうってつけだろう。


 「上手い事聞き出さないとダメだけど無いよりはマシだろ」


 はいかいいえで答えれる質問集的なのを用意しておくか。

 あなたはスパイですかの質問で終わりそうだけど。


 「じゃあありがたく借りようかな〜。応募者が多すぎて選抜するのが大変なんだよね〜」


 「どうやって弾いたりしてるの?」


 「んふふ〜」


 また誤魔化された。マジでそろそろ気になってきましたよ? どんな不思議パワーを使ってるのやら。


 そして翌日。


 「やっぱり老害殺そう」

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