第49話 上位ギルドの実力


 「出てこいや、アスカロン」


 『暁の明星』の戦いが終わり、次に戦うのは『リア獣撲滅』の面々。


 柴田さんが能力を使うと、手に顕現されたのは聖剣アスカロン。

 逸話では竜殺しの剣とか言われてるけど、果たしてどうなのか。


 「とても聖剣には見えない見た目だけど」


 「真っ黒だよね〜。柴田さんも勇者って感じじゃないし〜」


 「聞こえとるで!!」


 真っ黒な大剣を手にオークに立ち向かうのを、後方から桜と見て感想を言ってたんだけど、ばっちり聞こえてたらしい。

 能力自体はカッコいいんだけどね。なんか柴田さんが持つと、こう、なんて言うか映えない。


 今回もオークの上位種が4体。

 『暁の明星』は俺が指導したお陰ですんなり勝てたけど、どうなるかね。


 「どっせい!」


 「グルォオオ!!」


 「あー。なるほど。典型的な武器に頼り切りなタイプじゃん」


 戦況はよろしくない。柴田さんがメインアタッカーらしく、他が抑えてる間に仕留めていくスタイルなんだろうけど。

 剣術がおざなりすぎる。せっかく良い能力もらってるのにさ。適当に大剣をぶん回してるだけだもん。


 「3級とか4級の向こうで言うDランクレベルの魔物ならそれでなんとかなるけどさ」


 「押されてるね〜」


 異世界ではC級になったら一人前と言われるだけあって、DとCではちょっとした壁がある。

 魔物も上位種が増えてくるし、肉体性能も上がってるんだよね。


 「桜」


 「ういうい〜」


 このまま放っておけばすぐに全滅してしまうと思い、桜に介入させる。

 自力で2体は倒せてたけど、まだモブ相手に苦戦してるようじゃ、先が思いやられるな。


 「そ〜れ〜」


 気の抜ける声と共に放たれた糸は、的確に残りのオークの首を捉えて刎ねる。

 桜も一緒に訓練したからか熟練度が上がってるな。


 「根本的な訓練不足です」


 「面目ないわぁ」


 戦闘が終わってすぐにダメ出しする。

 このままじゃあ、3級止まりですよ。アスカロンなんて大層な剣を持ってるんだから、剣術がそれなりに出来るようになると一気に伸びる筈。

 是非ブートキャンプに参加してほしい。


 「次はー!」


 「私達だよー!」


 一通りダメ出しが終わると、次は『風神雷神』

 双子姉妹や他のギルドメンバーはやる気満々といった様子だけどこのギルドは正直、やる前から結果は見えている。


 「それそれー!」


 「とんでけー!」


 ほとんどのギルドメンバーが魔法使いという、異色のギルド。

 瞬間火力は今回集まったギルドの中では随一だろう。しかしだね。


 「うにゃー」


 「もうだめー」


 継戦能力に欠けるんだよ。弱い魔物相手なら、手加減して最奥まで目指せるんだろうけど、同格以上が出て来ると魔力が足りない。

 これは対処法が分かりやすくていいね。


 「魔力量を増やすのは勿論だけど、魔力操作に無駄がありすぎる。学校で基礎とか習わないの? まずはそこから練習しないとね」


 「「はーい」」


 後、前衛。何人かタンクを入れるべきだ。

 女性が多いギルドだからなのか、前衛メンバーが少なすぎる。魔法使いは基本的に後衛なんだから、盾になってくれる人がいないとね。

 尚、俺は例外とする。



 「ようやく私達の出番だね。そろそろ我慢が出来なくなってきてたから助かるよ」


 次は『夜明けの時間』。

 どでかいガトリングを持った、イケオジジェントルマンだったんだけど。


 「やばいよ。目が完璧にキマっちゃってるじゃん」


 「別人みたいだね〜」


 目がクスリを使ったみたいにギンギンになっていて、昨日見た人とは別人を疑うレベルだ。

 能力のせいで性格まで変わったりしてるんだろうか。そういう能力もあるしね。

 俺の憑依だって、天使や悪魔に左右されるし。



 「うひゃひゃひゃ! そらそらぁ! 好きなだけ喰らえぇ!」


 「ほんまにイカれとるな、あいつは」


 柴田さんは吉岡さんの性格の変貌を知っていたらしく普通にしていたが、他の面々はちょっと引いている。

 事前に聞かされてた俺もちょっと引き気味だ。


 「ギャップが凄い」


 「普段は温厚なおっさんなんやけどな」


 言ったら悪いけど、柴田さんみたいな人がこうなら、そんなに驚かなかっただろう。

 イケオジが狂ってるからなんか引いちゃうんだ。


 「でも倒し切りましたね」


 「赤字やろ、あれ」


 吉岡さんの一方的な銃撃でオークを蜂の巣にして終了。しかし、それにかかった費用はやばい。


 「ははっ。張り切りすぎちゃったな」


 「今更イケオジに戻られてもちょっと…」


 この人を指導するにはどうしたら良いんだろうか。確かに倒せはしたけど、赤字になってたら意味がない。とりあえず無意味な乱射はやめてもらわないと。


 そして最後は『協会』。

 こちらは特に言う事はない。

 基本に忠実。基礎もしっかり鍛えられていて、『暁の明星』より時間はかかっていたけど、危なげなく討伐出来ていた。


 「特に俺が指導しなくても、このまま成長出来れば2級はすんなり攻略出来るんじゃないですかね」


 「そう言って頂けると嬉しいですね」


 まぁ、早く成長したいならブートキャンプへの参加を勧めるけど。

 強制的に爆発的に成長出来る事を約束します。


 「じゃあ、この調子で俺がさっき言った事を踏まえて何回か戦っていきましょうか」


 今日中の攻略は無理そうだな。

 まぁ、急いでる訳じゃないし、この攻略で少しでも成長出来るなら時間をかけても良いだろう。

 他のギルドが居るお陰で良い刺激になってるみたいだしね。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る