第40話 調査結果


 「やりやがったなとしか言えねぇ」


 「いつか手を出してくるとは思ってたけどね〜」


 署で詳しい話を聞き終えて、カフェで昼食を食べている。

 桜は相変わらず牛丼を推してきたが、ちょっと込み入った話をする事もあって、隠れ家的なカフェにやってきたのだ。


 この場所は、ゲーセン通いしてる時に偶々見つけたところだが、落ち着いた雰囲気で、マスターの人も俺が有名人だと知っても干渉してこない。


 本当に密談する時はもっと場所を選ばないといけないが、あんまり聞かれたくない程度ならここでも充分なのだ。

 俺と桜はオムライスを食べながら話を続ける。


 「あのくそ老害がよー。行動に出るのが早すぎんだよ」


 「だんちょ〜の予想ではもっと後に手を出してくるはずだったのにね〜」


 「大御所なんて呼ばれてんだから、もっとデンと構えてろよ。堪え性がなさすぎだろ」


 そう。暗殺者を差し向けてきたのは、あの俺の玩具の老害だった。

 一時期はSNSでの活動すらしてなかったが、ここ最近またアンチ共を煽ってネガキャンしている。


 「でも証拠が無いんだよな。証言だけじゃ不十分らしい」


 「物的証拠を残してないあたり〜やり慣れてる感があるよね〜」


 警察さんはあれから闇ギルドの支部を一つ一つ潰して情報を洗っていったらしい。

 そして、何個目かの支部でとうとう幹部を捕まえた。そこで、老害から依頼を受けたと吐いたらしいんだけど、証拠がない。


 「別に捕まえなくてもいいけどな。今、捕まった所でドン底って訳じゃないし。もっと堕ちる所まで堕ちてもらわないと」


 「警察の人達は最優先事項として扱ってくれてるみたいだけどね〜」


 言ったらあれだけど、次元の狭間が出来てからというもの、暗殺騒ぎはそこまで珍しい事ではない。

 暴力が身近になった弊害だな。

 法整備が整ってない黎明期は暗殺の見本市が出来たくらいだ。

 今は昔程ではないが、能力を巧妙に使っての暗殺は後を絶たない。

 それにしては俺に差し向けられた暗殺者はお粗末だったが。

 桜の方が立派な暗殺者になれるぞ。


 「このまま証拠を探し続けてくれるらしいけど、見つからないだろうなぁ」


 「コネとかもあるだろうしね〜。簡単に尻尾を出してくれないかも〜?」


 今回も尻尾切りが出来るように、直接は依頼してないみたいだからな。老害の側近らしき人間に頼まれたってだけだから。

 俺とか、話をした警察の人や協会の人は老害の犯行って決めつけてるけど。


 「異世界だったら殺して終わりだったんだけどな。ここまで情報化社会が広がってると迂闊に行動出来ない。大御所って言われるぐらいには影響力のある人間だしな」


 「それでどうするの〜?」


 うーん、どうしようかね。

 こういう頭脳労働は得意じゃないんだけど。


 「とりあえずは影響力を削いでいくか」


 俺はそう言って、桜に老害のSNSを開いてもらう。自分のスマホにもアプリは入ってるんだが、未だにちょっと使い方がね…。

 まさか自分が機械音痴気味だとは思ってなかったぜ。普通に使う分には問題ないから、現状困ってないんだけど。


 「ふむふむ。好き勝手書いてくれちゃって」


 「ここまで批判的な事をつらつらと言えるなんてある意味才能だよね〜」


 恐れるものは何もないとばかりに罵詈雑言の嵐が書き連ねられていた。

 俺のファンっぽい人達も反抗したりしてくれてるが、お構い無しにポストを続けている。


 「よし。じゃあとりあえずこう書いてくれ」


 「ういうい〜」


 『そこまで信用出来ないなら、一緒に次元の狭間の攻略に行きませんか? 勿論、お年を召してらっしゃるので、全盛期程のお力は出せないでしょう。こちらで車椅子でも用意して守って差し上げます。あなたはただ座ってるだけで良いんです』


 「こんな感じ〜?」


 「うむうむ。悪くない」


 まぁ、一緒に入る事はないだろうけど。

 色々理由をつけて、拒否するに決まってる。


 「拒否される為に書いたとも言えるけど」


 「性格悪〜い」


 ニヤニヤしながら言われましても。

 楽しそうにしてるのがバレバレですよ。


 「拒否されたら、非戦闘員の大村さんでも入ったのにビビったとか煽ってやれば良い。逃げ腰チキンの大御所さんだな」


 「でもでも〜。こんなんで影響力を削ぐって言えるの〜?」


 まぁ、この程度じゃ微々たるもんでしょう。

 少しは揺らぐだろうけど、あいつの持ってる権力を揺るがすにはまだまだ足りない。


 「『暁の明星』への指導が終わったらお友達でも作りに行くか。老害と仲が良い政治家やら権力者を調べておいてくれ」


 「あ〜。なるほどね〜。了解だよ〜」


 桜は俺のやろうとしてる事が分かったのか、より一層悪い笑みを浮かべて、スマホをポチポチし始めた。


 権力には権力で対抗する。

 あいつの支持基盤を掻っ攫ってやろう。

 今の俺なら老害よりも美味しい飴を提供出来るだろうし。


 「それ以外の権力者とも仲良くなっておくかな。ズブズブになり過ぎるのも問題だけど」


 「政治は関わりすぎると面倒だしね〜」


 程良い距離感のお付き合いをしたい。

 出来ればこっちが上の立場で。あまりにも面倒になったら暴力で解決するけど。


 さーて。老害さんはどこまで足掻けるかな。

 出来れば長持ちしてほしいもんだ。

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