第21話 博多へ


 「博多到着ー」


 「大阪から新幹線で2時間半ぐらいで来れるんだね〜。もっと時間が掛かると思ってたよ〜」


 大阪観光を終えて、東京に戻らずにそのまま博多にやってきた。

 新幹線の中で京都に寄ってない事を思い出したな。まぁ、いつか行けばいいだろ。この博多を攻略したら当分遊び散らかす予定だし。


 「そして野次馬と。凄いな。駅で出待ちとかガチ勢かよ」


 「SNSで大阪から博多に直行〜って告知したからだろうね〜」


 着実に人気者になっている。良きかな。

 この調子で愛想良くファンを獲得して味方を獲得していきたい。


 適当に愛想笑いしながら手を振りつつ、歩いて辺りを散策する。

 今日は着いたばっかりだし、狭間の下見をして泊まる所を探すかな。

 この行き当たりばったりの旅行感。

 嫌いじゃないね。


 「あ〜今日の夜に神戸の動画がアップされるみたいだよ〜」


 「そういえば連絡があったな」


 大阪観光を楽しみ過ぎて、動画の事をすっかり忘れてた。思ったよりも時間かかったな。

 毎日毎日動画まだですかの催促が凄かったんだよ。大村さん死んでなければ良いけど。


 「博多駅から歩いて行ける距離に1級の狭間があるってやばいよな。邪魔だし、崩壊したら終わりだろ」


 「そのせいか〜最近までは博多の土地がめっちゃ安くなってたんだよ〜。だんちょ〜が攻略してからまた値が上がったらしいけど〜」


 強かですなぁ。そういう事を生業にしてる人は敏感なんだろう。多分、俺が初めて1級攻略した後すぐにこの辺の土地を買い占めたりしたんじゃない?

 先行投資ってやつ? しらんけど。


 「んんん? なんだこの狭間。でかいな。魔力もなんか感じが違うし」


 「1級より上って事〜?」


 「それは分からん。どういう基準で等級決めてるのか知らないし。感覚的にはギリギリ1級の範疇って感じなんだけど」


 異世界基準でB級最上位ってとこかな。

 どんな魔物が出て来るか大体予想出来るかも?


 「ワイバーンか、巨人種か。あ、ステージによっては違うから分からないかも」


 「ちょこっと中覗いてみる〜?」


 「いや、いいや。S級が出てこようが勝てるし」


 「きゃ〜かっこいい〜」


 本当にそう思うならもっと心を込めて言ってくれませんかね? 半笑いで言われても嬉しくありませんよ?


 「なにせ、最低S級以上が出て来る魔の森で暮らしてたからな。俺からしたらちょっと歯応えのあるご飯って感じだ」


 魔王軍幹部級が出てきたら流石に真剣になるけどさ。流石にこっちに出てこないでしょ。

 出てきたら確実に滅ぶし、向こうの世界と繋がってるって話だからさ。

 向こうの厄介なのは全部仕留めたはず。

 新しく生まれてたら知らないが。


 「なんかフラグチックな事考えてな〜い? やめてよね〜」


 「大丈夫、口に出してないからフラグは成立しない」


 「ふ〜ん? この狭間はあたしも戦おうと思ってたけど〜やっぱりやめとこうかな〜」


 「戦えばいいじゃん。桜も自分の限界を知っておくべきだよ。俺が居るから万が一はないんだし」


 撮影もしてやろう。俺だけ全世界に発信されてるのはよろしくない。

 一緒に恥ずかしい思いをしようじゃないか。

 桜の実力を知らない人ばっかりだし。ある程度力を見せておくのは悪い事じゃないんだよね。

 出る杭は叩かれるけど、出過ぎた杭は叩けないってね。


 「う〜ん。入ってから考えるよ〜。私はなんか嫌な予感するし〜」


 「それ以上言うなよ。フラグになる」


 今のもギリギリだぞ? 作品によってはアウトラインだ。面倒はごめんなんだから、楽に攻略させてくれ。


 「よーし、じゃあ泊まる所探すかな。その前に晩飯か?」


 「牛丼にしよ〜よ〜。博多の吉野さんの味を確認しておかないと〜」


 「流石にチェーン店はどこも一緒だろ」


 なんだよ、博多の吉野さんって。

 一緒に決まってるだろ。え? 一緒だよね?



 「美味しかったね〜」


 結局野次馬に吉野さんの場所を聞いて行ってきた。俺からすると一緒だったんだけど、桜さんは満足らしい。


 「今のうちにモツの美味しい所調べておくか。攻略後に気持ち良く食べたい」


 そんなこんな言いながら、今日の泊まる所に到着。まぁ、ラブホなんだけど。

 ラブホって下手な高級ホテルより居心地が良いんだよね。値段はそれ相応に高いけど。


 「あ〜動画が出てるよ〜」


 「吉野さんでみんながスマホ見ながらこっちをチラチラ見てたのはそのせいか」


 もっと接触してくるかと思ってたんだけど、大阪と比べて遥かに歩きやすかった。

 博多は不良だらけって偏見があったんだけど、普通に民度が高くて驚いたね。


 「動画ながっ。あ、最初にインタビューを差し込んでるのか」


 「うわ〜。胡散臭い顔〜」


 ソファに座りながら見てると、桜が膝の上に転がってきて揶揄ってくる。

 民衆受けしそうな顔と言ってくれ。


 「プロの編集って凄いな。いや、大村さんの能力が凄いのかな?」


 「あたし達のギルドに専属撮影員として欲しいぐらいだよ〜」


 「引き抜くか? 協会になんか言われそうだけど」


 なるほど。こういう人材もギルドに居たら広報として役に立つのか。

 やっぱり能力って面白いなぁ。


 「攻略が終わったらスカウトについて本格的に考えるか。事務員とかも能力持ちの方が有能だろうし。その分お金は掛かるだろうが」


 「その前に事務所を改装しないと〜。それが無いと事務員なんて居ても意味ないでしょ〜」


 あ、それもあったか。

 朝倉さんが紹介してくれるらしいから、それ待ちだったんだけど。

 

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