【第三章:仲間(2)】

その日の午前中の授業は算数・国語・音楽・体育であった。


後半の二つは、いつもの教室から移動して授業を受ける科目であったため、田中洋一は、教室を移動するときや体育の授業でドッジボールをしているときなどに、羽加瀬信太が酒見正や一ノ瀬さとしに意地悪をされるのではないかと心配したが、そういった問題は起きなかった。


しかし、給食の時間が終わり、お昼休みの時間がはじまるとすぐに、酒見正と一ノ瀬さとしは教室を出ていき、そのあとで羽加瀬信太も元気のない様子で二人をった。


「ねえ、キョウ君・・・。」

「うん、わかってる。僕らも三人のあとをついていこう。洋一君は彼らがどこに行ったかわかる?」

「たぶん、旧校舎と新校舎をつなぐわた廊下ろうかのあたりだと思うんだよね。」

「渡り廊下って二階かいどうしをつないでいる廊下?」

「うん。あ、でも建物たてものの中じゃなくて、外にいると思う。」

上履うわばきからくつにはきかえて外に出たってこと?」

「あそこら辺って、あんまりみんな行かないんだよね。でも、お昼休みにあの渡り廊下を渡ってるとき、酒見君や一ノ瀬君があの辺りで遊んでいるのを何回か見たことがあるんだ。」

「そうなんだ。」

「それで、ときどき信太君もお昼休みに教室からいなくなることがあるんだけど、この前、戻ってきたときにどこ言ってたの?って聞いたら、『用事ようじがあって渡り廊下のところに・・・』って言ったんだ。だから、『そういえば酒見君とか一ノ瀬君は見た?時々あそこら辺で遊んでるよね?』って軽く聞いたら、急に表情ひょうじょうが暗くなって『み、見てないよ』って返ってきたんだ。なんか、ちょっとおかしいな、と思ったんだけど、今から考えると、信太君はときどき酒見君や一ノ瀬君に呼ばれてあそこに行ってるのかもしれない。」

「新校舎の図書館の漫画を渡したり、とか?」

「そういうこともあったのかも・・・。」

今朝けさもめてたのは、もう漫画をぬすんだりしない、とかって言ったからかな?」

「その可能性が高そう。だから、ちょっと心配しんぱい・・・。」

「たしかに、朝の酒見君や一ノ瀬君の様子を見るといたい目をさせてでも言うことを聞かせようとするかもしれないもんね。じゃあ、ちょっと急いで後を追いかけようか。」


沢木キョウと田中洋一がせきを立とうとしたとき、真中しずえが「ねえ、羽加瀬君のところに行こうとしてるの?彼、あいつらにび出されたんだよね?」と聞いてきた。


「うん、キョウ君とこれから行ってみようと思ってるんだ。ちょっとこわいけどね・・・」と田中洋一が答えると、「カンナ、この二人もやっぱり羽加瀬君の後を追うつもりだって。あなたも一緒に来てくれる?」と、自分の席でランドセルの中をゴソゴソとしていた空木カンナに向かって真中しずえが呼びかけた。


すると空木カンナは視線しせんをランドセルの中に向けたまま「うん、わかった。でも、私このあと少しだけ保健室ほけんしつる用事があるから、みんなで先に行っててくれる?」と答えた。


「じゃあ、先に行ってるね」と真中しずえが言って沢木キョウと田中洋一と一緒に教室を出ようとしたとき、「あ、場所ばしょは?羽加瀬君たちってどこにいるの?」と空木カンナが聞いてきた。


「え?どこだろ・・・?洋一君知ってる?」

「渡り廊下のあたりだと思う。でも、屋内おくないじゃなくて、外にいると思うから、くつきかえてきてね。」

「だって。じゃあカンナ、また後でね。」


***

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