一本専心!

さら坊

プロローグ ~一意専心~

 剣術、刀術。それは本来、日本刀にて行われる命の削り合いである。

 それらは室町時代から現代にかけて、時代に応じて姿形を変えながらも、絶えることなく伝承されてきた。


 "剣道"―――それは現代において最も名の知れた剣術であると同時に、己を磨く武道としての側面も残している。


 礼節や型、呼吸法や足さばき―――所々に戦国の要素を残しながらも、時代に即して一般化されたものが剣道であり、それは今を生きる中高生にとっても非常に身近な存在となっている。

 実際に学生時代から社会人に至るまで、誰しも何らかの形で剣道に触れたことがあるのではなかろうか。


 そして武道というものは往々にして、勝ち負けという概念に囚われている。


 その結果が分かつのが戦国時代ならば生死、現代ならばトーナメントの結果、という違いなだけであって、その在り方自体に大きな差はない。

 

 加えて、剣道の勝敗というものは"瞬きする間の刹那"に詰まっている。

 ほんの僅かな油断や読み違いが、自身の敗北を決定づけてしまうのだ。


 そしてその一瞬は、どれだけ後悔しても帰ってこない。


 ああすればよかった、逆にああしていたら自分が勝っていた―――そんな台詞は、負け犬の遠吠えに過ぎない。


 だからこそ、剣道で勝とうとする者は、その一瞬を極める。


 己の技を磨き、武器を増やし、剣士としての磨きをかける。

 そんな地道な鍛錬の結晶を携えて、彼らは今日もまた自身の勝敗を決する戦場に立つ。

 

 傍から見れば、何ヶ月、何年もの練習がほんの一瞬にしか詰まっていないことに、疑問を持つ者もいるだろう。

 そこに抗えない運やのような不確定性を感じ、やるせない気持ちになる者だっていてもおかしくない。

 

 しかしこれだけは忘れてはならない。

 剣術とは本来そういうものであり、そこに心血を注ぐ者達は常に、その一瞬を制する為に自分を律し、剣を振るい、己の身体を磨いているのだと。 


 そしてこの物語は、そんな剣道という武道に対して本気で向き合った青年達の青春であり、消えることのない勝敗の歴史である。

 

 さあ、一本取っていこう―――!!

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