夢幻星〜最強の相方に恵まれた俺は、神に授けられた力を駆使して世界に蔓延る魔物をサクッと討伐。ヒーローとして崇められることにした〜

@tetora0112

第0章 プロローグ

第0話 伝説の誕生

オギャーオギャー


 特徴的なオレンジの髪色をした赤ん坊は、威勢のいい泣き声と共にこの世に生まれた。


「この子の名は……ムギ。 星崎ほしざきムギよ」


 生まれてきた我が子を両手に抱え、ホッとしたような表情を浮かべる母親は、我が子から机に飾ってある写真へとゆっくりと視線をうつす。


「ギリギリ間に合ったわ……あなたとの子よ……」


 母親はそう呟くと、ゆっくりと目を閉じた。


「姉ちゃん! 姉ちゃん! 気をしっかり! まだ死んじゃだめ! この子の成長を見守らなきゃ」


はいつだって見守っているわ」


 母親は写真に映る男性にそう告げると、ゆっくりと目を閉じる。


「モモエ、この子を……頼むわ……」


 掠れ掠れの声でナギサは妹にそう言うと、ゆっくりと子の頭を撫で、そのまま動かなくなった。



ーーーーーー



 カオンと呼ばれる、周囲を外壁に囲まれた都市に、特徴的なオレンジ色の髪色をした星崎ムギおれは産まれた。


 俺自身この髪色は気に入っている。


 炎のようだからだ。


 なんでも、この都市を統括しているセイメイ様は、唯一炎を司ることができる呪力使い。

 今の文明の発展は炎なくしてあり得ない。

 炎=カオンの歴史。

 つまり、

 俺=カオンの歴史。


 そのように俺の頭の中では変換されている。


 俺がここまで自己肯定感が高い要因はモモエさんだろう。


 モモエさんは母ちゃんの妹で、育ての親だ。

 

 俺が何かをするたびに「まぁ天才!」「一族の誇りよ」と、これでもかと持ち上げられて育てられた。

 おかげで俺は、選ばれし者なのだと信じ切っている。


「大丈夫。 あなたの両親はずっと見守ってくれてるわ」


 これは寝る前にいつも言っている、モモエさんの口癖だ。


 ”亡くなった人は星となって空から見守ってくれる。”というのが、一族の間での言い伝えらしい。


 モモエさんから様々なことを教わってきた。


 ここでは稀に、呪力じゅりょくという特別な力が宿る子供が生まれるということ。

 俺も呪力を宿す1人ということ。

 呪力はこの都市を守るために使うということ。

 なんでも自分1人で解決しようとせず、周りの人の力を頼ること。

 自分の力は誰かのために使ってこそ、意味があること。


 他にも色々あったのだが、口酸っぱく言っていたのは、この5つだった。


 俺が呪力に目覚めたのは12歳の頃。


 そしてすぐに呪力の学校に入学が決定。そんな日の朝、家を出ようとするとモモエさんに呼び止められた。


「姉にこれを渡すよう頼まれてたの。 ほら、1つはムギのものね。 どれがいい?」


 そう言ってモモエさんが手のひらを広げると、そこにはアクセサリーが握られていた。


「え……父ちゃんと母ちゃんから? うーん……俺はこれがいいかな?」


 俺は、指輪、ブレスレット、ピアス、ネックレスのうち、ブレスレットを手に取った。


「そう。 絶対無くしちゃダメだからね! 他の3つは、学校で信用できる人ができたらあげなさい」


「どうして?」


「それは……大人になったら分かるわ。 ほら、似合ってる」


 そう言ってモモエさんは俺の手首にブレスレットをつけた。


「ほら遅刻しちゃう。 行ってらっしゃい」


「うん。 いってきまーす」


 よく分からないけど、背中を押されて学校へと走る。


 12歳の俺にはまだ少し大きいブレスレットが、腕を振るたびに揺れる。


 手首から抜けそうで気が散るな。


 立ち止まり、ブレスレットを手首から外して太陽に透かしてみた。


 綺麗だ。顔も知らない両親からの贈り物か……宝物にしよう


 ポケットにブレスレットをしまうと、4つのアクセサリーを手に、学校へと向かった。

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