3
「これ、松野さんの差し入れ?」はちは言う。
「そうですよ。えらいでしょ?」
にっこりと笑って菘は言う。
園芸部の部室の中には二人のほかに誰も人がいない。今のところ、園芸部の部室の中にやってくる気配はほとんどなかった。
「? どうかしたの?」
はちは言う。
見ると、目の前にいる菘は、なんだか落ち着かない様子で、はちを見たり、部室の中のいろんなところに目をやりながら、なんだかとても、『そわそわ』していた。
園芸部の部室の中はしんと静まり返っている。
いつもなら、ずっと話をしている菘が、今日はあまり話をしないせいだった。
はちはもう一つ、木の実のようなチョコレートを食べながら、自分の目の前にいる松野菘のことを見ている。
今日の菘はいつもの菘とはどこか少し違って見える。
「先輩。あの、実は先輩に話があるんです」
久しぶりに口を開いて菘は言った。
「話ってなに?はちは言う。
「はい。あの実は……」そう言ってから菘は、(いつもの元気でおしゃべりな菘らしくなく)顔を赤く染めて、もごもごと口ごもった。
(はちはもぐもぐとチョコレートを食べながら、そんな菘のことを変だな? と思いながら、じっと見ていた)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます