第46話

アガルタ王都ダンジョンの第4層を攻略したヨウイチたちは町へと戻り、報告の為にギルドへ向かった。

「すいません、ダンジョンの攻略の報告をしたいんですけど・・・」

「はい、ではギルドカードと成果物の提出をお願いします」

受付嬢にギルドカードとドロップアイテム、マップを提出した。

「はい、確認しました。では、ダンジョン攻略の成果報酬をお渡ししますので少々お待ちください」

受付嬢は奥の部屋へ行き、しばらくすると戻ってきた。

「こちらが今回の報酬になります。どうぞお受け取り下さい」

ヨウイチたちは報酬を受け取った。

(さて、これでダンジョン攻略も終わったな・・・)

ヨウイチがそう思っていると、サヤカが話しかけてきた。

「ねぇ、ヨウイチ君。この後どうするの?」

「そうだな・・・とりあえず今日は家に戻ってゆっくりしたいかな。ちょっとステータスで気になることもあるし。」

「じゃあ、明日一緒に買い物に行かない?」

(ん?サヤカは何か買いたいものがあるのか?)

「別にいいけど、何を買いに行くんだ?」

「えっとね・・・」

サヤカが何かを言おうとした瞬間、別の冒険者の男が話しかけてきた。

「よう!兄ちゃん!ダンジョン攻略おめでとう!」

「あ、ありがとうございます」

(誰だ?この人・・・)

ヨウイチが戸惑っていると、サヤカがその男に話しかけた。

「お久しぶりですね、ダストンさん」

「ん?あぁ、サヤカちゃんか!久しぶりだな!」

(え!?知り合いなのか!?)

ヨウイチが驚いていると、男は自己紹介を始めた。

「俺はダストン。Dランクの冒険者だ!よろしくな!」

(あ、あぁ・・・よろしく)

「俺はヨウイチです。よろしくお願いします。」

「あぁ、よろしく!以前、サヤカちゃんたちが依頼で困っていた時に助けたことがあったんだ。」

ダストンが挨拶を終えると、サヤカがヨウイチに話しかけてきた。

「ねぇ、ヨウイチ君。この後買い物に行かない?」

(ん?買い物・・・?)

「別にいいけど、何を買いに行くんだ?」

「えっとね・・・」

(あ!もしかしてステータスのことか!?)

そう思ったヨウイチだったが、サヤカの口から出た言葉は意外なものだった。

「ヨウイチ君の装備を買いに行かない?」

(え?俺の装備?)

「いや、俺はこの格好で十分だぞ?これはガザルさんが選んでくれた防具だからね、信頼しているんだよ。」

「何っ!?ガザルさんに気に入られたのか!!羨ましいなぁ・・・」

ダストンが羨ましそうにヨウイチを見ている。

(え?そんなにガザルさんって有名なの?)

「でも、俺は今はこの防具で満足しているし、別に買い換える必要はないよ。」

「うーん、でもヨウイチ君。その防具って結構ボロボロだよね?買い換えた方がいいんじゃない?」

確かにダストンの言う通り、ヨウイチの防具はロックゴーレム攻撃で所々に傷があり、汚れも目立つ。

(まぁ、確かに修理か新しい防具を買おうかと思っていたけど・・・)

「よし!じゃあ決まりだね!」

サヤカが嬉しそうにしている。

(まぁいいか。せっかくだし買いにいくか。)

「分かったよ、じゃあ行こうか」

ヨウイチたちはガザルさんのお店へと向かった。

「こんにちはー!」

サヤカが元気よく挨拶すると、奥からガザルさんが出てきた。

「おぉ!ヨウイチじゃないか!それで今日はどうしたんだ?」

ガザルさんが不思議そうに聞いてくる。

すると、サヤカが口を開いた。

「今日はヨウイチ君の防具を買いに来たんです。」

ガザルさんは少し驚いた表情をしたが、すぐに笑顔になった。

「なるほどな!確かにヨウイチは防具がボロボロだな!どうしたんだ?」

(え?そんなに酷いのか?)

ヨウイチは自分の防具を確認した。

(うーん・・・確かにボロボロだな・・・)

「実は、ロックゴーレムと戦闘になって、殴られてしまったんですよ。」

「よし!分かった!じゃあちょっと待ってろ!」

そう言うと、ガザルさんはお店の奥へと入っていった。

「ガザルさん、張り切ってたね」

サヤカが小声で話しかけてきた。

(そうだな・・・)

ヨウイチも小声で返すと、サヤカは続けて話し始めた。

「でも、ガザルさんって本当にいい人だよね!私たちみたいな新人冒険者にも優しくしてくれるし!」

確かにその通りだなと思ったヨウイチだったが、それと同時に少し疑問に思ったことがあったので、サヤカに聞いてみた。

「なぁ、サヤカ。ガザルさんってそんなに有名だったのか?」

ヨウイチがそう聞くと、サヤカは少し驚いた表情をした。

「え?もしかしてヨウイチ君知らなかったの!?」

(ん?どういうことだ?)

「実はね・・・」

サヤカが説明を始めた。

「ガザルさんって、実は元Aランク冒険者だったんだよ」

(え!?そうなのか?)

ヨウイチは驚きのあまり、言葉が出なかった。

(まさかガザルさんがそんなに凄い人だったなんて・・・)

「でも、今は引退してこのお店を開いているんだけどね」

確かによく考えてみれば、これだけの防具を作れる人が引退したのは少し勿体ない気もするなとヨウイチは思った。

「お待たせ!これがヨウイチの防具だ!」

ガザルさんが奥から戻ってきた。手には1着の防具を持っている。

(おぉ、あれが俺の新しい防具か・・・)

ヨウイチは期待に胸を膨らませながら、ガザルさんの持ってきた防具を確認した。

その防具は黒を基調とした服で、所々に金属のプレートが取り付けられており、防御力も高そうだ。

「どうだ?気に入ったか?」

ガザルさんがヨウイチに聞いてきた。

「はい!ありがとうございます!」

ヨウイチはお礼を言うと、早速その防具を装備した。

(おぉ・・・これは凄いな)

その防具は見た目以上に軽くて動きやすかった。しかも、防御力もかなり高いようだ。

(これならロックゴーレムの攻撃にも耐えられそうだな。)

「ガザルさん、ありがとうございます。気に入りました!」

ヨウイチがそう言うと、ガザルさんは嬉しそうに笑った。

「そうか!それは良かった!」

(さてと・・・そろそろ帰るか)

「じゃあ、俺たちはこれで失礼しますね。これおいくらでしょうか。」

ヨウイチはガザルさんに代金を尋ねた。

「ん?金なんていらねぇよ!」

(え!?)

「いや、でも流石にタダという訳には・・・」

ヨウイチがそう言うと、ガザルさんは笑いながら答えた。

「いいんだよ、これは俺からの餞別だ!それにお前みたいな将来有望な冒険者に使ってもらった方がその防具も喜ぶだろうからな!」

(ガザルさん・・・)

ヨウイチは感動していた。

「ありがとうございます!大事に使わせてもらいますね!」

ヨウイチがそう言うと、サヤカもお礼を言った。

「ガザルさん、ありがとうございます!」

こうして2人は防具を手に入れたのだった。


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