第6話

ギルドに到着し、受付嬢のメイさんに依頼の報告をした。

「ヨウイチさん、どうされたんですか?帰りが早いようにみえますが・・・」

メイさんが不思議そうに聞いてきた。

「実はオークの調査で森に行ったんですが、森の浅い所でオークと遭遇してしまって、森の奥まで行けなかったんです・・・」

(まぁ、普通は驚くよな・・・)

「それは大変でしたね・・・しかし、森の浅い所で遭遇したのですか・・・」

メイさんが心配そうな表情で言った。

「はい・・・でも、こちらのリンさんが助けてくれたのでなんとかなりました!」

(本当にこの人には感謝だな・・・)

すると、リンさんが笑顔で言った。

「ふふっ!私は何もしてないわよ!」

(え?そうなの??)

そんなやり取りをしていると、メイさんが笑顔で言った。

「では、こちらが依頼の報酬になります!」

(おぉ!達成できないかと思ったけど、良かった!大銀貨4枚だ!!)

「ありがとうございます!!」

俺が喜んでいる横でリンさんが受付嬢のメイさんに話しかけた。

「ねぇ?ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」

(ん?なんだろ??」

「はい、なんでしょうか?」

「浅いところにオークがいるのはおかしいんじゃないかしら?」

(ん?どういうことだ??)

「そうですね・・・実はこの森の奥にはオークの集落があるという情報がありまして・・・」

(え!?そうなの??)

「なるほどね・・・だから浅いところにオークがいたのね!でもそうすると、集落にはかなりの数がいる可能性があるわね・・・」

「ええ、そうなんですよ。なので、先ほどの情報を上に伝えて、上位ランクの冒険者を集めて集落を潰す事になりそうです。」

(なるほど!上位ランクの冒険者で集落を潰すのか!!)

感心していると、リンさんが心配そうに言った。

「でも、大丈夫なのかしら?上位ランクの冒険者って忙しいでしょう?」

(確かに・・・そんな人数いないよな・・・)

そんなことを考えていると、メイさんが微笑みながら答えた。

「ふふっ!確かにそうなんですが、ギルドマスターが何とかすると言っていましたよ!」

「ふーん・・・ギルドマスターがねぇ・・・それなら安心ね。もし決まったら私にも教えてちょうだい!」

「わかりました!Aランクのリン様にご協力いただけるのは大変助かります!」

俺は2人の会話を黙って聞いていた。

(え?リンさんってAランクなの??Aランク冒険者なんて初めて見た・・・)

「じゃあ、私はそろそろ帰るわね!」

「わかりました!またのお越しをお待ちしております!!」

「じゃあ、ヨウイチもあまり無茶しないようにね!また会いましょう!」

リンさんは笑顔でそう言って去っていった。

(なんか、すごくいい人だったな・・・)

そんなことを考えていると、メイさんが話しかけてきた。

「ヨウイチさん!依頼の報告は終わりましたが他に何かありますか?」

「いや、特にないかな・・・」

(なんか今日は疲れたし帰るか・・・)

「そうですか!では、またのお越しをお待ちしております!」

俺はギルドを出て、宿に帰った。

(今日は疲れたし、明日はゆっくりするか・・・)

家に着いた後、すぐにベッドに横になった。

(今日は色々あったな・・・でも、リンさんのおかげで助かったな・・・)

そんなことを思いながら眠りについた。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


翌朝、目が覚めると外は雨が降っていた。

(うわぁ・・・雨か・・・)

窓の外を見て、憂鬱な気分になった。

(今日は出かけるのはやめようかな・・・)

そんなことを考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。

(ん?誰だ?こんな朝早くに・・・)

ドアを開けると、そこには宿屋の主人が立っていた。

「おはよう、ヨウイチさん!」

「あ、おはようございます!!」

(どうしたんだろ?何かあったのかな??)

そんなことを思っていると、主人が笑顔で言った。

「お前さんにお客さんだぞ!」

(客?)

不思議に思い、下に降りていくと聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「ヨウイチ、おはよう!!」

(ん?この声は・・・)

振り返ると、そこにはリンさんがいた。

(え?なんでリンさんがここに??)

「じゃあ、俺は仕事に戻るからあとは2人で仲良くな!」

(え?ちょっと待って!!どういうこと!?)

驚いている俺を無視して、主人は仕事に戻っていった。

(えぇ・・・なんか気まずいんだが・・・)

「ヨウイチは今日何か予定あるのかしら?」

「いえ、特にないですけど・・・」

(なんだろう?)

「じゃあ、私と一緒に出かけましょう!!」

「え?どこにですか??」

(まさかデートとかじゃないよね!?)

そんなことを考えていると、リンさんが笑顔で言った。

「実は私、この町に来たばかりでまだ知らないことが多いの!雨だけど、教えてちょうだい!」

(あ、デートじゃないのね・・・)

「でも、俺なんかと出かけても楽しくないと思いますよ?」

(こんな美人な人と一緒なんて恐れ多い・・・)

「ふふっ!そんなことないわよ!」

(うーん・・・まぁ、いいか!せっかくの機会だし楽しませてもらおう!!)

「わかりました!じゃあ、行きましょうか!!」

そう答えると、リンさんは嬉しそうに言った。

「ありがとう!」

こうして、俺はリンさんと一緒に出かけることになった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「じゃあ、行きましょう!」

(なんか緊張するな・・・)

「ヨウイチはどこか行きたい場所とかあるかしら?」

少し考えてから答えた。

「うーん・・・特にないですね・・・」

(どこに行けばいいんだろう??)

「じゃあ、とりあえず市場に行ってみましょう!」

(なるほど!確かに何か売っているかもしれないな!)

「はい、行きましょう!!」

2人で市場に向かって歩いていった。

(うぉー!!雨だけど、すごい賑わってるな!!)

市場にはたくさんの人がいた。

(ん?あそこに武器が置いてある。おぉ!かっこいいな!!)

武器を見ていると、リンさんが話しかけてきた。

「ヨウイチは武器とかに興味あるの?」

「あ、はいっ!ちょっと気になって・・・短剣だとオークを倒せなかったので、どうしようかと。」

「確かに、短剣だとオークを倒すのは難しいわね・・・」

(やっぱりそうだよな・・・)

俺が少し落ち込んでいると、リンさんが笑顔で言った。

「じゃあ、スティレットなんかどう?短剣の部類にはなるのだけど、刃が長いのが特徴ね!」

(スティレットか・・・かっこいいな!!)

「なるほど!じゃあ、それを買います!」

「ふふっ!ヨウイチは正直ね!!」

「知り合いの武器屋が近くにあるのですが、寄っていいですか?」

「いいわよ!」

リンさんと喋りながら、ガゼルさんのお店に案内した。

「ここが、ガゼルさんのお店です!」

「あらっ!こんな所に武器屋があるのね!!」

(やっぱり、リンさんも知らなかったんだな・・・)

そんなことを思いながら店に入った。

「いらっしゃいませ!」

2人で店内に入ると、ガゼルさんが笑顔で出迎えてくれた。

「おぉ!ヨウイチじゃないか!!今日はどうしたんだ?えらい別嬪さんと一緒じゃないか!」

「実は、短剣でオークが倒せなくてですね・・・スティレットってありますか?」

ガゼルさんが笑顔で言った。

「もちろん、あるぞ!ちょっと待ってな!」

ガゼルさんが奥からスティレットを持ってきてくれた。

(おぉ!かっこいい!!鑑定!)


----------------------------------

【名前】鉄のスティレット 【レア度】D+ 【状態】良好

【説明】刃先の長い短剣。ショートソードと短剣の中間の長さ。

----------------------------------


感動していると、リンさんが話しかけてきた。

「へぇ、いい剣ね・・・」

「はい!これにします!!」

「毎度あり!!大銀貨3枚だ!」

(え?高くない??)

「じゃあ、私が払うわね!」

(えぇ!?申し訳ないな・・・)

そんなことを思っていると、リンさんが耳元で囁いた。

(ふふっ!こういう時は女性に払わせるものよ!)

(え?そうなの??)

不思議そうにしていると、リンさんが笑顔で言った。

「じゃあ、行きましょうか!」

(うーん・・・よくわからないけど、払わせてしまったな・・・)

そんなことを考えていると、ガゼルさんが話しかけてきた。

「また来てくれよ!!」

「はい!ありがとうございます!!」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る