第11話 そんな大袈裟な
イジメの首謀者の一人である『
「いってぇ~いきなり何すんだよ!」
「何するだと! お前、人一人殺しといて何涼しい顔してんだ!」
「な、なんのことだよ……」
隆一はさっき起きたばかりの池内の飛び降りのことを言っているのだろうとすぐに思い付いたが、問題は何故目の前の父親がそれを知っており、隆一を『人殺し』と罵るのかということだろう。
「惚けるな!」
「だから、なんのことだよ!」
「まだ、惚けるか。なら、これを見ろ! これでもまだ惚けるのなら、俺はお前を殺して警察に行く」
「親父……」
隆一の態度に鼻息も荒くまだ怒りが収まらない様子の父親が隆一に対し、スマホの画面を見せると、そこには隆一が屋上にいる少年に対し「飛べ!」と囃し立てている映像だった。
「マジか……ウソだろ」
「まだ、嘘だと言うのか!」
『ボグッ』
「痛ッ」
「痛いか、でもお前はそれ以上のことを仕出かしたんだ。俺の言っていることが分かるな!」
「分かんねえよ!」
「まだ言うか!」
父親の言葉に反抗する隆一の態度に父親は更に殴るが、隆一の反抗的な目付きはジッと父親を見据える。
「分かった。お前がそういう態度ならもういい。どうせ、俺の店はもう終わりだ……」
「親父、何言ってんだよ! どういうことだよ! 親父が店を辞めたらこれからどうなるんだよ!」
「ふん、考えるの自分のことだけか……」
「なんだよ。それが悪いのかよ!」
「はぁ~どこで間違えたんだろうな……」
「……なんだよ。何が言いたいんだよ、親父」
父親は玄関で蹲ったままの隆一の前にしゃがみ口を開く。
「あのな、家がなんの商売をしているか、分からないことはないよな」
「ああ、そりゃ知っているさ」
「なら、俺が商売をする上で一番怖いのが何かっていつもいつも口を酸っぱくして言っていたのも分かるよな?」
「……それは」
「分かるよな? 『店なんか風評被害で簡単に潰れる』んだと」
「……」
「ふん! 今、思い出したか!」
「だから、なんだよ! それがどうしたって言うんだよ! たかが同級生が一人自殺しただけだろうが!」
『ボグッ!』
「ゲホッ……親父……」
父親は立ち上がり様に隆一の鳩尾につま先をめり込ませると「たかがだと」と更に隆一を蹴り続ける。
「親父……」
「俺がこの動画をどうやって手に入れたのか分からないのか! 分からないだろうな、人を殺していながら何も反省していないヤツには分からないだろうな」
「ああ、分からねえよ! それがどうしたって言うんだよ!」
「……ふぅあのな、この動画はな常連のお客さんが教えてくれたんだよ『これ、お宅の息子さんですよね?』ってな」
「……」
「分かったか、もうこの動画はあちこちに広がってんだよ。もう、『あの店の息子』が同級生を殺したって評判が回ってんだよ! もう、店も閉めて来た。今は母さんに任せて後始末をしている頃だ」
「……」
「まだ、状況が飲み込めていないのか。いいか、もうこの地域で店を続けることは出来ない。人殺しがいる店で買い物しようなんて誰も思わないってことだよ!」
「……なら「他所でやればいいか」……ああ、他所で続ければいいじゃねえか」
「取引してくれるところがあればな」
「どういう意味だよ?」
「ハァ~どういうってそのままの意味だよ。今までの取引先全部から『今後の取引は遠慮させてもらいます』って電話があったんだよ。なあ、教えてくれよ。客も来なけりゃ、売る物もない、そんな店をどうやって続ければいいんだ? どうやれば続けられるんだ? なあ、教えてくれよっ!」
「ゲホッ……親父」
隆一は父親に足蹴りされる痛みに耐えながら玄関で体を丸くしていると、やがて疲れたのか父親は玄関の上がり框に座り込むと深呼吸してから「決めた」と隆一に告げる。
隆一は父親が何を決めたのか気にはなるが今、口を開けば更に暴力を振るわれると思いただ耳だけを父親の方へと傾ける。
「隆一、聞こえるか。俺は決めたぞ」
「……」
「俺はこの店の後始末がある程度落ち着き、母さんの生活の目処が立った所で死ぬ」
「親父!」
「ん、聞いていたか。なら、そのまま大人しく聞いとけ」
父親は起き上がった隆一の目を見ながら、ゆっくりと口を開く。
「いいか。さっきも言ったがある程度の目処が立った所で俺は死ぬ。それもお前の目の前で思いっ切り
「親父……なんでそんなことを言うんだよ! 俺は……俺は……」
「ふん、まだ自分がしたことを認められないか。もういい、後は好きにしろ。今度、俺がお前と話すのは俺が死ぬ時だ。じゃあな」
「親父!」
父親はそれだけ言うと、三和土に下り靴を履くと玄関扉を開け出て行った。残された隆一は直ぐに自室に戻り、もう一人の首謀者『
『あ、もっし~どうしたの? もう、淋しくなった?』
「バカ! それどころじゃないだろ! 何故、あんなのを流したんだ!」
『え? 何? なんのこと?』
「惚けるなよ! あの映像はお前しか撮ってないだろ! だから、お前以外にネットに流せるわけないだろうが! いいな、お前のせいだからな! 俺は知らないからな!」
それだけ言うと話は終わりとばかりに通話を切り上げ、スマホをベッドの上に投げ付ける。
「クソッ! 死んでまで俺に迷惑掛けるんじゃねえよ!」
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