ダンジョン冒険者なった僕、チートスキルで最強になる。
あるままれ~ど
第1話:憧れとダンジョン
「やっと着いたぁ……!ここがダンジョンかぁ!」
初めてダンジョンを見て、僕――ビス・メンシスは、嬉しさのあまり声を出した。
アビサス共和国という国の、セラムの森から歩いて二日ほど。
断崖絶壁に佇む、厳かな気配の遺跡が、強い太陽に照らされていた。
そうだ。こここそが、僕が求めてやまなかった場所。
人類最古から確認されている遺跡であり、今もなお、研究者たちが血眼になって研究している。無限に発生する魔物や鉱物から、人類最大の資源とも謳われる楽園。
多くの冒険者が、ロマンを胸に抱き、そこ――ダンジョンに足を踏み入れるのだ。
かくいう僕も、同じ志でダンジョンに挑戦しようとしている。
僕は少し緊張しながらも、やっとの思いで見つけたダンジョンに近づいた。
僕は改めて外観を観察する。
大きな石造りの扉には、とても美しい紋章が彫られている。
石もやはり古く、今でもはっきりと形を保って現存しているのが不思議なくらいだ。
いやはや、これは数多くの研究者が夢中になるのも頷ける。
「さて、じゃあ行ってみるか」
不安と緊張を紛らわせるために独り言ちた僕は、ダンジョンの石扉を開く。
中は……真っ暗で何も見えない。何か照らせるものが必要だろうか。
……いや、確かダンジョン内部はダンジョン外部から確認できないんだったか。
要は、中を見たいなら入れってことである。
まあ、内部を確認するにせよしないにせよ、結局のところは『スキル』のためにダンジョンの中に入ることになる。
それなら遠慮なく入ることにしよう。
ダンジョンに初入場するときに貰えると言われているスキル、それも早く知りたい。
スキルとは、個人よって違う能力のようなものだ。
スキルは大きく二種類分かれていて、『
基本的には文字の通りである。
常に勝手に発動しているなら常時発動系スキル、任意で発動をオンオフできるのが任意発動系スキルある。
また、スキルには『スキルレベル』が存在しており、スキルを駆使して、ダンジョン内に潜む魔物を倒したり、本人のレベルが上がることでスキルレベルが上がる。
僕本人は、まだレベル5である。
これは一般人と同じくらいのレベルだ。
まあ、僕はこれからダンジョンでレベル上げするんだし、問題ないか。
スキルレベルが上がれば、能力の恩恵がさらに大きなものになっていく。
スキルレベルはレベル1から始まり、スキルレベルが上がるほど、次にスキルレベルを上げるための経験値量が多く要求されるようになる。
僕のスキルはどうなるだろうか。
常時発動系スキルで無難に『身体強化』とかだろうか。
奇をてらう感じで、任意発動系スキルの『
スキルもいいけど、ダンジョンの内装も気になるな。
即死系トラップとかが無いといいけど……。
様々な期待と憧れを抱き、僕はダンジョンに入る。
外はやや高めの気温だったにも関わらず、ダンジョン内部に入った途端、少し肌寒さを感じた。
発生源は分からないが、どこからか冷たい風が吹いている。
まさしく未知、不可解な現象。
それこそが、ダンジョンを人類史上最大の謎といわしめる由縁であることに納得する。
さらに、ダンジョンの内部は洞窟のようだ。
薄暗くて、いやに湿気が高い。
湿気が高くて風も冷たいとか、嫌だな。
【ダンジョン初入場であることを確認、特典として、スキルが与えられます】
無機質な声が、頭の中に直接響く。
僕にスキルが与えられるようだ。
とうとうこの時が来たぜ……!
ずっとこの時を待ちわびていた。
それこそ、僕がこの世界に来る前から……いや、今はいいか。
それにしてもそわそわする。
どんなスキルかな?常時発動系スキル?任意発動系スキル?
楽しみすぎる!
早く早く!
【スキル付与対象、ビス・メンシスにスキルを付与します……スキル付与の完了を確認、ビス・メンシスには『増減支配』が付与されました】
『増減支配』、これが僕のスキル……。
字面で大体想像することはできる。
しかも、スキルを受け取った僕が念じれば、スキルの詳細を簡単に確認できる。
というわけで、念じます。
「ぬぬぬぬぬ……」
ふむ、ふむふむふむ。
なるほど、完全に理解した。
このスキルの効果は、レベル1の時点で『無機物のみに有効。物理的にのみ増減が可能。増加範囲:単位に関わらず、最大15。減少範囲:単位に関わらず、最大15』らしい。
この効果は絶対に任意発動系スキルだな。
しかし、無機物にのみ有効は分かるが、物理的ってのは少し難しい表現だな。
ようは、対象の寿命とか、感情とか、存在とか、概念とか、そういうのは増減できないわけだ。
さて、率直な感想を言おう――
――これ、普通にめちゃくちゃ強いのでは?
無機物限定だったり、物理的にじゃないと増減できないとかの制約はあるものの、十分に強いように思える。
試しに、僕は地面に転がっている石を拾う。
洞窟だから石がいっぱいある。
そうして持った石に、スキルを発動する。
スキルを発動するよう念じて……何を増減するかも決める。
よし、決まった。
あとは石にスキルの効果を反映させれば……。
「うわ!すげぇ!」
僕が持っていた手のひらサイズの石はどんどん大きくなっていった。
しかし、それとは対照的に、石はどんどん軽くなっていく。
これは間違いない……最強のスキルだ。
物理的に不可能なことを、物理的に干渉し増減させることで、無理やり可能にできる。
しかも、こんな風にも使えるハズだ。
僕はまた石を拾い、大きさはそのままに石を投げた。
そうして飛んでいく石に、僕はスキルを発動する。
石が地面に着くと、直径2メートルほどのクレーターが出来た。
普通、あの程度の石を投げたところで、あそこまで穴は開かないが、石を投げてから石の重さを変えることでデカいクレーターを発生させるほどの威力になったわけだ。
「これならある程度の魔物も瞬殺だな!」
僕は満足気に頷いた。
さて、まだまだ実験が必要である。
ダンジョンには魔物だっているので、実践も試したい。
ということで――
――手始めに、ここの階層のモンスターを殲滅すっか!
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