支配者の洞くつ 編
第7話 失恋
体に痛みを感じて優太は目を覚ました。
周りは暗いが森ではなく、どこかの建物の中のようだった。
四方は石壁に囲まれ殺風景な部屋で、窓もなく光もささない。この部屋は地下室のようだ。
どうやら俺はこの部屋に監禁されているらしい。立ち上がろうとしたとき、逃げられないように足に錠がかけられているのに気がついた。
「ここはどこだろう……なんでこんなところに」
先ほど体に感じた痛みは怪我をしていたわけではなく、腰布一枚のほぼ素っ裸の状態のままごつごつと尖った岩の床に寝ころんでいたからだった。
「けどそうか、やっとあの忌々しい森から出られたんだ!」
今、再びどこだか分からない場所に連れ去られ閉じ込められたことなどどうでもよかった。ただあの残虐なゴブリンどものいる不気味な森から出られた事が何よりうれしかったのだ。
「よっしゃぁあああ」
優太はガッツポーズをして叫んだ。
するとその声を聞いて、牢屋の外から誰かがかけてくる足音が聞こえてきた。優太は扉に近づき向こう側を覗いた。
「……クレア?」
そこにいたのは、記憶の一番最後に強く焼き付いている少女ークレアだった。牢屋の向こう側は森よりも明るかったので彼女の姿をよく見る事が出来た。
こちらを見つめるエメラルドの瞳は見ているだけで心を奪われそうになる。そして彼女の瞳の色に合わせた優しい緑色の服がとても似合っていた。
「あははっ、また会えるなんて思ってなかったよ」
「あら、まるでもう会いたくなかったみたいっ」
「いやいやッ、あ、会いたかったよ……!」
「へへへ、だと思った!」
―わあ、かわいいぃ!―
優太はつい彼女の可愛さに口元が緩みだらしない顔になってしまった。こんな顔ではクレアに嫌われてしまう。そう思うと頬を手でたたき気合を入れなおした。
「そう言えば……クレアがいるってことは、ここが君の言ってた村なんだね だったらここから出してくんない?あと服と食事も欲しいな。村なら他にも人はいるんだろ、久しぶりにまともな飯が食べたいよ」
「ダメ……」
「は? ああ、流石にちょっとわがまま言い過ぎたか…………クレア?」
クレアが急に静かになったのでどうしたのかと思い扉に近づき彼女の顔を覗こうとした。すると彼女は突然態度を豹変させると、大きな声で叫ぶようにこう言った。
「やめてっ それ以上近づかないで」
「え……」
優太は突然冷たくされたことに困惑した。
すがるようにクレアの顔を見上げるが、彼女が俺を見る目は先ほどとは違っていた。何か恨みのこもったような物で俺の事をにらみつけていたのだ。
「ユタ、あんまり調子に乗らないことね……アタシが今までアナタみたいなよそ者と、仲良くお話してあげてたのは、全部アナタを捕まえるためだったのよ」
「は、どういう事なんだ? あと俺の名前はユタじゃなくて優太だぞ」
優太は状況がイマイチ理解できずにいた。
しかしクレアは優太にかまわず語り始めた。
「このグロッチ村は今ね、
それに優太は魔法なんて使えない。しかしクレアは優太が
優太もその可能性に気が付いた。
「俺は魔法なんて使えやしない あのときの光は、ただのビデオカメラの光だったんだ」
「ウソ! あなたからは魔力を感じるもの 魔法を使ったんだ」
クレアはそう言うと、扉の隙間から覗く俺の顔にぐいっと近づいた。
「一度入ったら出られないっていう迷いの森から、どうやって出てこれたのかは知らなけど。それも全部ムダだったみたい。なぜならアナタは明日食べられちゃうんだから!……今どんな気持ち?」
「控え目にいって……最悪だよ」
―なるほど、地獄はまだ続くようだ―
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