第13話 好敵手
ミアside
私の名前はミア。本名はミア・フリーズ。神眼である『冷徹』の眼の持ち主。
家は貴族で、公爵とかいう階級だった気がするわ。
わたしはまだ七歳だけど、将来はエイブリー様を超えるような魔導士になりたいと思ってる。
そして、何よりの自慢が『神眼』を所有していること。
これのおかげでエイブリー様に師事することができていた。
でも、そんなわたしの道を邪魔するものがいきなり現れたの。
そいつの名前がエイダン・テオ。
自分の使用人に怪我をさせたり、奴隷をごみのように扱う最低なやつと聞く。
それを信じ切って、私は最初からテオに強く当たった。
でもあいつは、思っていた人物像とはあまりにもかけ離れていたわ。
私が上から試合の催促をしたときも、驚くことに嫌な顔せずすんなりと受け入れていた。
『あなたが私に試合を申し込むの!私と戦わせてくださいって!』
『ごめんごめん。じゃあ、俺と戦ってください。お願いします』
頭のネジが外れているのかと思った。
一応はあいつも貴族のはずなのにそのプライドのようなものはないのかと。
すぐに謝り、ヘラヘラと笑うあいつにわたしは苛立った。
いけすかない。本当にいけすかない。
まだあの会話が頭に残っている。
試合はさらに驚きの連続だったわ。
わたしの得意であるレイピアをカウンターで落とすし、基礎体力も私の方が上だけれど、それに近い動きを見せていた。
まさか自分が『神眼』を解放するまで試合を持ち込むとは。
最近、エイブリー様の師事で新しく習得した『
試合に勝って勝負で負けたような感じで悔しい。
いきなり動きも俊敏になって、最後の数分はわたしも本気で負けを意識した。
レイピアを突きつけられた際に、彼の腹部がガラ空きでなく、しっかりカウンターを意識して塞がれていたらわたしは危なかった。
咄嗟の冷気を応用した蹴りで試合は終わったの。
後ろに吹き飛ぶあいつを横目にわたしは、落ち着きを取り戻していた。
あのとき、あいつが爆発的な成長を見せてから息もできていなかった。
どうしてかしら。
あいつに対する憎悪と怒りはまだ多少は残ってるけど、彼への興味はある。
試合直後、わたしはあいつに聞いた。
「どうしてあんたはそんなに強くなりたいの?目標はなんなの?」
「どうして、か……」
そこで考え込むテオにわたしも黙り込んでしまった。
早く言いなさいよ!と口に出したいが、その真剣な表情を見ては私も口を閉じるしかなかった。
「そこらへんの輩が俺への悪評を言えなくなるくらい強くなる」
「‥‥‥どういうこと?」
「まあ、簡単なことだ。俺はもともと自分でも引くくらいのどクズだから、強くなって”暴君”という印象を消したい。そのためにはミアみたいな強いやつが必要だしな!」
ニカっと笑ってわたしの方を向く。
「ふ、ふうん────」
そんな対応しかできなかったが、心臓が跳ねた。
別にあいつの笑顔に見惚れたからではないわ。でも、素直にしっかりとした目標をあいつは持っているんだと思った。
付け加えて、五年後、新人戦があると彼は言う。
「俺の名を世に知らしめるチャンスなんだ」
なら、わたしもそれに出てやる。
そして、社会的にも実力的にもテオより上なんだとみんなに知らしめるんだ。
『神眼』なんか所詮わたしを上に連れていってくれるスキル。感謝の念はあるけど、情はない。
それなら、わたしはあいつにずっと勝ち続ける事を目標とする。
次は絶対に勝負に完封で勝つ。
わたしは『冷徹』のミアなのだから。『神眼』が私の運命なのだから。
侮ることはしないわ。
ともに訓練をすることは癪だけど、五年後の新人戦がとても楽しみ!
「────テオ、わたしとも、あ、握手をしなさい!」
「おうよ!」
そしてその日、ストーリーの大幅な改変が世界の軸に大きく響くのだった。
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