第7話 不本意な出会い
───ザッ、ザッ、ザッ、……。
グレイン砂漠。
世界一広い砂漠だなんだというが、実際はただ、永遠と砂が広がっているだけである。
魔力開発がこんなに進まなければ、人が住み、活気に溢れた街になっていたかもしれない。
(今日も生き延びた……)
(……生きてしまった。)
夕日が砂を真っ赤に照らす様を見ながら、1人の男がよろよろと歩いて来る。彼の皮膚は焼けただれ、視線はどこを捉えているのか分からない。口の中は砂だらけ、服の原型はもはや消え失せ、焼けた布が張り付いているだけの状態である。
───『死』。
集落が燃えた後、自分も死ねたらどれほど楽だったことか。
それなのに自分は、ほぼ死体と化した体を日の元に晒し、こうして未だのうのうと生きている。
なぜあの時あんな力が出せたのか。
自分を育ててくれた親族や大切な友人が、自分の足にしがみつきながら最後は腕の力がもたず炎の中に引きずりこまれる───眠るたびにそんな夢ばかりみる。
「誰か、誰か、殺して───」
出会いはその時だった。
「犯罪者、発見。」
何かが空からこちらに向かって猛スピードで墜落してくる。………鳥?……いや、人だ。
「……幻覚、か?」
銀髪をなびかせた少女が、こちらへ落ちてくる。
手には死神の鎌。
「……。」
───男は静かに彼女を待っていた。
今起こっている現象が何なのか、考える余裕すら無かった。
ただ、死神が殺してくれるのを、待っていた。
しかし、哀れな男の期待はものの数秒で裏切られた。
目の前の少女が、自分を殺す気など無いことに気がついたからだ。
「ミスタ・ハルトでお間違いないですね。」
「……。」
「……私は『死神』というものでして、……」
沈黙は肯定と見なしたのか、はたまた目の前の相手の事なんて興味の欠片も無いのか、少女は無表情で続ける。
「……よって、これから貴方の処遇は『死神』のリーダー、アレク・アルストロが決めます、。」
説明しながら、ユズリハは微かに動揺していた。こんなしおれた態度の犯罪者の担当は初めてだったからだ。
・ ・ ・
「───例の炎の男の件、知ってるよな?」
「……知らない。」
「はぁ、まじかよ」
いつもの事ながら、アレクは頭をかかえる。
「まあ、お前は指示された事をやりゃあ良い。……そーゆうの、得意だろ?」
「わかった。
……とりあえず、犯罪者は排除して、、」
「待て待て待て。」
・ ・ ・
あの時のアレクの指示に、ユズリハは未だに納得していない。
犯罪者はすぐにでも排除するべきなのに。
───あぁ、憂鬱。
ユズリハは口を開く。
「貴方は殺人を犯した。その罪を償うため、私と共に来てもらいます。これから旅先で出会う100人の死を見届けなさい。貴方がこの世の死の在り方を見届けた後───私が貴方を処刑します。」
※AIアプリでユズリハの挿絵を制作してもらいました。ぜひ近況ノートをご覧下さい。
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