第6話 とある少女の憂鬱な任務
「───それで、都市側は一体どんな処置をとるんです?集落が丸々滅ぶなんて前代未聞です!」
「魔力0の男が人を殺せるだけの炎を操れる訳がありません!!まさか、都市部は魔力値報告の際に偽装工作をしたのですか?!」
「………………。」
『お答えください!!!!』
「わ、私は上層部の方々の代理で参ったので、な、なんとも…………」
「なぜなにも知らされていないのですか?!」
「やはり何かやましい事があるのですか?」
「で、ですから、私はあくまで代理で……」
ついこの間まで都市部のしがない清掃員として働いていただけの太った男は、記者に詰められしどろもどろになる。
───その時。
ガチャン。
「あ、あーー。マイクテストマイクテストー。
ねえそこの君~、”代理”って意味ちゃんと分かってる?……ったく、都市連盟の奴らはまた無関係の人間金で釣って会見逃れてんのかよ、」
急に入ってきて強引にマイクを奪った人物は、”乱入者”というにはあまりにも整いすぎている姿をしていた。そのおどけたような、同時に少しイラついているかのような口調とは裏腹に、彼の顔立ちは誰もがハッと息を飲むほど美しかった。
「あ、あなたは……?」
おずおずと記者の1人が尋ねると、その男は食い気味に答えた。
「ん、俺?俺はアレク。アレク・アルストロ。超最・強・集・団『死神』のリーダーやってまーす。」
あっけにとられる聴衆など気にしないで、アレクはつらつらと喋り続ける。
「てなワケで、無能な都市部の奴らに代わって、俺ら『死神』が例のミスタ……だっけ?を処理するんで。この可哀想なオッサンは解放してやってください。」
「以上!!!!!!!」
キーーーーーーーーーンンンンーーー…………
乱暴に置かれたマイクがハウリングする。
美少年は、今だにアワアワとしている太った中年男を無理やり出口へと押し込み、自らも姿を消した。
記者達がそれを逃すものかと追ったが、その姿は跡形もなく消えていたのだった。
・ ・ ・
───コンコン、
「ユズリハー?俺だ。入るぞー。」
その瞬間。よく研がれた銀色の刃が、彼の喉元を襲う。
「ったく、危ないだろが」
アレクは軽い身のこなしで素早くかわす。目の前には、大きな鎌。まさに死神である。
「……当たり前の様に避けられた……」
ユズリハと呼ばれた少女は、ムスッとした顔で静かに悔しさを滲ませている。
「おいおい、俺ちゃんとノックしたんだが?」
「…………喉元を掻っ切って変装してないか見極めるまでが本人確認。」
やれやれ、とアレクはため息をつく。
「……それで、私になんの用。」
その華奢な体の腰あたりまで続く銀色の輝く髪に、海をそのまま切り取ったかのような色彩の大きな瞳。アレクを美少年と言うならば、ユズリハもまた、紛うことなき美少女と呼ぶに相応しかった。
───そんな彼女に1つ難点があるとするならば、それは融通のきかない真面目すぎる性格にあった。
他の人物にならもう1つか2つ無駄話をしてやっているところだが、こいつには無理そうだ。そう判断し、アレクは即座に本題に入る。
「D隊 隊長、ユズリハ・コリウス。お前に任務を与える。」
「………………D隊って何ですか。隊どころか、『死神』のメンバーは5人しかいませんけど」
「………………ノリ悪ぅ。」
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