第4話 早すぎる再会
……ミシッ、カン……
───コトン。
「……ッ」
割られた木の片割れがミスタの足にぶつかり、血がじんわりと滲み出る。小さな農村での主要な仕事といえば、農作業か薪割りくらいしかない。
そこそこの魔力があれば料理などの面で少し楽ができるくらいである。そのため、魔力が無いからといって特には困らないが、何らかの魔力適正を持ち、それを仕事にする者も少なからず居る。
自慢をしたい年頃の若者にとっては、自分に将来役立つ力がなにも無いということはかなりの屈辱だった。
加えて、自分が守るはずだった許嫁は1人でも生きていけるだけの力を持っている。
魔力値測定でそれが明らかになった事で、男は心なしか以前より臆病になっていた。
ニケがこの集落を出てから半年が経った。
ニケ以外で、村の外へ出ていった者はいない。
都市部の人間から見れば、魔力値5など無いに等しいのだろう。例のバンダナじいさん───いや、長老は、僕の魔力を高いと褒めていた癖に一切スカウトは来なかった、とエドがぶつくさぼやいていたっけ。
「……くそ、まだ1年も経ってねぇのに」
今まで当たり前のように傍で支えてくれた人が居ない。彼女が去ってからというもの、ミスタの心にはいつもぽっかり穴が空いた様だった。
(一緒に行かない事を選んだのは、俺だろ。……ちくしょう。しっかりしろっ)
カンッ───
カンッ───
(……誰もいないな)
カンッ───
(……今日の晩御飯、どうし)
カンッ……ッ……───……リン……
「……?」
ザァッッッッ。
「な、なんだ?!急に風が」
「…………え。」
男に見えたのは血の様に赤い空。
それから、あの夜と同じ顔をしたニケ。
ニケの手には───
エドの生首。
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