地雷の綺麗な堕とし方

苅安 鴇

第1話<0.00% 清楚系の素質>

 僕はアパートの一室でのんびりベットでゴロゴロしている。もうそろそろ時計の短針と長針が重なる頃。寝ようかと思い、洗面台に行って歯を磨こうとした。


 歯ブラシに歯磨き粉を付け、眠い表情で歯を磨く。歯を磨き終わり、口の中に溜まった唾液と歯磨き粉を捨て、終わった自分の顔を見つめた。


 ニィー アーン プク と眠い自分の顔で遊んだ。そんなところでインターホンが鳴った。


 時間はもう、先程の自分が昨日の自分になっていた頃。「こんな遅い時間にだれだ」と心の中で思いながら玄関に向かった。玄関に着いたが、流石にそのまま開けるのは怖いと思ったので、一旦ドアアイを覗いてみる。だが誰も居ない。急に怖くなってきた。


 ドアチェーンをかけて部屋に戻ろうとしたが、やっぱり、怖いという気持ちより好奇心が勝ってしまい、ドアのロックを解除してゆっくりドアを開けてしまった。チェーンの限界範囲まで開けて、隙間から外の景色を見た。


 最初に見えたのは都会の明るい光が暗闇の夜空の光。次に見えるものはアパートの外廊だった。


 やっぱ何もないかと思ったが下を見ると何かが居る。


 女の子らしき人がキーホルダーをいっぱいつけた黒革の鞄を背負い、缶チューハイを片手に持ち、溢しながらうずくまっていた。

 

でも、流石にこれを見て感づいた。


 こいつはヤバいやつだ。


 すると突然、そいつがこちらを見てきて立ち上がってきた。自分は反射的にドアを閉じた。だが女の子はドアをおもいっきり叩いてきた。


「おうじしゃまぁぁーー...おねガーぃシマスゥー。部屋に入れてくだしゃーぃ...もう嫌なんですあんないえぇぇぇ...おねがいでしゅぅぅ...」


 意味がわからない事を言ってきた後に「バタン」と音がした。その音には流石に気になってしまった為、チェーンを外してドアを開けた。そこで目の当たりにしたのは、その酔っ払っている女の子が上を向いて倒れていた。


「大丈夫...ですか?」


 声に出したが返事は来なかった。気絶したのかと思ったが、よーく顔を見たら寝ていた。

 

 一旦、倒れている酔っ払いの彼女を壁の方に寄りかからせて体勢を立て直した。これで良いだろうと部屋に戻ろうとしたが冷静に考えると、自分は流石にヤベェ事をしてるなと思い、ため息をして彼女を抱き上げた。


 そして部屋に戻りベットまで持って行き、ベットに安置した。そこでやっと自分は彼女がどんな人なのかを、目に焼きつけさせられた。


 そう、彼女はいわゆる地雷系の女子だ。髪型はツインテールで黒とピンクが混ざり合っている髪色、目の下の涙袋に赤っぽいサーモンピンクのメイクを付け、ほっぺにキラメイクと、とても薄めのピンク色の口紅を唇につけていた。


 勿論、服装も地雷だ。


 みんなが想像する通りのメルヘンティックの服で、脚には網タイツを履いていた。


 でもそんな事より今は、眠すぎて自分の体力の限界が近かった。彼女に布団を敷いて、自分はベットに寄りかかってうずくまって寝た



「ピピピッピピピッ...」


 携帯に設定していた目覚ましが鳴った。目が覚め、携帯のアラームを止めた。時間はいつも通りの朝5時。今日は大学がない土曜日だというのにゆっくり休まない自分が馬鹿みたいに感じた。


 朝早くからコーヒードリッパーで自家製のコーヒーを作り、台所でChillしていた。彼女の姿は寝る前に見ていた様に天井を向いて寝ているのではなく、自分がいる反対側に顔を向けていた。


 自分は彼女がゆっくり休めていることにホッとした。「昨日は大変だったなぁ」と心の中で彼女に呼びかけ、ため息をつくとコーヒから出てる湯気が揺らいだ。


 コーヒーを台所の隅に置き、テレビをつけて朝のニュース番組に切り替え、台所で朝ごはんを作るところだった。

 

 冷蔵庫からレタス・ミニトマト・先日のあまりの小さいモッツァレラチーズを出した。


 まずレタスの葉を四枚剥き、ミニトマトのヘタを取って水で洗った。レタスを小さく破って、底が深い皿の容器に入れ、ミニトマトも入れて、最後にモッツァレラチーズを裂いて入れた。


 これでサラダの完成。


 今度は冷蔵庫から卵を四つと牛乳を出して、カウンターにある市販で売っていた食パンを取り、調味料の収納箱から砂糖が入ってる箱を取り出した。ボールの角で卵を割っていき、牛乳を目分量で足し、砂糖を大さじ三杯を入れて菜箸でかき混ぜた。そして食パンを2枚袋から出して、先程のかき混ぜたリキッドに滲み込ませた。

次はフライパンを取り出し、ガスコンロに火をつけた。

 

 フライパンに熱が通る間に、コーヒーを飲みながらニュースの画面を見たり彼女の寝てる姿を見たりした。そろそろ火が通ってると思い、冷蔵庫からバターを出して、すぐさまナイフで切り取ってフライパンに乗せた。フライパン一面に油が広がるように調節し、リキッドが滲み込んでいる食パンをフライパンに乗せた。


 油が弾く音が激しく周りに響き渡りはじめる。

 

 自分は意外とせっかちなもんで、ちょっとづつひっくり返していく系な感じで毎回ご飯を作っている。

 

 フライ返しを持って、こまめに食パンをひっくり返しては弱めに押し潰した。


 そしてフレンチトーストの原型が完成した。


 二枚を別々の皿に移し、小さいふるいで粉砂糖をかけ、これで一応朝ごはんができた。お皿を座卓のちゃぶ台に置いていき、ついでにドレッシングとジャムも持ってきた。

 

 美味しそうな匂いが漂う中、まだ彼女は寝ている。


「あの、すみません。朝ですよ」


 時間は5時半。流石に起こすには馬鹿だったかと思ったが、彼女に反応があった。


「んん...すぅーふわぁぁ...ん〜?王子様?おはようございます...」


「違いますよ。お願いです、目をちゃんと開けてください!」


 ここでやっと目が覚めたらしい。そして勿論、彼女は昨日の事を覚えているはずもなかった。


「ん...え?ここどこ!?私の王子様の部屋...より綺麗な部屋で...オシャレ...あんた誰?」


「あ、ぼ、僕は昨日、あなたが酔っ払いながら僕の部屋の目の前に来て、いきなり寝込んじゃったので家に入れさせたものです」


「あー...えへへそれはすみませ〜ん〜」


 素直に謝ってきた。


「あのー...ご飯、作ったのですが食べます?」


「.......王子様...?いや坤...」


 彼女はフリーズして、瞳から涙が出てきた。


「食べます食べます食べますぅ!!本当にありがとうございますぅ!!ウゥ...ウエェーーン...」


 めっちゃ泣き出した。正直この様な気が弱い人は性格上合わない気がする。見た目以外は。


 彼女は起き上がり、光の速度で座り込んでフレンチトーストを手で掴み、口に頬張った。サラダも手で食べてしまう始末。彼女は汚い食べ方をしているのにも関わらず、なぜか彼女に対して綺麗に食べているように見えてしまっていた。


 朝日が昇ってきて、カーテンから日が差してきた。彼女の顔が太陽光に照らされ、よーく見ると、彼女は


 可愛かった


 でもあることに気づき、初対面で失礼ながらも彼女に言った。


「メイクつけたままですが、洗面所使います?」


「はいぃ、後で使いますぅ...」


 ぴえん顔でまだ泣いていた。

 そう思っていたちょうどに食べ終わり、彼女はテーブルを「ガチャン」と鳴らしながらちょっと小走りで洗面台に向かった。

 

 先程彼女が食べていた反対側の場所で自分の分のご飯を食べ始めた。自分はもちろんナイフとフォークでフレンチトーストを切って食べた。イチゴジャムの蓋を開け、スプーンで取り出し、フレンチトーストに乗っけて食べた。

 食べていると、彼女が使っていた洗面所の水の音が止まった。


「あのー王子様ー、王子様のタオル使ってもいいですか?」


「どーぞー。使って大丈夫ですよー」


 多分顔を拭いてるような音がする。そして、彼女はこちらに戻ってきた。今度は、僕がサラダにドレッシングをかけて食べていると、彼女は先程食べていた場所に座ってきた。下を向き、皿を持ってサラダと面を向きレタスを口にし、皿をテーブルに置いた。

 

 今度は目線を上げ、彼女の服が見え、そして彼女の顔を見た。彼女はツインテールをおろし、ストレートヘアーになっていた。そして、またまた驚いた。「スッピンを外したのか?」と思った。もうこれは、多分運命的な出会いなのかもしれない。


「なんでスッピンを外して美人なんだよ!

おかしいだろ。普通、ちょっとは原型に戻るはずなのに、こいつは進化してる。

意味がわからない。」


と心の中で叫んだ。っていうか、本当に彼女は地雷系なのか?


 確かに彼女は聞いた感じ「王子様ー」とか、他人に対して言っているけども...


 だけど...


 だけど、やっぱり可愛いんだよ...

 性格が良ければ...

 と思っていたら、ヤバい閃きをしてしまった。


「こいつの性格を普通にすれば完璧じゃね?」


と。


 そんな考えは一瞬に過ぎなかった。


「王子様!今日はホンッッッットーに、ありがとう!マジで好き!」


 自分は、彼女の「好きと言う」言葉で照れてしまった。


「それより〜。王子様ってかっこいいね!部屋もなんか雰囲気いいし」


「いや、別に、カッコよくはないですよ...でも、部屋は色々バイトとかして部屋にインテリアを付け加えてみました」


「いいね〜。将来、誰かの王子様と結婚したらこんな感じの家とか住んでみたいね〜」


 失礼ながら自分の心で、「流石に今のままじゃ無理でしょ」と決めつけてしまった。


「じゃあ、僕と付き合ってみます?」


 思いっきりどストレートで聞いてみた。


「え?うれしい!!...けど...わたし、彼氏いるの」


「あっ、それはすみません...」


 こんな彼女にも彼氏ができている事に心の中で驚きと、自分が急に告白をするという奇行にはしった恥ずかしさをぶつけ合い、反射しあっていた。だけどこれなら安心できる。


「じゃあ私はそろそろ出て行くね」


 彼女は立ち上がり玄関に向かっていった。自分も後からそちらに向かった。彼女は厚底のシューズを履き、ドアを開ける。


「え、もう大丈夫なんですか?風呂とか入んなくても...」


「...ふーん王子様は私の裸を見たいってわけか(笑)」


「そういうわけではありません!」


「じゃ、そういうことで...」


 彼女は一瞬不安のような顔をして、手を振って去ろうとした。だけど自分の本能はこのまま終わらせようとしなかった。


「あの!お名前だけでもお聞きできれば」


「私?私は『春松優菜』ユウナって呼ばれてます。そちらの王子様の名前は?」


「み、宮田優です」


「ユウくん。いい名前だね。まさに王子様みたいな名前!」


「僕はユウナさんの王子様ではありませんよ」


「でもさっき告白してきたくせに~(笑)」


「あれは違うんです、もう忘れてください,,,」


「忘れませんよぉ~ふふふ...まあそれより、また今度遊びに来てもいいですか?」


「え?」


 あれ、ユウナさんって彼氏居るんだよね?


「それって浮気にならないんですか?」


 流石に断ろうとしたが理由だけ聞いといた。


「ん、まあ...浮気なのかな?でもいいじゃん」


「だめです。流石にそんな関係はこんな僕でもダメな事はわかりますよ。セフレとかそういう関係には飽き飽きしてますし。ましてやユウナさんからそういう風に言うのはヤバいですよ!それに...」


「わかったわかったって。冗談ですってばもう...何でそんな真面目君なのユウ君は」


「常識です」


「...じゃあ常識じゃない理由があったら...」


 言葉の後に彼女は何故かほろり泣いていた。

でも笑っていた。あの地雷系の性格ではありえない事だった。


「...ごめんなさい。取り乱してしまって...じゃあ、帰りますね」


 今度は敬語を使ってきた。

 

 でも今はそんなことよりユウナさんの状態だ。なんで泣いているのかは僕にはわからない。でもなんとなく、なにかの事情があることは確かだと思った。


 ユウナさんはアパートの階段の方に向かった。そこで僕は裸足で部屋をでて、ユウナさんの所まで行った。


「ユウナさん!」


「!?」


「やっぱり来ていいですよ、僕のアパートに」


「本当?」


「ユウナさんに何の事情があるかは知らないですが、来たいのならいつでも来てください。でも!その代わりに。今度来たらちゃんと理由を聞かせてください。その理由を」


「はい!」


 泣き終わった後の笑顔は僕に見せつけてるような表情だった。いや、これは僕からすると訴えかけてるような表情だ。


「じゃあ、また来ますね。『ユウ王子様』 …」

 ニコッと笑った。



次回<25.0% メイドカフェ>

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