collusion 〜共同作戦、計画段階〜
日重襲撃から2日が経った日の事。
「……」
九洞アカリは眉毛をひくつかせながら、目の前の状況に頭を悩ませていた。
「おう、戻ったか」
そこには、カムリがガタイの良い黒服たちを侍らせていた。
優雅に客用ソファに座って、肩を揉まれたり、紅茶を注がれていたり、ケーキを出されていたりと、まるで王様かよと思うほどの待遇を受けている。
「なにを、やってるんですか?」
「なにってお前が来るまで稽古つけてただけだ」
「どうして稽古つけてあなたが男ばかりのハーレムを作ってるんです?」
「多人組手やってて“負けたら1日王様な”って言って、勝った」
「そうなんですね。てっきりそういう趣味があるのかと思いました」
「いやいや、断じてそういうの無いから」
なぁ?と周りの黒服を見回す。
黒服たちは一斉に頷き返した。
「ちなみに、俺が負ければ逆だった」
だが、カムリがそう言っても、アカリには納得がいっていない。
「そもそもあなたと九洞會はただの同盟関係です。余計な干渉は私たちにも影響が出してまいます」
「少し入り浸るだけで問題ねぇだろうが」
「それが迷惑なんですけど……」
それ以上言ったところでキリがないのでため息を吐くアカリ。
「ところで、だ」
ショートケーキをフォークで切り分けるカムリ。
黒服は用済みなのか外へと出ていく。
二人きりになったところで、アカリは向かいのソファに座る。
「……何の要件ですか?」
「二つほどある」
怪訝な表情を浮かべるアカリ。
「お前の友達、アイツは一体ナニモンなんだ」
「何者……というのは?」
「皐月だよ。企業のネットワークを、ハッキングなんていくら天才でも到底出来るわけがねえ」
アカリは顔を強張らせる。
「何か……とは」
「いくら考えてもおかしいだろ。九洞會という暴力団組織にまるで部活に勧誘するかの様に友達を入れるってのはよ」
「……」
アカリはカムリの鋭い目を直視できないでいた。
「アイツは一体、何なんだ」
アカリは深く息を吐く。
「それをあなたに教えたところで、何もないですよ」
これ以上何も話せないという風に苦笑した。
「ああ、そうかい。じゃあこの話は終わりだ」
そう言ってカムリはケーキをフォークで突き刺し、そのまま一気に口に詰め込む。
「もう一個は、日重の研究施設で少し気になった事でだな」
そう言ってカムリはポケットから何かを投げる。
受け取ったアカリの手にあったのは、緩衝材に包まれた小さな何か。
「開けてみろ」、カムリに言われて緩衝材を剥がしてみる。
黒いUSBが見えた。
「それをパソコンに挿すんだ」
カムリの言葉に従ってデスク上にあるノートパソコンにUSBを挿し込んだ。
パソコンの画面に浮かぶ、さまざまな文字の羅列。
いくつものプログラムが構築されていく。
そして、画面に現れたのは研究所の内部だった。
「これは……」
「……アルルカーンの中にあったメモリだ。高機動なんちゃらかんちゃら兵器……まぁ、日重で鮫竜組を排除していた殲滅兵器の首元にあったヤツだな」
「アルルカーン……純粋無垢な少女を人柱にしていた日重の兵器……何度聞いても気持ち悪いですね」
苦い表情を浮かべて、画面を見つめるアカリ。
その中である映像が流れる。
「え……!?」
目の前に映っていたのは、黒い装甲を纏った戦士が鮫竜組の人間を斬り伏せていた瞬間。
「これは……ブラックブレイズ……!?」
カムリは無言で頷く。
「やはり、コイツも現れるとしか思えねえ。もしコイツが乱入するとなれば戦闘の損害が大きくなることは不可避だ」
知っているからこそ、断言できるブラックブレイズの強さ。
「ええ……ですが、ブラックブレイズは暴力団根絶の為に動いているだけで実害が出るわけでは」
「お前、九洞會の当主だろうがよ」
アカリは、今更思い出したように顔を赤らめる。
呆れたカムリは肩を落としながら、人差し指を立てる。
「俺に一つ考えがある」
だから、彼はある提案を持ち込んだ。
その為に今日は来たのだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます