gap〜革命もしくは復讐〜
アウトレットの内のフードコート。
お腹の空く匂いが充満した中で昼食を四人でとるという事になった。
カムリはうどんを、アカリはオムライスを、そして兵器二人はお子様ランチセットを机に置いていた。
「なんで、あくまでもヤクザの当主がアウトレットでショッピングをやってんだよ」
「いいじゃないですか。オシャレしたい年頃なんですよ」
そう言って彼女はオムライスを口に運ぶ。
「お前、今いくつだよ」
「……19です」
「若いな」
こんないたいけな少女が九洞會の当主だとは運命も非情なものだ。
「大丈夫です。兄が死んで、おじさん達が支えてくれたから……」
そう言ってどこかへと大きく手を振るアカリ。
彼女が見ていた方向に目をやると、頑とした男が二人仲良く座っている。
「あの人たちは兄が連れてきた人たちで、二人も兄の事を尊敬していました」
「ふぅん……」
体格の良い二人を流し目で見て、うどんを啜る。
「“V”、なんか不機嫌?」
首を傾げる“J”の前で身体をワナワナさせる緑と黒のパーカーの少女“、次代少女兵器22番V”。
「あったり前でしょ……なんで、なんで……」
フードコートに甲高い声が響く。
「アタシ達がお子様ランチなのよ!!」
突然の大声にざわつくフードコート。
「コラ、ヴィヴィ!!みんながいる場所で大声を上げちゃいけません」
「それは分かるわよ。でもどーしてアタシ達がお子様扱いなのよ!!」
「わたしは構わないけど」
再び首を傾げる“J”
「アナタは、マイペースすぎるのよ。もうちょっとプライドとか持ってよ」
「まぁ、お子様ランチは子供の時しか頼めないからな。うん」
ニヤニヤしているカムリ。
「アンタが!!いっちばんムカつくのよ!!」
そんなカムリを指差す“V”。
「だいたい、少しアカリより強いからって調子に乗りすぎ!!アンタなんかアタシ一人だけでヨユーなの!!ヨユー!!」
ものすごい剣幕の“V”に前と真横から冷たい視線が。
「な、何よ」
冷たい視線の主、アカリと“J”を交互に見る“V”。
「ヴィヴィ、強がるのはダメだよ」
「“V”、自分から認めたんだから諦めて」
「っ〜〜〜!!!」
机に突っ伏す“V”。
「自滅するツンデレとか初めて見たわ」
「ツンデレじゃない!!」
カムリの言葉に顔を真っ赤にして反論する“V”。
「ヴィヴィ、もういいよ。大人なら大人っぽく静かに」
冷静に諭すアカリ。手慣れている様子からおそらく日常茶飯事なのだろう。
“V”はしょんぼりしながら小さいハンバーグを齧る。
よほど美味しかったのか、とても幸せそうな顔をしていた。
「——さて、九洞アカリ。用件を聞こうか」
カムリがそう言うと、彼女はオムライスを口に運ぶ手を止めた。
「ここで会ったのは本当に偶然。だが、いつか機会に俺に依頼をしてくるつもりだろうとは思ったさ」
「流石、イーグル。完璧な推測です」
「で、用件はなんだ」
アカリはオムライスを食べ終わると、口元を紙ナプキンで吹いたあとに静かに呟いた。
「これは私達との共同作戦です」
「共同……?」
「ええ、あなたとは一時的に同盟を組みますとあの時に言いました」
「……言ってたな」
「もしや忘れていた訳ではありませんよね」
視線を逸らすカムリ。
もちろん忘れていた。
「四菱の制御室の鍵を奪取したのはおぼえていますか?」
「ああ、それは覚えてるさ。なんなら今も持ってる」
そう言ってじゃらりと鍵を見せる。
マジックテープ式の財布についているリングについていた。
「もっと……こう大事な場所に保管できなかったんですか?」
「一番大事な場所は自分自身だ。それにほら、脱落防止までしている」
財布につけているチェーンを見せるカムリ。
しかし、アカリはなんとなんとも言えない表情でそれを見ているだけだった。
「で、この鍵がどうした?」
「その鍵は制御装置の鍵です。それを使用して四菱の制御基盤を破壊してください」
「……なるほどな」
合点がいった。つまり、彼女の目的は……
「あなたには、四菱をシティから排斥してもらいます」
とんでもないことを笑顔で言うアカリ。
「依頼は、エイト・バナーにある四菱NNS分社にあるデータベース及び制御室の破壊を行なってください」
「俺一人でやれってのかよ」
「私達は、あなたが依頼を完了した後にそこを制圧します」
しかし、その依頼はあまりにもリスクが大きすぎる。
ここで企業に目をつけられて仕舞えば最悪、今の生活さえも出来なくなるだろう。
しかも四大企業の一角だ。
成功したとして、その後に安息が訪れる保証は一切ない。
「成功報酬は……それなりにあるんだろうな」
「そうね……5千万と四菱の兵器データ全てはどうですか?」
「もしも失敗したら?」
「その時にはあなただけが消える。それだけです」
「……」
カムリは財布に提げられていた鍵を見つめる。
この鍵一つでシティの企業を潰せる。
“企業を狩れ、そして喰らえ”
老人エイキチがかけた言葉がフラッシュバックされていく。
彼の身体が震え出す。恐れではなく、武者震いが彼の全身を駆け巡っていた。
「OK、依頼は受ける。だが、その前に頼みがある」
カムリは口角を吊り上げてアカリを見た。
「お前らの組へと行かせてくれよ」
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