第5話

 テントむら くし歯抜はぬけて 墓標ぼひょうなく


 公園内の林のなかにかたまりのようにある青テント群も、冬の時季は、ときおり死人が出る。私は、ほとんど話したこともなかったが、顔ぐらいは知っていた。いい人ではなかった。身寄りはなく、結局、区の職員がテントの荷物を処分して、ぽっかり空地が出来たようになった。



 公園こうえんの 草木そうもくふかし まり


 夏季の公園の林は、路上生活者の歩く獣道けものみち以外は鬱蒼うっそうと草が茂り、あたりは見渡せない。そうう草深いところに動物の死骸を見つけることがある。アライグマなのか尻尾に縞々しましまの模様がある。前足は犬とも猫ともちがう形をしている。野生動物の死と密接している不穏がある。



 公園こうえんの くさむらすき はめぐり


 夏の夕暮れ時、通りかかった背の高い叢の中から気配がする。男女の営みだと察するが、通りすぎる。水汲みから帰って、また通りかかると、一段と切迫した営みの気配に変っていた。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る