句集 東京路上生活

藤宮史(ふじみや ふひと)

第1話

 以下に記すものは、架空の話として路上生活者になったつもりでんでみた俳句である。




 茶碗ちゃわん 白湯さゆ年越としこみぞれかな


 ひとり、ブルーシートの小屋のなかで、寒さに震えながら、コートのポケットの使い捨てカイロで暖をとる。そして、空腹を白湯さゆで満たして除夜じょやかねを聞いている。夜半にはみぞれも降って来た。今年こそは、と思わぬでもない。



 小半時こはんとき ならぶし あせをだし


 初夏の公園の広場で30分間(小半時)ほど立ち並び、慈善団体が無料配布する食事を貰って食べる。食事は毎日配布されるわけではなく、食事の配布場所は日々変わるので、面倒なときは飯抜きにする。飯をうだけの資格がなく、甲斐かいもないので、近くで配布されないときは断食だんじきになる。



 古道具ふるどうぐ 肩腰のこる 五十路いそじかな


年を取って、からだのあちらこちらにガタが来ている。まるで古色蒼然こしょくそうぜんたる古道具である。五十年も生きていれば、もう、そろそろとう頃合いであろう。


 

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